土砂降り

夫は、ありがとうを言わない。いただきます。ごちそうさまを言わない。

例えば、出掛けに忘れた携帯を、2階まで妻に取ってきてと言い、渡された時、朝食後のコーヒーを淹れテレビを見ている部屋へ持って行った時、さらにそのコーヒーを飲み終えカップを渡す際、ありがとうを言わない。

一番の違和感は、３回の食事の際の、いただきます、ごちそうさまの言葉が無い。

多分それは、ずっと以前からだった。

夫の両親、義弟二人との同居から始まった結婚生活。

必死だった。なにもかもが、それまでの生まれ育った家庭生活と違いすぎて、とにかく毎日が必死だった…。

おそらく夫の家庭では、いただきます、ごちそうさまなど言う事がなかったのだろう。

色んな事があった44年間。楽しい事嬉しい事もあったけれど、そして、仕事人間、仕事最優先の夫のおかげで、それなりの贅沢な暮らしも出来たわけなのだが…。

夫は、妻や子ども達には、常に自分の主観でものを言う。人の話を基本聞かない、いや聞く事が出来ない？聞く能力が無い人なのかもしれない。つまり、会話にならない。会話のキャッチボールが出来ないのだ。

退職後は想像以上に私のストレスは増大した。

けれど、少しずつ少しずつマシにはなってきていた。

孫娘が、我が家で生活するようになってからは、口調も随分柔らかく、ありがとうも言い、ごちそうさまもふざけた口調で言うようになっていた…のだが、また元に戻ってしまった。

地区の区長(地区会長)に推薦され、引き受けたこの四月頃から。

忙しいのであろう。私には迷惑をかけない、できるだけ自分一人の事とするから、と、この面倒な役職を嫌う私を説得させ、引き受けた頃から。

去年夏頃、自分から申し出た風呂掃除も一切しない、食事の際の当たり前の言葉もない。ありがとうもほとんど言わない。

気持ちは塞ぐばかり。ストレス満載。愚痴る相手が居ない。

あ、東京の弟にはけっこう話してる。（笑）迷惑この上ないだろう。どうしようも無い夫婦の、夫の悪事を一方的に聞かされ、弟もストレスかも。

本日朝から土砂降りの天気。昨日から農家は田植えが始まったようだ。

早緑の早苗は美しい。気分を変えて、雨が小降りになったら早苗田を撮りに行こうと思っていたのだが…。

昼食後、書店と、ホームセンターがあるショッピングセンターへ行こうと車で、田んぼ道をゆっくり走る。

いつもの田んぼ道、行く手に軽トラが二台、一台は苗を下ろして走り出し、後ろの軽トラが少し広くなってる道に寄せて、私を通してくれる様子。進もうとした瞬間、軽トラの間近の苗を植える機械(名前が分からず)に乗っている男性が、凄い勢いで来るな！と手と目付きで追い払う。左の細い道を行け。と指図するのだ。

こんな事は初めてだった。通れるのだ。この田んぼ道は。あちらが軽トラなら余裕で。しかしこの御仁、なにを怒っているのか、田植えの邪魔をするな！もっと言えば、神聖な仕事の横を通るのは許さん！と言いたいのか。

しばらく呆然としていたが、こちらもそんなに暇ではない、納得はいかないし、この細い曲がり角も危なっかしい小道を行くのは怖かったけど、このおっさんだか兄さんだかの方が怖い。

仕方なくゆっくり左折。ノロノロと行く。とんだまわり道。

ちらと見るとなんとその御仁、ジーっと睨みつけている。

いったいこの人誰？迷彩服のその方、出来るだけ目に焼き付け

後で夫に聞いてみたが、田んぼの持ち主はほぼわかるが、他人に依頼している人が多くなってるので誰だかわからない、との事。

葉月の季まぐれノート 花と木と…時々五七五