オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

コインマシンやギャンブルゲームやカジノの歴史的エピソードとか、時々カジノ旅行記とか、たまにスポーツやマンガとか。

初期の国産ピンボール機:Ali Baba(SEGA、1973)

2022年07月17日 22時04分48秒 | ピンボール・メカ

久々に初期の国産ピンボール機シリーズとして、セガの「アリババ (Ali Baba、1973)」のフライヤーをweb上に残しておこうと思います。

アリババのフライヤーの1面。ページの右半分は折り返されている。

この頃のセガのピンボールのフライヤーは、1面の右半分を折り返しているものが多いです。これも「何か一つヘンなことをしないと気が済まない」セガの習性の現れなのでしょうか。アリババの場合は、折り返しを開くと、筐体の画像とゲームの説明が出てきます。

折り返しを開いたところ。筐体の全容と、ゲームのルールが現れる。

フライヤーからバックグラスの部分を切り取ってアングルを補正。

同じくフライヤーからプレイフィールド部分を切り取ったもの。ゲーム料金が30円1プレイ、50円2プレイとなっているところが時代を感じさせる。

フライヤーの裏面には、メンテナンスを容易にする機構や、独自に開発したというバンパーユニットやスコア表示を誇らしげに謳っています。

フライヤーの裏面。「信頼できる画期的内部機構」、「<使いやすさと耐久性>を追求」と謳って、その具体的な内容が記されている。文字だけでは寂しいと思ったのか、ベリーダンサーのイラストが施されている。

実はワタシは、このゲームについて一つ混乱している点がありました。それは、バックグラスに大きく描かれる女性に二種類の絵があったような気が、ずっとしていたのです。

これはワタシにとって比較的最近まで謎だったのですが、あるときIPDBをクロールしていたら、その謎が解けました。実はセガは、SS機を作り始めた1976年に、「アリババ」を「アラビアンナイト(Arabian Night)」というタイトルでリメイクしていたのでした。

アラビアンナイトのバックグラス。画像のソースはIPDBだが、元の画像が少し小さいため、若干拡大し、アングルを修正してある。

アラビアンナイトは、アリババと同じく2P用で、EM機です。SS機に作り直したとでも言うならわからないこともないのですが、このバックグラスの絵以外にどこか相違点はあったのでしょうか。全くの妄想ですが、この機械がイスラム圏に出荷されることになり、女性の顔を隠す必要が生じた、なんてことはないとは思います、きっと。

最後に一つ、どうでも良い余談です。プレイフィールドでは、短刀を振りかざして偉そうな男と渡り合っている女性が描かれています。これは「アリババと40人の盗賊」に登場する、機知に優れ盗賊どもを全滅させた奴隷女の「モルジアナ」でしょう。

プレイフィールドに描かれているモルジアナと思しき女性。

バックグラスに描かれたモルジアナは、「アラビアンナイト」ではベールで顔を被われましたが、その姿は「アリババ」のフライヤーの裏面の左上に描かれているベリーダンサーの衣装、ポーズにそっくりです。何らかの事情で絵を描き換えるにあたって参考にしたのだと思われます。だからどうしたと言われても困るのですが。

モルジアナの顔の比較。左が「アリババ」、中が「アラビアンナイト」、右が「アリババ」のフライヤーに描かれていたベリーダンサー。


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (EM好きおじさん)
2022-07-18 23:49:30
nazox2016様こんばんは。

SEGAの"ALI BABA(1973)"ですね、プレイした記憶はあるのですがあまり良く覚えていない、という事は私にとってはいまひとつの機種だった訳です。フライヤーの中身が面白くて眺めていたところ、妙な事に気付きました。説明の中に「セガ・フリッパーとしては初めて、1000点の円形バンパーが付きました。また、…」とあるのですが、以前にもあった様な気がしてIPDBで調べた所、"WINNER(1971)"の中央バンパーが黄色の1000点バンパーでした。SEGAさん、自社で作ったピンボールの事を忘れちゃったんですかね?
あと、なぜこれを"ARABIAN NIGHT(1976)"としてリメイクしたのかは私もわかりませんが、IMDBで写真を見比べるとフィールド上に1箇所違いが見つかりました。フィールド中央のキックアウトホール周囲の4本のポストの左右間隔が広がって、キックアウトホールの向きが変わっている様に見えます。これに伴いホール上のプラスチック板も変わり、印刷された文章に"1000PT"の文字が追加されています。
それからこの機種に限りませんが、SEGAの1976年以降の機種ではフィールド上のプラスチック板の止め方が以前のビス止めから袋ナット止めになっている事に気付きました。


それでは。
Unknown (nazox2016)
2022-07-19 21:04:37
EM好きおじさん、興味深いコメントをありがとうございます。当時、1000点のポップバンパーを搭載する機種は少なかったので、ぜひとも強調しておきたかったのかもしれませんが、ちょいとお粗末ですね。これを情報源として「セガで初めて1000点ポップバンパーを搭載したのはアリババ」なんて話を広める人がいませんように(多分いないので杞憂)。
でも、ポップバンパーのキャップに表示されているスコアには、ほとんどの場合「WHEN LIT」と書き添えてあって、ランプが点灯していない時の得点は表示の1/10でした。どうすれば点灯するかはどこにも説明がなく、遊んで知るしかないのは、セガに限らずどこのメーカーでもそうでした。

アリババとアラビアンナイトの相違点、よく見つけられましたね。ワタシはここまで比較しておりませんでした。しかし、それほど普及したとも思えない3年前の機種をリメイクする目的がこの些細といっても過言ではない改変にあったとも考えにくく、謎は深まるばかりです。
Unknown (EM好きおじさん)
2022-07-20 22:03:07
こんばんは。

