点滴石をも穿つ

今回は、『点滴石をも穿つ』の意味と効果を考察し実生活に生かすためための考察をしていこうと思います。

●意味

点滴石をも穿つは、『漢書』巻51枚乗伝に記された『点滴穿石』が日本に伝来し訳されたもので「点滴」のほか「雨垂れ」「水滴」など類義語が用いられることもあります。

意味は、小さな水滴でも、長い間同じ所に落ちつづければ、硬い石にも穴を開けてしまうことから、小さい力でも積み重なれば強大な力になることの例えです。また、小さな努力でも、根気良く続けていれば成果が得られることに例えられたりします。

●効果

このことわざから学べる効果は、小さい力を時間的てこの原理で強大な力にできることや焦点化により小さな力を収束できることではないでしょうか。

◇身近な物

てこの原理を利用した身近な道具としては、ハサミ、栓抜き、缶切り、紙の穴あけパンチや自転車の変速ギヤなどがあります。またレバレッジ投資などありますがこれは、入力に対する出力が外因に依存するため、てこの原理ではなくギャンブル性が高い別な物と考えられます。

◇小さな力

身近な物では、握力、腕力、脚力などが比較的弱い人でも小さな力を距離、時間の量を増加させることで大きな力に変換して利便性を得ています。また「てこの原理」には、種類があり大きな力を距離、時間の量を減少させることで小さな力に変換する物もあります。自転車の変速ギヤで軽いギヤ比だと遅いがトルクが増加し、重いギヤ比だと速いがトルクが減少するので体感できると思います。

●応用

前記効果で、てこの原理の身近な物を見てきましたがこれらは、小さな精神力にも応用できると考えられます。

◇応用の必要性

「働かないアリに意義がある 長谷川英祐 著」の進化生物学の研究でアリの生態観察から働きアリの7割は、休んでいて1割は、一生働かないことがわかり、そして働かないアリがいるからこそ、アリの社会組織は存続できると述べています。その中で働くアリ、休んでいるアリ、一生働かないアリの違いを反応閾値(仕事に対する行動力の差)というアリの個性を定義しています。
人間の社会組織でも期限前から計画的に行動する人、期限間近に行動し始める人、期限を過ぎても行動しない人がいるように似たような個性があるようです。この刺激(目標と仮定)に対する反応閾値(行動力と仮定)が人により異なるとするならば「動機づけ」する方法も異なると考えられます。

◇行動力は生まれつき?

前記の刺激(目標)に対する反応閾値(動機が生じる感度)が生まれつき個体により異なるとすると同じ目標や課題が集団に課せられたときに2割は、すぐに行動し7割は、期限間近に行動し始め1割は、行動しない未達成者となることを運命付けられているように見えます。身長・体重・筋力・容姿などと異なり外見から分からない反応閾値(動機が生じる感度)を考慮せず行動やその成果を一律に評価されると理不尽さ・諦め・自尊心の低下・絶望などを感じてしまうかもしれせん。

更に他者と比較し努力、意欲、気合、根性、忍耐などが足りないと叱責してくる人もいるかもしれません。よく考えるとこれらの精神論は、一時的な効果があるかもしれませんが次の例えのように無知による不公平・理不尽・同化圧力などを含んでいます。

例.格闘技で対戦相手は、身長2m、体重150kg、筋骨隆々、試合前から威嚇し今にも襲いかかろうとする勢いです。一方こちらは、身長1.5m、体重55kg、中肉中背、試合前から戦意喪失です。1ラウンド目は、捕まったら最後とリング上を逃げ回りなんとかコーナーに辿り着きました。ここで格闘技の指導者がコーナーに来て何故攻撃しないのか勝とうとする意欲・気合・根性はどうしたのか努力してきた練習の成果を見せろと叱責してきます。さらに同じ人間、同じリング、同じルールで戦っているのだから勝てないはずはないとまるで体重の階級差が見えないような発言もしてきます。

上記の例で格闘技の指導者がアドバイスすべきは、相手の巨体と筋肉量の多さに比例するエネルギー消費と持久力の低さを狙い運動量を増加させ試合後半で相手が動けなくなったところで筋肉の薄い部分への攻撃に転じるという勝利の可能性がある具体的な戦術だと考えられます。

◇生まれつきに対する戦術

生まれつき反応閾値(動機が生じる感度)が低くても、落ち込んだり劣等感を懐いたり運命を受け入れて諦めたりする必要はありません。また社会の一律評価や他者との比較は、無批判に受け入れる必要もありません。生まれつき反応閾値(動機が生じる感度)が低いと気が付けば、それに合った自己操縦方法で行動力の高い人と同等の成果を上げる戦術があるのですから。

●同じになるために生まれてきたのではないメモ

万物に差があるのは、多様性による流動性を生み出し変化(進化)の可能性をもたらすため予め組み込こまれていた法則の結果のように感じます。生物で考えると種の生き残りには、一つの環境だけに適応してしまうと環境の変化が起こると絶滅の危機に瀕してしまうため個体差による多様性を生き残り戦略として組み込んでいるように考えられます。

そうして考えると個体は、可能性の一つでありその個性を発揮することが役割・使命であり他の何かと同じになるために生まれてきたのではないと思えます。

◇戦略

具体的な戦術の前に戦略としては、何が必要でしょうか。
人も生まれつき個体差がありそれは、外見だけではなく刺激に対する反応閾値(動機が生じる感度)にも差があることを考察してきました。差があるのですから他者と同じ方法や精神論では、行動や成果が得られないことも考察しました。
何故他者と同じように行動したり成果が出せないのかを比較するのではなく自分の反応閾値(動機が生じる感度)の差を知り受容しそれに合った目的・目標を設定する必要があると考えます。
現代は、短期的な成果や利益を求める目標を掲げそれに伴う競争力や効率化の向上を厳しく求められる時代です。
しかしそうしたショートセラーではなく個性を活かしたロングセラーを目的・目標に設定するのも良いかもしれません。

 

※関連記事「目標

 

◇戦術

「点滴石をも穿つ」から回り道をしてきましたがここから反応閾値(動機が生じる感度)の低い人でも時間的てこの原理を利用し動機づけを強化し行動に繋げる方法について次の記事で具体的に記述していこうと思います。

 

※関連記事「小さなことから行動力を培う

 

 

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