気にかかった文章】
第5章 コロナ渦を生み出してしまった日本の医療の構造的欠陥
「へ~」
「そうだよね~」
「わかる~」
話題が変わって、
「へ~」
「そうだよね~」
「わかる~」
話題が変わって、
「へ~」
「そうだよね~」
「わかる!私なんてさ~…」
やっと彼女の順番が回ってきたようで、自分のことを話し出す。で、他の女子たちも。
「へ~」
「そうだよね~」
「わかる~」自分の生活や恋愛の現状説明と、その周囲の人間関係の機微を赤裸々に語る、それだけ。~
「何なんだ!この不毛な会話!」~
ピーン!!!
と、私は気づいた
実は、私がいままで
「大事なのは重々わかるんだけど、今ちょっと忙しいから…」
と後回しにしていたコミュニケーション術のキーワードがそこにあったのだ。
つまり、
「へ~」=傾聴
「そうだよね~」=共感
「わかる~」=承認
この世界でよく言われる
「人は自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい」
という名言につながるコミュニケーションスキルをファミレスで気づかされたのだ。
10年前、妻は私に向かって
「私の話も聞かずに体温とノドなんか見て終わり?
あなたは私の話を、気持ちを聞いてくれる気なんてないんでしょ?
苦しみをわかってくれる気なんてないんでしょ?
だから私は悲しくて仕方がないの!」
と言っていたのか!と…~雷が落ちたような感覚に陥ったことをいまでも覚えている。
医師は職業柄即座にその「原因」を追究し「対策」を練って提出するという「解答探しの旅」を始めてしまう。
多くは医師・患者間の対話やコミュニケーションを重ねながらよりよい解を導いていくべき非救急的な診察だ
日本はいま世界一の高齢化率を誇っている。慢性期医療・終末期医療が大部分を占めつつあるのだ。こうした世界で、対話・コミュニケーションのもつ意味が非常に大きいのは言うまでもないだろう。
妻だって、自分が風邪だろうくらいは見当がついていたはずだ。
答えなんてわかっていた。
でもそれをつたえたかった。
多くの患者さんがこうした悲しい気持ちを押し殺して、今日も作り笑いで診察室をあとにしているのかもしれないのだから。