「言いたくないってか。じゃ、違うことを訊くよ。あの爺さんのパソコンには沢山の写真があったんじゃないか?」
「なんでそんなこと知ってる?」
「俺はなんでもお見通しだからな」
「はっ! ふざけるな。ほら、ちゃんとこたえろよ。なんで知ってる?」
「パソコンにはビラの元になったデータがあったんだろ? これはあんたが教えてくれたことだ。それに、二度目のは写真付きでカンナのは隠し撮りされたものだった。それだけじゃない。あの爺さんがカメラ持って出歩いてたのは誰でも知ってるよ」
「なるほど。筋は通ってるな。ま、うんざりするほど写真があったのは確かだ」
「だろ? ってことは、あんたたちはそれも調べたんだよな? そこになにか写ってなかったか?」
刑事は睨むように見てきた。スピーカーからはジェイムス・ブラウンの歌う『Sunny』が流れてる。彼は口ずさみながら待った。
「質問の意味がわからねえな」
「しらばっくれるなよ。いいか? あんたたちは俺を犯人と思ってた。でも、そうじゃない可能性が出てきた。つまり、わかりやすい動機を持つ者が嫌疑から外れたってわけだ。そしたらどうする? 他に動機を持ってる人間を探すだろ? そうなりゃ、爺さんの持ち物は全部調べ直すはずだぜ」
「ま、そうなってもおかしくはないな」
「だよな? 俺は二時間ドラマをよく見てっからな。それくらいのことならわかる」
「二時間ドラマだと? はっ! あんなの嘘っぱちさ。なんにもわかってねえ連中がつくってんだよ」
「でも、当たってる。そうだろ? あんたたちはうんざりするほどの写真を一枚一枚見てるはずだ。違うか?」
「なんでそこまで写真にこだわる?」
蓮實淳は立てた指を前へ出した。相手の目は自然とそこへ向かっていく。
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《雑司ヶ谷に住む猫たちの写真集》