★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇”シベリウス・スペシャリスト”名指揮者 ベルグルンドのシベリウス:管弦楽曲集

2022-11-24 09:38:44 | 管弦楽曲


シベリウス:交響詩「フィンランディア」
      劇音楽「クオレマ」から「悲しき円舞曲」
      交響詩「ポポヨラの娘」
      劇音楽「クオレマ」から「鶴のいる情景」
      交響詩「タピオラ」

指揮:パーヴォ・ベルグルンド

管弦楽:ボーンマス交響楽団

LP:東芝EMI EAC-30351

 フィンランドの名指揮者のパーヴォ・ベルグルンド(1929年―2012年)は、3度のシベリウス:交響曲全集を完成させるなど、シベリウスの専門家として名高いが、これはそんなベルグルンドの”シベリウス・スペシャリスト”としての真価がぎっしりと詰まったLPレコードだ。ベルグルンドは、最初ヴァイオリニストとしてフィンランド放送交響楽団に入り、その後指揮者に転向したようだ。フィンランド放送響首席指揮者、ボーンマス響音楽監督、ヘルシンキ・フィル首席指揮者、ストックホルム・フィル首席指揮者などを歴任した経歴を見ただけでも、その実力のほどが読み取ることができる。このLPレコードでは、イギリスのボーンマス交響楽団とのコンビで、お得意のシベリウスの管弦楽曲を演奏している。交響詩「フィンランディア」は、シベリウスの作品の中でも最も愛好されている作品であり、フィンランドの人々にとっては国歌に次ぐ重要な位置を占める作品。「悲しき円舞曲」は、劇音楽「クオレマ」の中の一曲で、病床についている女のところに男が現れ、二人は狂ったように踊るが、やがて重々しいノックがして死が訪れる、という場面で演奏される、シベリウスでなければ発想できないような作品。交響詩「ポホヨラの娘」は、フィンランドの民俗的叙事詩「カレワラ」を題材にシベリウスが曲を付けたもので、第8章の老英雄ワイナモイネンがポホヨラ(北方の国)の娘に求愛する場面によるものであり、シベリウス特有のオーケストレーションが存分に発揮されている。「鶴のいる情景」は、「悲しき円舞曲」と同じく劇音楽「クオレマ」の中の一曲で、弦の響きに乗って、鶴を表現するクラリネットの響きが一際印象的。最後の交響詩「タピオラ」は、これも民俗的叙事詩「カレワラ」を題材としたもので、シベリウス最後の交響詩だけあって、円熟した書法を随所に聴くことができる。これらのシベリウスの曲を、ベルグルンドが振ると、他の指揮者とは何かが違い、音のつくりに実に深みがある。だからといって、決して堅苦しいところはなく、ナイーブで抒情味に溢れているのである。つまり、ドイツ系的な音づくりとフランス的な音づくりとが微妙に絡みつき、それらに北欧音楽特有の透明感のある音づくりで、全体が統一されている。例えば、ベルグルンドが振るシベリウスの交響詩「タピオラ」を聴いていると、リスナーを一時、遠い北欧の風が舞い込む地に居るような、不思議な気持ちに誘ってくれるのだ。(LPC)


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