その昔、東北をバイク旅した時の話です。

長文です… お暇な方はお付き合いください。

 

 

 

【 突然の大雨に遭遇 】

 

 

旅の二日目は、温泉街に近いキャンプ場に泊まる予定でした。

しかし、朝から雲行きが悪く嫌な感じ…

 

 

 

 

 

 

高速道路を移動中にパラパラと降って来て、あっという間に土砂降りの雨に。 天気予報では明朝まで雨が残るとの事です。

サービスエリで休憩していると、目的地方面の空には稲光が見えます。

 

「こりゃ、キャンプ泊は無理だな…」

 

キャンプを諦めて宿での宿泊に急遽変更、電凸開始。

3件目の電話で ”部屋は宿のお任せになるが、今予約するなら夕食付きで受けられる” という宿を発見。 

 

「是非、お願いします!」

 

お盆明けの平日だったからでしょうか、キャンセルが出たのでしょうか… あっさりと宿を確保。 良い意味で拍子抜けした私。 次はキャンプ場に連絡をしてキャンセルのお願いです。

 

当日キャンセルという失礼極まりないお願いでしたが、管理人さんは ”バンガローは満室” だし ”雷雨&バイクでのソロキャンプ” という私の状況を理解してくれた様で、無料キャンセルにしてくれました。

 

 

 

【 山あいの一軒宿 】

 

 

高速道路を降りて町外れにあった道の駅まで移動、宿のチェックイン時間まで時間を潰しながら宿の位置を確認すると、温泉街からは外れた山間の一軒宿である事が判明しました。

 

「この大雨の中、山道か…」

 

覚悟を決めて山道に突入。

所々にすれ違いゾーンがある、”一応舗装されている林道” を上ること15分。 無事に宿へ到着しました。

 

歴史を感じる玄関でレインウェアを脱ぎ、雨で重たくなったデニムを引き摺りながらチェックイン。 予定が前倒しになったので、夕食時間は一番早い時間でお願いをしました。

部屋へ案内されて、ほっと一息を付くまで気に留める余裕はなっかたのですけど、とても趣のある宿です。

 

 

部屋は ”ザ・昭和レトロ” (笑

 

 

 

 

 

 

廊下はキシキシと床板の軋む音がします。 一瞬、京都二条城の ”鴬張り廊下” かと思いました(笑

当日予約のよそ者な私を快く受け入れてくれた宿です。 贅沢を言ってはいけません。 むしろ、感謝すべき対応ですよね。

 

そんな事を考えていると、真夏の大雨をレインウェアで走って来たので体は蒸れてベタベタ状態。 部屋で一服した後、汗でベタつく肌を流しに風呂へ直行です。

 

 

 

 

 

 

大雨だったので露天風呂はパス。

内湯は加温なしの源泉かけ流しの硫黄泉。 仄かに硫黄の匂いが漂う、いい感じの内湯でした。

 

キャンプの予定が大雨で全て崩れてしまい、時間はたっぷりダブついています(笑

温泉でさっぱりした後は、超スーパー暇人と化してしまった私。 これはもう飲むしかないという状況です。

 

途中、道の駅で仕入れたツマミでビールで流し込み、食事会場でも追いビールしまくり。 夕食後には完全に出来上がってしまいました。

 

 

 

【 大女将(?)との会話 】

 

 

夕食後にウトウトしながらテレビを見ていると、飲み過ぎたせいか喉が渇いた私。

部屋に設置されている冷蔵は空です。 フロント(というか帳場)の隣にある冷蔵か自動販売機で買うしかありません。

 

気怠い体ともたつく足で、廊下をキシキシさせながらフロントへ向かいました。

 

 

 

 

 

 

21時過ぎの帳場、既に人は居ません。

自動販売機でお茶を買い、玄関の小上がりにある休憩テーブルで一服していると…

廊下が軋む音が近付いてきました。

 

そちらの方に目をやると、落ち着いた柄の和服に前掛けをした白髪の女性がいます。

私と目が合うと 「こんばんわ。」 と上品な微笑みで会釈をしてくれました。

 

「こんばんわ。」

 

