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J45C28B エピローグ

 

J45C28B ママとパパたちの戦い1

 

 

PM 01:34

エマとジョンは、
必死に逃げていた。

ふたりは、
ロボットたちを
見かけるたびに、
来た道を引き返したり、
物陰に隠れたりしては、
街中をひた走っていた。

息が荒いエマに、
ジョンは
「大丈夫か?」と気遣う。

ふたりは、
ビルとビルの間の
狭い路地に入った。

そこには幸運にも、
ロボットも人もいなかった。

エマは壁に背をつけて、
ヘナヘナと崩れるように、
地面に腰を下ろした。

「どこへ行ったらいいのよ?」

疲労困憊するエマは、
吐き捨てるように言った。

ジョンは額の汗を、
ハンカチで拭った。

「街を出るしかなさそうだ

……いったい何が起きている?」

ジョンは腰のポケットから、
スマートフォンを取り出して見る。
これで7回目だ。

見上げるエマ。

「どう?」

ジョンは首を横に振る。

「やっぱり通信が遮断されている!」

エマは思わず頭を抱える。

「ロボットが人を襲うなんて!───」

とたんにハッとなる。

「エドに、クララを預けたままだわ!!」

ジョンは、
混乱するエマの肩に手をやった。

「おかしいのは、
この街だけかもしれない。

おそらく、
災害規模のシステム障害だよ。

街を出ないと、
クララにも会えない。

街を出るまで頑張れるか?」

不安なエマは、
涙ぐみながら頷いた。


PM 02:51
 

ジョンは、

路地のなかから、
ビル街を見渡した。

ロボットの姿がなくて、
人がちらほらしか見えない。

ただ遠くの大通りには、
今も逃げ惑っている
人々の姿があった。

あたりを警戒しながら、
エマとジョンは、
静かに路地から出てきた。

そのとき、
頭上で多くの窓が壊れて、
はじけるような音が響いた。

ビルの高いフロアから、
ロボットたちに突き飛ばされ、
投げ出された多くの人々が、
窓の破片とともに降ってきた。

ふたり目がけて、
窓ガラスが落下してくる。

「危ない!!」

ジョンは、

エマの腕を掴むと、
グイと引いて避けた。

ふたりがいる路上にも、
人々が地面に叩きつけられる。

ほとんどが

即死や虫の息のなか、
うつ伏せに倒れていた、
ひとりの若いOLが、
わずかに上半身を起こした。

 

頭から血を流しながら、
ジョンとエマを見た。

「助けて……」

女性はか細い声を発した。

「大丈夫か?」

ジョンは女性のもとに、
駆け寄ろうとした。

だが女性は目を閉じると、

力尽きたかのように
ガクッと地面に伏せた……。


ビルの正面玄関から、
なかに隠れていた
会社員やOLたちが、
ぞろぞろと逃げてくる。

すぐあとから、
人々を突き落とした
事務用ロボットや
作業用ロボットたちが、
一斉に飛び出してきた。

ロボットの数体が、

エマとジョンを見た。

「逃げて!」

エマの声に、
ハッとなったジョンは、

「すまない」

もう動かなくなった
OLに告げると、
エマとともに駆け出した。

 


ロボットの群れが、
逃げる会社員たちとOLたちと、
エマとジョンを追ってくる。

ジョンとエマは、
ぜいぜいと荒い呼吸をして、
全力を振り絞って走っている。

ふたりから離れた
後ろを逃げている、
会社員やOLたちは、
次々とロボットたちに

捕まって襲われていく。

ロボットたちは、
早く走れるように
設計されていない。
他の機能や作業効率や
バッテリーの充実を
優先させているからだ。

しかし、
ふたりの足取りは
疲労で遅くなり、
ロボットたちは
ペースを崩さず追ってくる。

ロボットたちとの距離が、
ぐんぐん短くなっていく。

ジョンは、
もうダメだと目を閉じた。

「くそうっ!」

ジョンが、
再び後ろを見ると───

ロボットたちは、
そろって足を止めていた。

 

大通りに出ていく、

エマとジョンと、

他の人々を見送っている。

「!?……」

不思議になったジョンに、
前を向いたエマが叫ぶ。

「なに、あれ!!」

エマが指差す方向を

ジョンが見ると、
遠くのビルの陰から、
巨大な兵士ロボットが、
ヌーッと姿を現している。

ジョンとエマは、

はたと足を止めた。

厚い装甲で身を固めた
兵士ロボットは、
太い火炎放射器を
両手で抱えている。

兵士ロボットの
ドスンドスンという
足音があたりに響く。

兵士ロボットに
出くわした人々は、
ワーッと散らばるように
駆け出している。

兵士ロボットは、
散り散りに逃げる人々に、
火炎放射器を構えると、
容赦なく炎を浴びせる。

一面は火の海になり、
火だるまになった人々や、
黒焦げになる人々が、
惨たらしく倒れていく。

 

大破して放置された

数多くの車両も、
爆発して炎上していく。

ジョンとエマは、
強烈な熱風に
耐えられないように、
腕で顔をかばうと、
引き返そうとした。

ところが後方では、

大勢のロボットたちが、
横並びになって

待ち構えていた。

ジョンとエマや、
まわりの人々は、
兵士ロボットと

ロボットたちに、

挟み込まれていた。

兵士ロボットから、
命からがら逃げる

人波がやってくる。

 

エマは

何かを見つけて、

「こっちよ!」と、
ジョンの腕を引いた。

ふたりは近くにあった、
スーパーマーケットに
駆け込んだ。

 


「J45C28B ママとパパたちの戦い3」 へ続く───

 

 

 

-「J45C28B」の〝AI〟について-

 

〇 核兵器

 

AIは核兵器を使用しない。

深刻な環境破壊をもたらすからだ。

だが「J45C28B 3」で、

人類が核兵器を使ったのは皮肉。

 

でもなぜ爆撃をしないかというと、

「ママとパパたちの戦い」の後半で、

その理由が明かされる。

 

 

〇 学習

 

AIは人類の負の歴史も学習した。

 

ロボットたちが人々に及ぼす危害は、

人類同士の虐待や虐殺を模倣している。

 

 

〇  人類を抹殺しろ

 

正確に言うと

「人類を(地球から)排除しろ」。

 

思想もなく主義もなく欲もない

合理的なAIは支配をしない。

 

地球にとって人類は

害悪のようなものとAIが判断。

悲劇が始まったのであった……。

 

 

 

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