「なるほど。魚の頭が置かれるのも悪霊の仕業ってことですか」

 

 

「だって、そうとしか考えられません」

 

 

 決めつけるように言うと、女は目を大きく見ひらいた。表情にどのような変化があったか探ろうといった感じだ。

 

 

「ご主人はどう言っておられますか?」

 

 

「とりあってくれません。夫はまだ私の霊感を信じてる方なんですが、生まれた家に悪霊がいると認めたくないんでしょう。これに関しては聞いてくれません」

 

 

「お姑さんは?」

 

 

「義母はもともとこういう話が好きじゃないんです」

 

 

「それで、あなたは家の各所に御札を貼り、盛り塩をしている」

 

 

「ええ。悪霊が原因であればそれくらいしか」

 

 

「でも、占い師や霊能力者に見てもらいはしたんですね? それはご主人やお姑さんもお認めになったってことですか?」

 

 

「はい。怖いので無理に頼んだんです。だけど、みんなインチキでした。見当外れなことばかり言って。ビデオカメラを置けばいいなんて言われたんですよ。そんなので悪霊が撮れるはずもないのに」

 

 

「しかし、仮に悪霊が原因でなかった場合、」

 

 

 そう言いかけると、女は顔を突き出してきた。

 

 

「いいえ、あれは悪霊の仕業です。そうとしか思えません」

 

 

「すこし聴いて下さい。悪霊が原因でない場合も考えた方がいい。これはあなたの為にもなるはずですよ。誰かが投げ入れてるとは思えませんか?」

 

 

 女は憐れむような表情をしている。彼は鼻に指をあてた。さっき見た映像を思い出そうとしたのだ。この女がいつも見てる家、高い塀と平たい石の位置。そうか、同じ場所に重さの違うものを投げ入れるのは無理なんだ。

 

 

「――ああ、それは違うな。それは置かれてるんだ。いつも同じ場所に」

 

 

「そうです。塀の外からでは無理です」

 

 

「当然、戸締まりは厳重にしてるんですよね?」

 

 

「はい。毎晩、私がきちんと見てます」

 

 

 カンナは暗い外へ目を向けた。なんだか寒気がしてきた。つまり、悪霊はいるってこと? そういえば、私って占い師の助手だった。毎日不思議なことばかり経験してるんだっけ。だったら、悪霊がいてもいいってことになるんじゃない? やだ、ひとりでトイレ行けない。髪洗うとき目つむれない。

 

 

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雑司ヶ谷近辺に住む(あるいは
住んでいた)猫たちの写真集です。

 

ただ、
写真だけ並べても面白くないかなと考え
何匹かの猫にはしゃべってもらってもいます。

 

なにも考えずにさらさらと見ていけるので
暇つぶしにどうぞ。