軽く会釈を返しご挨拶をすると、白髪の女性は帳場の裏へ入っていきます。

私が煙草を一本吸い終えた頃、白髪の女性は帳場から戻ってきました。 上品な微笑みを浮かべながら私の方へ近付いてきます。

 

 

白髪の女性とは、こんな会話をしたのを鮮明に覚えています。

 

「どちらからお越し頂けたのですか?」

「〇〇の△△からです。」

「そうですか。 私は隣の◇◇で生まれたんですよ。  四十年前、この宿へ嫁いできたんですの。」

「そうなんですか。 女将さんでしたか。」

「今は娘夫婦に任せています。」

「あ、それじゃ大女将さんですね。」

「ごゆっくりなさって下さいね。」

「どうも。」

 

 

白髪の女性は軋む廊下を歩き、建物の奥へと歩いていきました…

 

 

 

【 女将との会話 】

 

 

翌朝、チェックアウトの順番待ちで帳場の隣で一服していると…

昨夜、ここで話をした大女将とそっくりな30歳過ぎ位の女性(こちらは綺麗な黒髪)が、帳場から出てきました。

 

私に上品な笑顔で 「おはようございます。」 と声を掛けてきます。

声や背格好、雰囲気も大女将と瓜二つ。 誰が見ても母娘だと一発で分かるほどにソックリです。 違うのは年齢と髪の毛の色だけ(笑

 

思わず話し掛けてしまった私。

 

「おはようございます。 大女将とそっくり、瓜二つですね。」

「よく言われたんですよ。」

「突然すみませんね。 昨晩、ここで大女将と世間話をさせてもらったんで、娘さんだと直ぐに分かりました。」

「御冗談はおよしください… 失礼します!」

「え??? はぁ?…」

 

 

 

【 番頭さんらしき人の衝撃的な話 】

 

 

女将とのやり取りの後、帳場周辺では波乱が巻き起こりました。

やりとりを隣で聞いていた番頭さんらしき初老の方。 そっと私の方に来ると、他のお客さんに目立たない様に、女将の応対に非礼があったとお詫びをしてきたのです。

 

私の声の掛け方も少々馴れ馴れしかったので、女将をナンパしてると誤解されたのかも知れないと思った事と、昨夜の大女将との世間話の内容を番頭さんらしき人に伝えました。

 

私が話し終えた後、番頭さんらしき人はとても動揺したようで、目をパチクリしながら…

 

 

・大女将は半年前に亡くなっている

・大女将の出身地と嫁入り時期は合っている

・大女将を見たという人は私で2人目

・1人目も、この椅子に座って大女将を見たと言ってきた

・この椅子と机は大女将が使っていた物

 

 

???!!!!???

 

 

俺は亡くなった人と会話をしたのか? リアルな夢だったのか? 女将が白髪の老婆に変装する余興でもしていたのか???

 

しこたま飲んで酔っぱらってたけど… 大女将とはしっかり会話したし、会話も楽しかったし、全然これっぽちも怖い感じなんてなかったし… きっとこれは素人相手のドッキリ企画だ… ちょっと、頭が混乱。

 

番頭さんらしき人も混乱したようで、お互いに変な状態での宿代精算をして、不思議な感覚のまま次の目的地へと出発しました。

 

 

 

【 事の顛末… 】

 

 

しばらくの間、宿から時候の挨拶が届いていました。

この数年、届かなくなっている事に気づいた私… 気になって調べてみると、既に廃業となっていました。

 

一度も女将さんや番頭さんらしき人から大女将の話はなかったです。 廃業してますから、これからもないでしょう。 もちろん、私からするつもりもありません。

ただ…

 

・亡くなっていた大女将とのやり取りは何だったのか?

・大女将が使っていた机と椅子は、その後どうなったのか?

 

 

お盆が過ぎる頃になると、未だに思い出してしまう不思議な出来事…

信じるか信じないかは、あなた次第(笑

 

 

 

【 最期に… 】

 

 

バイク旅で色々な宿に泊まってきましたが、この体験以前・以降共に不思議な体験に遭遇した事はありません。

 

私、世間でいう ”霊感” などというモノはこれっぽっちも持ち合わせていないですし、子供の頃に ”トイレの花子さんが見えた” という不思議君タイプでもないので誤解しないでくださいね(笑

 

 


 

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それでは、次号で sei
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