オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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オリンピア・たぶんこうだったんじゃないか劇場(1):プロローグ

2022年01月23日 18時04分32秒 | 風営機

回胴式遊技機(いわゆるパチスロ)の嚆矢である「オリンピア」は、タイトー1964年に風俗営業の許可を取り付けるところから始まったのですが、タイトーがいったいどうやって警察から許可を取り付けたのかがずっと謎でした。と言うのは、タイトーが60年代前半以前にスロットマシンを製造していたという話をこれまで見聞したことが全く無かったからです(関連記事:オリンピアというパチスロの元祖についての謎)。

実機がなく、書類による説明だけで、警察が風営機として許可を与えるとは到底考えられません。実際のところ、市場に設置された初代オリンピアの筐体は、セガの「スターシリーズ」筐体(関連記事:セガ60周年記念・1960年以前のプレセガ期(3) セガのスロットマシンその1)を流用したものでした。

オリンピア(左)とスターシリーズ筐体(右)。1960年前後から作られていたと推察されるセガのオリジナル筐体で、「ダルマ筐体」と呼ばれている。

しかし、昨年12月にアップした記事「1960年代のTAITO」シリーズをご高覧くださっている方々から寄せられた情報の中に、従来のワタシの認識を覆す資料を発見してしまいました。そして、それを糸口にオリンピアのストーリーが見えたような気がしてきました。

そこで、今回から何回かに渡り、オリンピアが風俗営業機として稼働を開始するまでのストーリーを、NHKの教養バラエティ番組「チコちゃんに叱られる」の人気企画「たぶんこうだったんじゃないか劇場(TKG)」風に推測(妄想でも可)していきたいと思います。

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オリンピア・たぶんこうだったんじゃないか劇場(TKG)第1話:プロローグ

ずいぶん以前のことですが、ワタシは英国のオールドゲームファンから、ひとつのスロットマシンの画像をいただきました。そのトッパ―には「ROYAL CROWN」と描かれ、リール窓の右には英国通貨のデノミと思しき「6D」の文字が見えます。

英国人からいただいた「ROYAL CROWN」の画像。

この筐体はジャックポットチェンバーのデザインに至るまで、確かにセガのスターシリーズ筐体に似ています。

ROYAL CROWNのジャックポットチェンバー(上)とセガのスターシリーズ筐体のジャックポットチェンバー(下)。大文字と小文字の違いはあるが、文言も構成も同じでよく似ている。

しかし、前面上部のデザインはスターシリーズ筐体とは完全に異なります。ひょっとしてセガがスターシリーズ筐体を開発するときに並行して試作した第二案かとも考えてみましたが、そのような話があったことを窺わせるようなセガ側の資料を見聞したことはありません。「ROYAL CROWN」のキーワードでネット上を検索してみると、「1960's SEGA/MILLS ROYAL CROWN SLOT MACHINE」と題するebeyの記録がいくつかの画像とともに見つかりましたが、にわかに信じることもできません。その後もネット上で似た筐体の画像をまれに発見することはありましたが、結局のところ正体不明のまま今に至っていました。

ところが。昨年11月から12月にかけて「1960年代のTAITO」というシリーズ記事を掲載した(関連記事:1960年代のTAITO その1 その2 その3 その4 その5)ところ、多くの方々よりたくさんの情報をお寄せいただいたその中に、「ROYAL CROWN」の謎に迫る情報が含まれていました。

それは1968年7月に発行された米国の娯楽業界誌「CASH BOX」で、TAITOはそこに、ブログ記事で言及したバスケットボール、ペリスコープ、サンダーバードと並んで「ROYAL CROWN」を紹介する広告を掲載していたのです。

CASH BOX 1968年4月号に掲載されていたタイトーの広告。右は「ROYAL CROWN」の部分を拡大したもの。

タイトーはこの広告で、自らを「Manufacturers of:(以下の製造者)」として、その一つに「ROYAL CROWN」を挙げています。これを見たとたん、ワタシの脳内では、タイトーがオリンピアの風営許可を取り付けてからセガの筐体で売り出されるまでの「たぶんこうだったんじゃないか」というストーリーが閃いたのでした。

(次回、TKG第一話「ジュークボックスで儲けちゃる」につづく)


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