日本と西欧の500年史❶ 西尾幹二著(2024年発行) | ウインのワクワク「LIFE」

ウインのワクワク「LIFE」

            琴線に触れるものを探して

 

本書から】

 

第一章 そも、アメリカとは何者か

日本人はなぜ負けると分かっていた戦争をしたのかとよく言う人がいるが、開戦時と終戦時とでは同じアメリカではなかったことをみな忘れている。

 

権力をつくる政治は、剥き出しの暴力を基本としている。それに対して権力がつくられた後での、そのもとでの政治、あるいはつくられた権力をめぐる政治もある。われわれが議論している政治はみんな後者である。だから第一次世界大戦の後の、各国の~あれこれ議論しても、全部権力がつくられた後の始末というか、それをめぐる政治にすぎない。

 

権力をつくる政治は常に剥き出しの暴力であるということが、歴史の中で証明されてきた。それが20世紀の現実ではないかと私は考える。

 

OPECがやったことはスペイン、イギリス以来の略奪のシステムに対して初めてチャレンジした、大変に新しい出来事だったのだと思う。~さらに驚くべきことは、いつの間にか「先物取引」という巧妙な金融政策によって石油の価格は再びニューヨークとロンドンが決めるようになって今日に至っていることである。

 

武力に勝るアメリカがどうしても及ばなかったのは日本の工業生産力だった。

 

~これがイラク戦争の原因であろう。ユーロからドルを守るために、戦争を起こしながら、世界を間接支配しようとするアメリカ一流の戦略であったと考えられる。

 

500年の歴史を持つスペイン帝国以来の「略奪資本主義」は間違いなく行き詰っている。現代は近代以前からの歴史の大転換期と言っていい。日米戦争より前にすでにあったアメリカの病的な膨張拡大志向がこのままつづくのか途絶えるのか屈折点である。

 

ハワイをめぐって日本とアメリカは反目するようになる。ハワイ王朝が日本に救いを求めて、明治天皇に王朝間の血縁の契りを願い出てきた有名な出来事は、1881年(明治14年)であった。他方からいえば、アメリカとってハワイは海上権力の確立にとって不可欠だったということにもなる。