わたしの日常と星屑

明日に戻りたい

今年の桜は

 

「今年の桜は少し遅いみたいよ」

 

 

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10時まで。 - わたしの日常と星屑

続きです。

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10時より少し前。
神戸の到着アナウンスが流れて支度をしようとしたところ、隣に座っていた優しい笑顔の老人にそう話しかけられた。

「あなたは神戸で降りるのでしょう?きっと桜が見頃よ。」

 

え?

僕が声に出したのと同時に、新幹線は神戸に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優しく笑うその老人に、何も聞くことはできなかった。

いってらっしゃいという言葉を背に僕は走った。

 

 

 

 

 

 

 

老人の言葉を頭の中で繰り返す

 

「彼女のこと 抱きしめてあげなさい」

 

僕のことを知っていたのだろうか
彼女のことを知っていたのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

分からない。

 

 

僕がなんで走っているのかさえ分からない。
彼女に送ったメールは1行だけ。
神戸に着いたら電話しよう。
まずは、ご飯にでも誘うと思っていた。

でも、止まれない。

早く、会いたい、会いに行きたい、抱きしめたい。

 

「            ハルカっ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2年前。
新幹線で神戸に向かうとき、横に座っていた女の子がまっすぐ前を向いて、

泣いていた。

 

声には出さず、静かに。
唇の色がなくなってしまうほど噛み締めていたから、きっと強い子だ。

 

「今年は、雨が多いわねぇ」

そういうと、女の子はこっちを向いて頷いた。

 


うん。優しい子だ。

知らない老人の言葉を無視するのではなく、涙を隠して笑顔を向けてくれた。

 

 

 

 

「私は、ハルミ。これから神戸にいくの。あなたは?」

そう聞くと、女の子は少し驚いて優しく笑った。

 

 

 

 

 

 

「私はハルカ。おばあちゃんと名前似てるね。ふふ嬉しい」

 

 

 

 

 

 

歳をとっていろんなことを忘れてしまったけど、あの日のことは今でも覚えてる。
神戸までの3時間。たくさんのことを話した。

彼の名前は確か、冬馬。
名前は冬だけど、夏みたいな人だと彼女は笑った。

「ハルカちゃん。今度は3人でお話したいねぇ・・・」

 

 

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4話目。

もうちょっとで終わるね。

ここで主人公に名前をつけました。

冬馬。そして彼女がハルカ。