だいすきだよ、にゃんきち

2016年3月に縦隔型リンパ腫と診断された、我が家の大切な猫、にゃんきちの生きる日々を記録します。

自然療法の可能性

2016-05-06 17:46:47 | にゃんきちのこれまでについて
急に容態が悪くなったにゃんきちを見て、夫は実家行きをキャンセルし、
所沢の病院にお願いして、次の予約を一日前倒して、日曜日にしてもらいました。

抗がん剤治療を始めた頃、抗がん剤治療の効果を引き上げられないかと考え、
免疫力を高めるサプリメントを購入していましたが、
H先生から
「抗がん剤の細胞を壊す働きと、サプリメントの免疫力を高める効果は矛盾するものなので、お勧めはしめません」
といわれ、抗がん剤治療がうまくいくことを期待して、サプリメントは使いませんでした。

ですが、リンパ腫が再燃してしまった後、かかりつけのS先生から、
「ドキソルビシンや、その後の抗がん剤治療と並行して、サプリメントなども試してみてはどうですか」
と、勧めてもらったこともあり、
すでに購入してあったサプリメントを含め、自然療法の可能性をあらためて探ろうとネットで色々検索してみたところ、
自然療法や補完代替医療に力を入れている病院が隣市にあることがわかりました。
こちらの病院では、その他にも、免疫細胞療法という先進医療を行っているようでした。

金曜日に、にゃんきちの容態が悪くなり、ドキソルビシンが効いていない可能性が高まったことから、
土曜日の午前中にS先生の病院へ(投薬のために)うかがった後、
隣市の病院に予約を取り、並行治療の可能性について、夫とふたりで話をききにいきました。
(にゃんきちは、体に負担がかからないよう、家でお留守番です)
S先生には、その旨断って、これまでのレントゲンも全て貸して頂きました。

隣市の病院は、隣市にあるとはいえ、我が家からは車で20分ほどと思いのほか近く、
時間調整のために、途中で近くの大学に立ち寄り、キャンパスをお散歩することになりました。
緑にめぐまれたこの大学には、大木に囲まれた芝生の広場があり、広場の中央にも樹冠の美しい大木が一本立っています。
爽やかな風にそよがれて木々の緑がきらめいていました。
今年の春は、にゃんきちが心配でたまらず、美しいはずの桜でさえ美しいとは思えないまま、いつの間にか終わっていたのですが、
胸が潰れそうな苦しみの中にある今、体に染みこむような、やさしくやわらかい緑が、わずかなりとも心を癒してくれるような気がしました。

隣市の病院では、女性の副院長先生が中心となって自然療法に力を入れているようで、
この日も副院長先生が、対応して下さいました。
にゃんきちのこれまでの経過をお話しし、レントゲンと血液検査の結果、所沢の病院からもらった診断書もお見せしました。
副院長先生は、ご自身が癌を患い、治療から12年間再発なしで過ごされているそうです。
その経験もまじえつつ、自然療法の効果を説明して下さいました。

結論から言うと、
・抗がん剤治療の補完療法を行うのであれば、抗がん剤治療開始と同時に始めなければならない。
 自然治療は自己の治癒力を高める治療法なので、にゃんきちのように抗がん剤を5回投与し、免疫細胞が抗がん剤でぼろぼろになってから始めて
も効果はない。
・小動物のがんに対する自然療法の効果は、ある程度データが蓄積され、公開されているのに、西洋医学オンリーの先生が「エビデンスがない」と頭
から否定してしまったことは、とても残念だ。
・ただし、免疫細胞がぼろぼろの状態でもある程度痛みや炎症を緩和してくれるサプリメントは存在し、それを処方することはできる。
 この病院で扱っているイムノグルカンというサプリメントは、実際に、抹消血にまで腫瘍細胞が出現している子にも効果があった。
・にゃんきちのかかりつけのS先生は、サプリメントによる補完治療を否定していないので(むしろ肯定的なので)、S先生の治療と並行して、
今後もこちらでサプリメントのみを処方することはできる。
・免疫細胞療法は、根治を目指す治療法ではなく、患者からリンパ球を取り出して増殖し、それを患者のリンパ球に戻してあげることにより、
 免疫力強化や副作用の軽減を狙う治療で、効果は高い。
 ただし、残念なことに、リンパ球が癌化するリンパ腫にだけは、この治療法は使えない。

なのだそうです。

そのような次第で、この日は、イムノグルカンを3週間分処方してもらって帰りました。
1日分100円でした。

副院長先生の対応は、きさくで温かみがありました。
その気があれば、患者の家族の「藁にでもすがりたい」という気持ちを利用して、
高額なサプリメントを売りつけることだってできるでしょう。
ですが、副院長先生は、「打つ手がない」ということを、明確に理由を述べてきちんと説明してくれ、
価格の手ごろな症状緩和サプリメントだけを処方してくれました。
とても良心的な診療だったと思います。

もっと早く……抗がん剤治療を始める前に、こちらの病院の門を叩いていればと、後悔で胸が痛みましたが、
それには、事前に相当の知識や情報収集が必要でした。

最も治療成績の良いプロトコールに沿った抗がん剤治療を受けられたことでさえ、
自分で勉強や情報収集をした成果ではなく、
あくまでS先生がすぐに最良の専門病院を紹介して下さったおかげです。
事前にあらゆる情報を収集した上で、H先生を説得して許可をもらい、
抗がん剤治療開始と同時に自然療法を始めるなどというのは、わたしたちの限界を超えたことでした。

それでも、この日、思い切って話をききにいって本当に良かったと思います。
もしもこの日話をききに行かなければ、「あのとき、もっとできることがあったのでは」と、いつまでも悔やむことになったはずです。
最期のとき、わたしたちの手が届く範囲に、わたしたちにできることが……にゃんきちのために積極的に選択してもいいと思える手立てが、
もうなにもないと分かっていれば、
にゃんきちを与えられたことを、ただただ感謝して、神様に全てをゆだねることができるのではないかと思います。
そう期待します。

道が全て断たれたという喪失感と奇妙な安堵感、
そしてにゃんきちへの愛おしさと、にゃんきちを失おうとしている苦しみが胸を占め、
隣市の病院からの帰り道、目に映る緑がやけにまぶしく感じられました。

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