先日

 

学生時代の友人 Yちゃんから

久しぶりに 電話があった

 

 

Yちゃんは

おっとりした やさしい子で

 

大学を卒業して 早々

地元の名家の

エリートサラリーマンと

誰もが羨む結婚を した

 

 

でも しばらくして

風の便りに

 

Yちゃんの義母が

酷すぎる

 

という噂が 聞こえてきた

 

 

例えば

孫たちの成長の 節目節目に

豪華な 飾りものや着物を

買ってくれたり

お祝いの会まで 開いてくれるけど

 

そんな時 なぜか Yちゃんにだけ

声をかけない

 

とか

 

Yちゃんの親が

孫にプレゼントしたものを

わざわざ 返品させて

 

義母が それより高価なものを

買い与える

 

とか

 

 

まあ あくまで 噂なので

話に

尾ひれ 背びれがついてたり

 

ニュアンスの違いも

あるだろうけど

 

 

でも 大筋が事実だとすれば

 

いくら 当時が まだ

昭和を引き摺っている時代

だったとしても

 

やっぱり

なかなか スゴイ義母

 

 

周りの友人たちと

その話が 話題に出る度に

 

おとなしいYちゃんだから

黙っているけど

ふつうは 大喧嘩になるでしょ

 

とか

 

お義母さんも悪いけど

夫も 何考えてるのかしら

私だったら 離婚ものだわ

 

とか

 

当の本人が 言い出してもいない

過激な発言まで 飛び出して

 

 

それって

Yちゃんからすれば

余計なお世話

 

 

 

 

でも

その後 しばらくして

 

Yちゃんから

 

義母が

嫁としての 私の

至らないところを 書き連ねて

 

親の教育が なっていない

私の親を非難する手紙を

実家に 送りつけてきたのよ

 

という話を 聞いた時は

 

彼女自身が

 

さすがに 離婚 の二文字が

浮かんだ

 

と言っていた

 

 

断っておくけど

Yちゃんは

お料理は 少し苦手だけど

 

真面目だし 明るいし

働き者だし 倹約家だ

 

気遣いができて

思いやりがあるところは

明らかに

お義母さんより いい性格だ

 

 

 

結果的に

 

Yちゃんは 離婚しなかった

 

 

その後も

お義母さんのキツさは

相変わらずで

 

お義母さんの方から

Yちゃんの家に 泊まる

と言って

 やって来たにもかかわらず

 

なぜか 急に 機嫌を損ね

ホテルに行ってしまった

 

なんて話を

聞いたりしてた

 

 

でも

お義母さんも 年をとるにつれて

病気になったり 骨折したり

 

大分

弱気になってきたらしい

 

 

そして

お義父さんが亡くなって

 

一人暮らしは 難しい

さて どうするか

 

という話になった時

 

 

高級老人ホームに入って

そこで

悠々自適の生活を

送ってもらうことも

可能だったはずだけど

 

お義母さんは

 

他人に気を遣うのは イヤ

そういうところには

絶対 行かない

 

と 断固拒否したそうだ

 

 

 

そして 先日

 

久しぶりに Yちゃんと

近況を報告しあった時

 

彼女から

 

最近は 週5日

夫が出かける前に 家を出て

 

お義母さんのところで

家事と 雑用をして

 

一緒にお昼ごはんを食べて

帰ってくる

 

と聞いた

 

 

お昼ごはんを

一緒に食べるのかあ

 

気を遣うねえ

 

 

そうなのよ

 

黙ってるのも まずいし

かといって

下手なこと 話して

怒り出されるのも イヤだから

お天気の話とか するんだけど

 

話が続かないのよね

 

 

大変ねえ

 

夫は そういう大変さを

わかってくれてるの?

 

 

うん まあ

毎朝 私が 家を出る時

 

お世話になります よろしく

 

って 言ってくれるし

 

週末は

夫が行ってくれる

 

 

そうなんだ…
 

じゃあ お義母さんも

Yちゃんが 来てくれることに

感謝してるのかなあ

 

 

うん…

最近 たま~に

ありがとう って言うけど

 

でも

夕方来る ヘルパーさんには

もっと 頻繁に

言うらしいの

 

やっぱり 心のどこかで

 

嫁は 自分に尽くして 当然

 

って 思ってるんだと思うわ…

 

 

 

私は

自分が聞きたかったことを

矢継ぎ早に 質問してしまった

 

Yちゃんは

それに ひとつひとつ

答えてくれたけど

 

だけど

まだ 納得出来なかった

 

 

 

やさしいんだね Yちゃん

 

あれだけ いろいろあったら

私だったら

そんな人の介護は できないな

 

私は

思わず 本音を漏らしてしまった

 

 

Yちゃんは

それに さらりと

言って返した

 

 

まあ

腹黒い計算で

 

 

 

Yちゃんらしからぬ 言葉に

私は 一瞬 たじろいだ

 

でも

 

その言葉で 納得できた

 

 

だって

 

現実に

あれだけイジメられたことを

Yちゃんが 全部

水に流せるはずは ない

 

その上での

お姑さんの 介護

 

 

「腹黒い計算」が

成り立たなければ

やれないよね

 

 

周りから

介護することを 当然視されて

 

逃げることもできなくて

 

「腹黒い計算」をして

自分を納得させて

 

期待に応える

 

 

それは

また違う形の

「やさしさ」だろうし

 

 

一方で

 

お姑さんや 周りの人たちだって

Yちゃんに対して

「腹黒い計算」をしてるのも

事実だろう

 

 

「腹黒い計算」を

したことがない大人なんて

いないはず

 

 

 

 

ただ

 

私が関われることでは

ないけれど

 

余計なお世話だけど

 

 

最後の日を 迎えるまでに

お義母さんから Yちゃんに

もし 一言

謝罪と 感謝の言葉が

あったとしたら

 

 

そしたら もしかしたら

Yちゃんの 心の中で

 

「腹黒い計算」で

手に入れたものに

 

ほんのちょっと

感謝の色が 加わるかもしれない

 

 

 

そうなったら いいな

 

 

そのほうが

 

Yちゃんも 周りの人も

絶対 しあわせに なる