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J45C28B エピローグ

 

J45C28B ママとパパたちの戦い1

J45C28B ママとパパたちの戦い 2

 

 

スーパーの店内は、

停電で薄暗かった。

奥にある陳列棚の裏に、
店長と二人の従業員が、
身を寄せて隠れている。

店長のフィルは、
入ってきたジョンとエマに、
「早く!」と手招きした。

ジョンは静かに頷くと、
エマとともに行った。

ふたりは、
フィルたちと並んで、
陳列棚の裏に隠れる。

中年の女性従業員アイラが、
ひどく心配な面持ちをして、
小さな声で聞いてきた。

「この人知りませんか?」

アイラが差し出した
スマートフォンには、
笑顔の女性の画像がある。

それが
ビルから落とされて、
助けを求めるなり

動かなくなった、
あのOLだった。

ジョンとエマは、

言葉を失う。


「近くの会社に
勤めている私の娘です。

通話もつながりません。

心配で、心配で……」

返答に困る、
ジョンとエマ。

20代で勝ち気そうな、

女性の従業員アリシアが、
シーッと合図する。
 

陳列棚の端から顔を出して、

フィルが外を注視している。

 

ジョンとエマと

アイラとアリシアは、
フィルの後ろから、

大きな窓の外を見る──。

兵士ロボットの巨大な足が、
店の正面まで来ていた。

兵士ロボットの前で、
逃げ遅れて、
ひざまずいて
命乞いをする、
家族の姿がある。

幼い兄妹は、
怯えて身を寄せ合い、
母親がかばうように、
ふたりを抱いている。

父親は両手を重ねて、
「助けてください」
と兵士ロボットに懇願する。

兵士ロボットは
微動だにせずに、
足元の小さな家族を
見下ろしている……。

すると背後から、
ロボットたちが
忍び寄ってくる。

母親から、
幼い兄妹を奪おうとする。

「やめて!!」

 

幼い兄弟を抱きしめ、

必死に抵抗する母親。

だが幼い兄妹は、

ロボットたちに

強引に引き離され、
さらわれてゆく。

幼い兄妹の
「ママ!」という声と、
悲鳴が遠ざかっていく。
 

ジョンはその状況に、

思わず飛び出そうとする。

 

フィルは、

ジョンの腕を掴んで止め、

無言で首を横に振った……。

母親と父親は、
ロボットたちに腕や体を
押さえつけられている。

二人はひざまづかせられ、
まるでテロリストの人質の

処刑のような格好になる。

拳銃を手にした
2体の警官ロボットが、
スタスタとやって来る。

父親と母親の頭に
銃口を向けるなり、
すぐ引き金を引く。

銃声とともに、
母親と父親は、

バッタリ倒れる。

アイラとアリシアは、
涙ぐんで口を抑えている。

 

フィルは険しい表情で目を伏せる。

ジョンは何もできない自分に、
悔しさのあまり歯を食いしばる。

エマは悲しみがこみ上げ、
ジョンの肩に顔を埋めた……。

フィルは、
気を取り直すように、

強く首を振る。

ジョンの肩を軽く叩いて、
小声で言った。

「ここにいると危ない。

生きるぞ……」


PM 03:52

みんなは、
身をかがめて隠れながら、

スイングドアを通って、

店の裏側に下がった。

バックヤードの廊下も、
明かりがなくて、
窓から差し込む
光だけで薄暗い。

フィルは、
ドアの脇にある防火扉を、

音を立てないように、

そっと閉じた。

「これでとりあえず、
あのロボットたちは、
すぐに入って来ない」

フィルは、
ため息をついた。

 

さっきの夫婦の悲劇に、

ジョンもエマも、

アイラもアリシアも、

気が沈んで無言のままでいる。

 

フィルは小声でジョンに言った。

 

 

「さっき君が出て行ったら、
みんながやられただろう。

 

銃を持っていても、
あいつらの数には敵わない。

俺たちは、
スーパーヒーローじゃないんだ」

 

フィルの目を、

ジョンはじっと見つめた。

 

「いつか必ず反撃のときがくる。

 

その時まで生き残るんだ……」

 

ジョンは、

自分を納得させるように、

小さく二度頷いた。


「いったい、
何が起こったか知りませんか?」

フィルは首を横に振る。

「わからない……
電力供給システムが、

いきなりシャットダウンして、
ネット回線や衛星通信も、
すべて遮断された。

最初はテロかと
思ったんだが……。

あのロボットたちの
暴れようを見ても、
尋常じゃないことが、
ここで起こっている!」

「ロボットの反乱とか?」

アリシアが言った。

フィルは苦笑いをした。

「昔のSF映画ではありがちだが、
今となっては現実的───」

突然、店の方から、
何かが突っ込んで、
破壊される大きな音が響く。

みんなはビクッとする。
 

ロボットたちが

入ってきたのか、

乱暴に棚が倒されて、

商品がドサドサと
落ちる音がする。

 

フィルは無言で、

奥に行こうと指差すと、
商品の倉庫へ向かう。

ジョンたちも続いて、
その場を静かに離れていった。


PM 04:25

みんなは倉庫に着くなり、
ハッとなって立ち止まった。

商品整理をしていた、
旧型の作業用ロボットがいた。

みんなは身構えて警戒する。

 

だがロボットは、

襲いもせずに平然としていた。

 

ロボットが、

フィルに向かって言葉を発した。

 

「店長さん、
メッセージが届いてます。

〝人類を抹殺しろ〟

……だそうです」
 

 

「J45C28B ママとパパたちの戦い 4」 へ続く───

 

 

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