雪花秀 061



嗚呼、クリスマスになるとやはり想い出す。
あの年のクリスマス。
私はいつものクリスマスのように、鶏モモのローストとなにがしかのオードブルを作って二人で食べようとしていた。
しかし、祥一郎はそんな重いものはもう食べられなくなっていた。
亡くなった後、冷蔵庫で見つけたほんのちょっと齧っただけの鶏モモ。
それを見つけた私の、激しい慚愧の念と嗚咽。
介護の仕事をしていてつくづく思う。
人は食べないから死ぬのではなく、もう死ぬのだから食べなくなるのだ。
どんなに食べる機能が残っていても、もう死ぬ人は食べなくなるのだ。
祥一郎もそうだったのだろう。
あの頃の私はそんな兆候さえ見逃して、おめでたくクリスマスを祝おうとしていたのだ。一緒に年を越そうとしていたのだ。
私のこの記憶は消えない。おそらくずっと。
しかし少しばかり風化したなら、祥一郎の仏壇に鶏モモを供えることができるだろうか。
生きているうちにそんな日がくることを願う、愛する人の7回忌を間近に控えた孤独な男が此処に居る。
まだまだメリークリスマスなどと言えない、言われたくない男が居る。
でも・・・でも・・・いつかきっと・・・・。



↓祥一郎の供養の為によろしくお願いします。
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