中学生の時、突然の別れを告げ転校してしまった恋人・ないる。その彼女と高校生になって再会するが、その態度は素っ気なく……。
高校生の可愛らしい恋愛小説……と言いたいけど、少し過激な描写もあり。物語上必要な描写ではあるんですが。
素直になれない《ないる》の右往左往する姿や、ないるへの恋を自覚し頑張るなど、メイン2人に嫌味が無いので読みやすいです。
表紙やタイトル込みで良作。

三途の川のそばに立つ《おらんだ書房》。そこにやってくる死者に、最期に読むにふさわしい一冊を選ぶ、という話。

江戸っぽい街並みの三途の川沿い。そこで六文銭と引き換えに、死者たちが服や食事や諸々サービスを何でもひとつ選ぶことができる。
三途の川を渡る前の最後の楽しみ……という舞台設定がまず面白いです。
死者に渡す本のチョイスも、児童書や日本文学などバラエティに富んでいます。

連作短編ゆえか、じっくり読みたかったメインキャラの過去が駆け足で説明されてしまったのがちょっともったいない。
店主の正体など謎が残っているので、続刊に期待です。



村崎ぎゃてい(変換できない)さんの短編集。
あっさり読める話あり、シリアスあり、恋愛あり、笑える話あり、ブラックユーモアもあり……とバラエティに富んでいます。
どの話もアイデアが面白く、文章も綺麗で読みやすいです。
シメがいまいちな作品もありますが、全体的に完成度は高いです。


1人4ページ、《どんでん返し》をテーマに書かれた短編集。
有名な作家がたくさん参加しているため、全体的にレベルが高いです。

叙述トリックを使った作品がほとんど……という先入観を持っていてもトリックを見抜けず驚かされっぱなしでした。
乾くるみの『なんて素敵な握手会』、乙一の『電話が逃げていく』が特に好きです。


アルファベットのオブジェが立ち並ぶ別荘で起こる殺人事件。それには曰く付きの巨大な箱が関わっていて……。
トリック自体への驚きは薄めでしたが、終盤明らかになる犯人の真の動機と思惑が面白かったです。

探偵・ディに関わる思わせぶりな部分など、すごく続きものっぽい雰囲気を醸し出しているけど単発もの。でも北山さんの作品ってそういうの多い気がする。


偽の記憶、《義憶》を埋め込むことが当たり前になった時代。
手違いから、実際には存在しない幼馴染との甘い恋の《義憶》を埋め込んでしまった男の前に、その幼馴染そっくりの女の子が現れる。彼女は何者なのか?

ミステリでもありSFでもあり、ピュアな恋愛小説でもある作品。
主人公がとにかく陰気なので序盤は読みづらかったけれど、謎解きが始まってからは引き込まれました。
三秋さんらしい《互いしかない男女》の物語。




近未来に可能になるだろう技術(AI、遺伝子操作、VR、エンパワーメント)をテーマにしたSFミステリ短編集。


タイトルと《SFミステリ》という触れ込み、いかにもお堅そうなビジネス書っぽい装丁で損をしている気がする。
どの短編も読みやすく、未来技術に関する知識も勉強になります。
ミステリ要素もうまく取り入れられていますが、途中でトリックが見えてしまう作品も。物語自体が魅力的なので良いですが。
ラストの短編『ベーシックインカム』があるかないかで本全体の見方が変わるのはちょっと面白い。