1972~1973年に放映された「ワイルド7」のオープニング曲を紹介します。

「毒を以て毒を制す」という故事のように、法で裁けぬ悪を倒すために集められた悪党。
そのバイオレンスな世界観が明確に表現されている曲です。

曲はいきなりトランペットが長めの2音をパンチのように繰り出して始まります。
この2音にはティンパニが被さり破壊力増。
間髪入れずヴィブラスラップが「カー!」っとジャブ。
そしてすぐに華麗なステップのようなメロディが短く続きます。

わずか3秒で2、3発食らいました。続いてはエレキギターが加わり、そしてドラムとペットが重い5発。開始早々10秒足らずで10発もくらったらもうグロッキー。印象的なイントロです。

この曲では全編にわたってパンチの効いたサウンドであふれていて、それが荒々しさを表現しています。
音の立ち上がりの速さと強さが強調されているのです。
軸となる音を短く強く奏で、ゆらがずひきずらない。これが「叩き付ける」ような印象をもたらしています。

0:10「お前がやれぬことならば」では、最初の「」から強く入ります。
れぬらば」と次々にパンチを浴びせるように、短く強い音の連打。
イントロに加えてこのボーカルの始まり方。これでこの曲の印象が決まったと言っていいでしょう。

少しかすれて濁ったボーカルを「粗削り」と評価するのは簡単ですが、私はそうは思いません。
注目したいのは「音をずらさない」ということです。
しゃくりやフォールという類の音をずらした装飾をせず、狙った音を狙った高さにピンポイントで撃ち込む歌い方です。
この曲では「お」は「お」です。「ぅお」でも「ぉお」でも「おぉん」でもありません。
この真っすぐで力強い声がこの曲全体の印象に大きく影響してると言えます。

そして詞も秀逸。1番の「お前がやれぬことならば 俺がこの手でやってやる」という最初のフレーズだけでおおよその設定が理解できます。物語と雰囲気と説明がすべて成り立っている詞です。

そして最も印象深いのは「どぶさらい」というフレーズ。
「誰もやりたがらない汚い仕事」をわずか5文字で的確に、かつ印象的に描写しています。
このフレーズはあまりに印象的だったためかこの作品のキーフレーズのようになり、後に制作された作中でも使われることになります。

ここまでこの曲の荒々しく退廃した雰囲気をご紹介してきましたが、決して誤解してはいけない点があります。
それはこの曲が「荒々しい雰囲気が秀逸な曲」なのであって「荒々しい曲」ではないということです。

同じ音やリズムを連打するようなことは決してなく、流れるようなメロディと変化するリズムで構成されています。
曲全体の印象としてそれが目立たなくされているだけなのです。

それもそのはず、作曲は多くの抒情的な歌謡曲を生み出した森田公一なのです。
荒っぽいケンカのような雰囲気の曲でありながら、どこか哀愁を感じるのは彼のメロディのなすところ。
特に、
0:10「お前がやれぬことならば」の「やれぬ」と「ならば」、
0:33「暗い闇夜をひきさいた」の「ひきさいた
の部分の哀しげなメロディラインはその最たるところです。

0:39「何かありそうなあの七人」からの13秒は良く聴くとバックのドラムやベースは歌謡曲のよくあるパターンで、少しも乱暴ではありません。

荒く、不器用で、でも真っすぐで、熱く、どこかに哀しみを隠し持つ。そんな男を感じる曲です。


曲名:ワイルドセブン
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:小山内たけとも
歌:ノンストップ
番組名:ワイルド7(オープニングテーマ)