"WHEN LIT"ですが、自律的に着いたり消えたりするものを除けばロールオーバーやターゲットに"ON xxx BUMPERS"(xxxは色の名前)等の表示が書いてある機種が多かった様に思います。
私は最小点数の100倍の点数になるポップバンパー(PB)を高点数PBと考えるのですが、最小点数が1点の機種の100点PBとしてGottliebの"Airport"(1969), "Baseball"(1970), "2001"(1971), "4 Square"(1971)あたりを覚えています。これらはGottliebお得意の「他の場所での得点加算中だけ消灯し、その間は球をキックしても得点されない」方式だったと思います。Wiiliamsはもっと昔から100点PBを登場させていますが、大抵は点灯までのシーケンスがあったと思われます。しかし常時100点のPBが"Touchdown"(1967)にありました。
最小点数が10点の機種の1000点PBは点数が全体的に10倍になっただけですが、Williamsの"Jive Time"(1970)や"Doodle Bug"(1971)ではなかなか点灯してくれませんでした。
Ballyでは高点数PBは見つかりませんでしたが、Ballyは"Rocket Ⅲ"(1967)から数年間、何も書いていないバンパーキャップを使っていました。デザイン上の考えでしょうか?

では。
Ali BabaとArabian Night (Robot415)
2022-07-21 23:18:50
>nazox2016 様

今回のも興味深い機種ですね

"東京 ピンボール オーガニゼーション"という組織のhpに、
セガやDECOでピンボールを開発していた石川隆氏(故人)の証言も交えて作成されたという
、1970年代のセガ製ピンボールの年表が掲載されています

http://tpo-pinball.com/pinball%20machine/SegaJapan.htm

この表のAli Babaの「同機種」の欄には
"Arabian Night(輸出仕様?)"
とありますが、nazox2016様が別記事で掲載した1977 Sega Price List(6)に
Arabian~の日本円の価格も掲出されているので、"輸出専用"という訳ではなさそうです

IPDBに掲載されているArabian~の写真の中には動作電圧240Vを記したインスペクション・シートもあるので、
同機に米国向け仕様"も"存在するのは事実なのでしょう

さて、わざわざ商品名を変えた理由については、私の勝手な想像ですが

「Ali Babaの発売からしばらく経って輸出の話が持ち上がり、
Gottlieb製のAli-Baba(1948)とのバッティングを避けるべく名称変更された」

のではないかと考えています

もちろん、"四半世紀も前の他社製品と被る事を気にするの?" という気もしますが、
どうも他に理由が思い当たりません

IPDBを筆頭に、インターネット上で見かける'70sのセガ製ピンボール機の写真は
ほとんどが日本向け仕様
(100v 50/60Hzの表示と日本語インストカード)ですが、
IPDB掲載のArabian Nightの個体のインスペクション・シートには、珍しく240V駆動と表記されています

ただ、Ali Babaの実機を入手したニュージーランド在住の方の写真(下記)を見ると、
コインスロットが同国の20セント用になっているので、Ali Babaとして輸出された個体もあるのかも知れません

https://pinside.com/pinball/forum/topic/1973-sega-ali-baba-arabian-night

尤も、インストカードや動作電圧の表記されたインスペクション・シートの写真が無いので、
日本仕様を改造した可能性もゼロではないのですが・・・

とりとめのない文章ですみません
Unknown (nazox2016)
2022-07-22 22:36:27
EM好きおじさん、懐かしい話にお付き合いくださってありがとうございます。ポップバンパーの点灯は、モノによっては点灯の条件がプレイフィールドに書かれていたりしましたが、共通する法則がないのでわかりにくいですね。特に小学生のころのワタシはまだ英語が読めないのでなおさらでした。

言われてみれば、Ballyは60年代後半にポップバンパーのキャップに何も描いていない機種をいくつも出していますが、どういうつもりだったんでしょう。他にも、描かれているものが得点ではなくアルファベットや絵だったりするものもあって、これらは得点さえも分かりません。そう言えば、50年代から60年代前半にかけてのWilliamsの機械には、キャップに「JET」と描かれたポップバンパーがありました。Williamsでは、ポップバンパーを「ジェットバンパー」と呼んでいたそうなので、まだ普及して間もないギミックを強調したかったのかもしれません。

Gottliebの、得点加算中は他のバンパーやロールオーバーの得点が無効になる仕様はワタシも不満だったのですが、IPDBをクロールしていたら、Gottliebの開発者、John Osborneも同様に感じており、「Pro Football (1973)」を後に「Gridiron (1977)」にリメイクする際に、消灯中に通過したロールオーバーのスコアも加算されるように「こっそり」改造したというエピソードが記されていました。
Unknown (nazox2016)
2022-07-22 22:37:27
Robot415さん、TPOのセガピンリストをありがとうございます。この存在は知りませんでした。出席者には錚々たる顔ぶれが並んでますね。
リスト中のアリババの特徴に「1000点初バンパー」と記載されていますが、先にEM好きおじさんがコメントでご指摘くださったように、1000点のポップバンパーはアリババ以前のウィナーで既に見られます。しかし、一次資料であるフライヤーにそう書いてあるのだし、これを誤りと糾弾するのは酷かもしれません。思うところがあるとすれば、「サッポロ」と「エクスプローラー」の特徴として、当時はまだ珍しかった「マルチボール」に触れておいて欲しかったです。

コメントを投稿