動機付けする方法

今回のテーマは、行動の動因となる動機付け(モチベーション)を考察しつつ前記事「点滴石をも穿つ」で考察した時間的てこの原理を動機付けに応用する具体的な方法を書いていこうと思います。

●行動の必要性

◇行動と価値

「人の価値を決めるのは、行動である」と言われることがありますが何故でしょうか。心の発露(投影)である行動が、可視化・可聴化された時に初めて自他に認識・評価され価値化されるからだと考えられます。しかし我々は、いつの間にか心が求める自由な行動ができなくなりそのような自分を見て落胆したりしていないでしょうか。心が求める対象に近づく行動ができる様になるためには、その動因となる動機付け(モチベーション)に対するアプローチ方法が自分に適している必要があります。

◇行動しなければ分からない

行動が必要な理由は、求める対象への想像や知識による机上の思考だけでは、その対象の表面的な情報しか得られず実態を知り得ないからです。

例:

  • スポーツを座学で学ぶのと実技で練習しながら学ぶのでは、全く異なります。
  • 求める対象もスピードに遅速の違いは、ありますがリアルタイムに状態変化しています。

●見えない束縛

子供の頃は、思い立ったらすぐに行動できていましたがいつの間にか大人になると見えない束縛により行動ができないことが多くなります。この見えない束縛について考察していきます。

◇ノミの束縛

ノミのサーカスというものが昔ありました。サーカス用のノミの最初の訓練で、背の低い箱にノミを閉じ込めてジャンプすると箱の天井に頭がぶつかるようにすることで、箱から出してもみだりに高く飛び跳ねないようにする訓練です。ノミのジャンプ力は、ノミの身長の150倍ですが箱から解放されても見えない過去の環境に能力と行動を束縛されています。

◇象の束縛

象使いが子象を調教するときに、地面に杭を打ち足枷を子象の足に付けて育てることでやがて成長した象は、すぐに抜け折れそうな細い杭につないでおいても逃げようとしないという見えない過去の環境に能力と行動を束縛されています。

◇人の束縛

幸いにして自由主義の現代社会は、他人を強制的に隷属させることは禁止されており狭い箱に閉じ込められることも足枷で杭につながれることも刑務所以外はありません。しかしどうしたことか見えない過去の環境に能力と行動を束縛され自由に自分の行動を起こせなくなるという心と体の遊離感やもどかしさを感じることはないでしょうか。

●刷り込み、思い込み、習慣

前記「見えない束縛」では、行動できない負の側面にフォーカスしましたが正の側面にフォーカスすると「見えない動機付け」としても作用しています。

 

例:

親が子供を見てあなたは素晴らしい音感を持っているので音楽の才能があると言い聞かせ続けると、やがて子供は思い込み「見えない動機付け」により何の抵抗もなく練習に励み才能を開花させることがあります。

 

この束縛(負)と動機付け(正)を観察するとこれが環境への学習・適応であることが分かります。そして環境への学習・適応(刷り込み、思い込み、習慣)の形成プロセスを洞察すると時間的てこの原理が作用しているのが見えてきます。

●環境への学習・適応の形成プロセスメモ

◇学習・適応の形成プロセス

学習・適応について考えると、後天的に獲得されるパブロフの犬の実験で知られる条件反射などがあります。この条件反射には、第一信号系(五感{視・聴・触・味・嗅}から入る単純な刺激)による無意識的な条件反射と第一信号系から相互に作用しながら派生する第二信号系(複雑な心理活動、抽象的な人間思考、学習、習慣、癖など)による半無意識的な条件反射があります。パブロフの犬の実験内容を見ると特定音と餌を第一信号系の条件付けとして繰り返すことで条件反射を自動反応プログラムとして覚え込ませています。特定音が鳴ると餌を連想し食欲が喚起され唾液が出るように条件付けプログラムされたと考えられます。

パブロフの犬の例から以下の3つ重要な鍵があると考えられます。

  1. 信号強度: 餌という利・好(生存に必要な食欲という動機)
  2. 条件付け: 特定音と餌の関連付け(特定音を反応の起動スイッチとしてルーチン化する)
  3. 時間  : 繰り返し(学習、習慣、癖などの定着)

●動機付け(モチベーション)への応用方法

一流スポーツ選手が用いるルーチン化(ルーティン)は、自分で決めた特定の身体的動作と理想のフォーム、動作、成功イメージ、動機付けなどを練習で繰り返し条件付けすることで本番で特定の身体的動作を第一信号系入力とし第二信号系の自動反応プログラムの起動スイッチとして用いていると考えられます。

前記でパブロフの犬の例から3つの重要な鍵の例を上げましたが人間の例に置き換えてみます。

  1. 信号強度: 利:自己成長に繋がる、好:自分の好きでやりたいことを動機にする。
  2. 条件付け: 簡単で前向きな特定の言動を過去の成功や幸せと関連付け反応の起動スイッチとして条件付けする。
  3. 時間  : 小さな成功・達成を繰り返す。(学習、習慣、癖などの定着)※

※時間的てこの原理は、小さな力が長期間目標に焦点化すると大きな瞬間的な力を凌駕するというものです。ここでは、小さな成功・達成を繰り返すことが動機付けや自信を強化し習慣が定着化し行動力が向上することを目的にしています。

●まとめ

自分の成長に望みがなく好きではない仕事にやる気を出せと言われても動機付け(モチベーション)を維持するのは、容易ではありません。40歳定年制の導入など第二、第三の人生設計が必要な時代になりつつあります。第二、第三の道を予め見つけておく必要があるのかもしれません。その時が来て行動できるように少しでもこの記事が参考になれば幸いです。