杏のもとで数日間世話になっていた私たちは、船の出港準備完了と共に賢者の島を出発し北の国を目指した。
そして現在私たちは北の国への入国を果たし、美波の案内で全線に近い兵舎へ案内された。
各パーティ毎に部屋が用意されているのはきっと美波の計らいなんだろう。
感謝しなくちゃ。
現在は卯月と未央と3人で部屋ですることもなく待機している。
最終決戦が近い事もあって、言葉数が次第に少なくなり現在は無言が続いていた。
「…やっぱり北の国は寒いね…。凍えちゃうよ…。しぶりん暖めてよぉ」
「いやだ。自主錬しておけば温まるでしょ?」
「そんな…。酷い…。しまむー、しぶりんが酷いよー。」
未央が泣く真似をしながらソファに腰掛けていた卯月の膝元へ顔を埋める。
私も素直に言えたらあんな風にじゃれ合えるのだろうか…。
「あらあら、未央ちゃん可哀想ですね…。」
「そうなんだよ。グスグス。しまむーみたいにしぶりんに抱きつけたらなぁ…」
「じゃあ、未央ちゃんの為に島村卯月、一肌脱いで頑張ります!!」
「お願いしまむーッ。しまむーだけが頼りなんだ!!」
「ちなみに、凛ちゃん口では嫌だ嫌だって言っていますけど、実際は抱きついても大丈夫だと思いますよ?」
「「え?」」
黙って2人の寸劇を眺めていたら、卯月が爆弾発言をした。
「で、でも、流石に抱きついて怒られるのは嫌だしなぁ…。」
「大丈夫ですよ。凛ちゃんは本当は淋しがり屋なんですから。」
「ちょっと卯月ッ!!。何言ってるのよ///」
嫌な予感が私の中を駆け巡る。卯月はもしかして…杏の所で泊った時の事を…!!
「だって杏ちゃんの所でお泊りしたとき、夜中に寝ぼけていたのか….」
まずい…。これは止めなくちゃ…。止めなくちゃヤバいッ。
「待ってッ!!その話まっ」
「【卯月ぃ…好きぃ…】って言いながら抱きついて来ましたから///。あの時の凛ちゃんとっても可愛かったんですよ?私の胸に顔を埋めてぎゅっって抱きついて来て…。朝に目が覚めた時には居なくなっちゃってましたけど…。」
私の抵抗空しく卯月は言ってしまった。
あの時の出来事を…。しかも、私が寝ぼけて覚えていない発言まで丁寧に付け加えて…。
「ないないないない///私そんな事言ってないッ。」
「ほほぉ…。しぶりん。否定している割には顔が真っ赤になってるけど?」
良い獲物を見つけた野獣の眼光の如く未央の瞳が私を捉える。形勢は非常に不利だ…。
ここは卯月に助けて貰うしかッ
「凛ちゃんは一回素直になった方がいいですよ?」
つまりこの状況を助ける気がない…と….。
万事休す。
その間にも未央が手をワキワキさせながら近寄ってくる。
ベットに腰掛けていた私は迫りくる未央から逃げる為に本能的に身体を後ろに後退させる。
「未央…冗談…だよね?いや、本当に怒るよ?本当だからね!!」
「ふへへへへ。もう逃げ場はないよ…しぶり~ん。大人しく観念したらッ!!」
じりじりと後退を続けていたが私の背後は既に壁となっていて、逃げ道はなかった。
絶体絶命…。
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