だいすきだよ、にゃんきち

2016年3月に縦隔型リンパ腫と診断された、我が家の大切な猫、にゃんきちの生きる日々を記録します。

酸素室

2016-05-10 18:13:29 | リンパ腫

「ヘソ天しゅる?」
(もふもふは剃られちゃったけど)

所沢の病院からの帰りがけ、そのままS先生の病院にうかがいました。
Lアスパラキナーゼとロムスチンによる積極治療や、Lアスパラキナーゼによる延命治療を断念したことをご報告し、
翌日からS先生に緩和治療をして頂きながら、自宅で最期のときを過ごしたいことをお話しすると、
快く承諾して頂けました。

わたしたちの心を軽くしてくれるためかもしれませんが、
S先生は、
ご自分の大学の同期で先進治療病院に勤務されている獣医さんが、
「ロムスチンは副作用がひどいから使いたくないし、使わない」と話していたし、
S先生ご自身もそう感じているので、
もし積極的治療を続けても、にゃんきちを余計苦しめるだけになっていた気がするから、
にゃんきちのために正しい選択をしたのではないかと思いますと、言ってくれました。

悔いはないと思いつつも、ゼロではない「一定期間の延命」の可能性を捨ててしまったことに、
やはり罪悪感を覚えていたのでしょうか。
S先生にそういって頂いて、夫もわたしも、すごくほっとしました。

もちろん、この時点では、にゃんきちが、まだ「死」を感じさせるほど弱っていなかったのと、
これで辛い副作用から解放されるという希望があったのとで、
ほっとできた、という面もあるかもしれませんが、
いずれにせよ、先生の心遣いは、大変ありがたかったです。

獣医さんとして信頼できる上に、こうして患者家族の心に寄添おうとして下さるS先生がいるからこそ、
わたしたちも安心してにゃんきちを自宅で看取ると決められました。
にゃんきちも、わたしたちも、その点でとても幸運だったと思います。
S先生にはひたすら感謝です。

それはさておき、以前S先生から、
呼吸困難の患者のために、犬猫用の酸素室をレンタルするという選択肢があるとうかがっていたので、
レンタルできるお勧めの会社はないかおききしたところ、
先生が契約を結んでいたり会員登録していたりする業者はいないけれど、
今ちょっとネットで調べてみましょうと、その場で調べて下さいました。

帰宅してすぐ、その業者さんの代理店にお電話し、レンタルのお願いをしました。
代理店さんは、県内にありますが、我が家までは高速道路を使って来てもらうような距離にあります。
電話を受けてくれた代理店のAさんが、翌朝一番で朝10時頃には届けられるし、
一刻も早い方が良ければその日の深夜じゅうには届けられるといってくれたのですが、
そこまで急いで頂く必要もないと判断し、翌朝に来て下さるようお願いして、レンタルの申し込みをしました。

その後、S先生からお電話があり、
「あれからさらに探してみたところ、近隣にもレンタル業者さんが見つかりました」とお知らせ頂きました。
わたしたちがS先生のところへご報告にうかがってから病院を出るまでの短時間、
ちょうど日曜だったこともあり、患者さんが次々に待合室に入ってきていたので、
S先生はあれから相当お忙しかったはずです。
その忙しい診療の合間に、ネットでさらにレンタル業者さんを探して下さっていたなんて、
本当に本当にありがたいことでした。
ただ、すでに申し込みをしてしまいましたし、明日の朝には酸素室が届く予定なので、
S先生には、お手数をおかけして大変申し訳なかったのですが、その旨お伝えしてお礼をいいました。

その日から、わたしはにゃんきちのそばで寝ることにしました。
にゃんきちのいつもの居場所(兼 寝床)は1階のリビング(LDK)にあるソファなのですが、
夜はそこに布団を敷き、隣で寝るのです。

翌日の明け方、ふと目を覚ますと、ソファの上で、にゃんきちが苦しそうに呼吸をしています。
「やっぱり前日の深夜に酸素室の業者さんに来てもらえば良かった」と後悔したのですが、
朝の8時頃には、呼吸もある程度落ち着いてきたので、少しほっとしました。

10時少し前、前日電話を受けてくれた酸素室レンタルの代理店のAさんが来てくれました。
Aさんも4匹の猫ちゃんがお家にいるそうです。
にゃんきちの病気のこと、辛いですねといって下さって、にゃんきちに、とても優しく接してくれました。
酸素濃縮機と酸素ハウスをセットで使うことになるのですが、
濃縮機もハウスも設置場所を選ぶので、直射日光や壁からの距離、台所からの距離など、入念にチェックして下さり、
手際よくハウスを組み立ててくれて、使い方や注意点なども分かりやすく説明して下さいました。
にゃんきちは、お客様好きで、猫好きのお客様は特に大好きなので、
さっそくAさんに挨拶したり、作業中のAさんの近くをうろうろしたり、
酸素ハウスのパーツにすりすりしたりしはじめました。
そのあげく、組み立ててもらった酸素ハウスに、わたしがペットシーツやお気に入りのタオルケットを敷いたとたん、
まだ酸素を供給してもいないのに、いそいそと中に入って、落ち着いてしまいました。

濃縮酸素を供給し始めたところ、ここに入れば呼吸が楽になると分かったのでしょう、
数時間おきに、酸素室に入りたいというそぶりを見せるようになりました。
前日に所沢の病院で診てもらったときは、胸水が溜まっていなかったのですが、
それでもすでに呼吸が苦しそうになってきていたので、
おそらく肺をはじめとする呼吸器官にリンパ腫がじわじわ浸潤し、うまく働かなくなって、
呼吸できる空気の量が少なくなってきているのでしょう。
それでも濃い酸素を吸えば、ずいぶんと楽になるようです。
普通の空気では酸素濃度が21%ほどだそうですが、酸素室の中は30~38%程度を維持しています。
酸素室内の温度や湿度も、Aさんの教えに従って、なるべく快適に保てるよう、こまめに調整しました。

この日、酸素室ですうすう眠りこんでいるにゃんきちのお腹は、元気な頃に戻ったように、ゆったりと上下していて、
夫もわたしも、それはそれはほっとして、心から神様に感謝しつつ、
いつまでも飽きずに、眠るにゃんきちを見つめていました。


「あんまり見つめられると、眠れないんだけど」

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