祭りの初日もオチョとクロはアパートの屋根にいた。二匹並んでうつむいている。
「っていうかよ、どんだけここにいりゃいいんだろうな?」
「ま、ペロが見つかるまでだろうよ。だけど、毎日ここに来るつもりか? あの木を登るってなると三日に一度は死ぬぜ。それに、降りるのも大変だ」
「でも、ここが一番だろ? 俺はあの生ゴミんときも思ってたんだ。こっからだったら全部見えちゃうよなって。――ああ、蛭子のおばはんが出てきたぜ。な? あんときだって、こうしときゃすぐわかったんだ。ま、そこまでするこたなかったから黙ってたけどよ」
澄んだ空には雲が流れてる。それを切るように鴉が飛び去っていった。遠くからは聞き馴れない音がしてる。
「おっ、はじまったみてえだな。ほら、聞こえっだろ? トントントンってのが。ありゃ、祭りの音だぜ」
「はっ! あんたはいつも暢気だね。羨ましいよ」
下を覗きこみ、クロは尻尾を震わせた。様々なものが散乱してる。落ちたらただじゃ済まないだろう。
「なあ、ペロが見つかったら、どっちかが知らせに行くんだよな?」
「まあ、そうなるな」
オチョは目だけ向けてきた。瞳は細まってる。
「おい、なんだよ、その顔は。俺に行けって言う気か?」
「華々しい活躍したいって言ってたろ。ペロの居所がわかりゃ、そういうのになるってもんだ。それに、俺は年寄りだからな」
耳を垂らし、クロは逆側を向いた。――こういうときだけ年寄り振りやがって。そう思ってるところにグレーのスーツがあらわれた。
「ん? ありゃ、先生じゃねえか。あのもじゃもじゃはそうだろ」
「そのようだな。蛭子んとこに行くのか? どれ、ひとつ鳴いてみるか」
笑いながら彼は手を振った。しかし、角を曲がったときには表情を整えてる。
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《雑司ヶ谷に住む猫たちの写真集》