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スリランカの経済が崩壊(Newsweek)

2022-05-19 04:09:01 | 時事
スリランカの経済が崩壊したようです。自給自作的な経済だったスリランカは、去年からラジャパクサ大統領により全島で有機農法が強制され、化学肥料と農薬の使用が禁じられた結果、米は半減、バナナは16%、ナスは12%にまで収穫量が激減。3月以降は、通貨ルピーも急落し、外貨不足で燃料が買えず、停電が頻発、農作業もできない有様とか。たった一人の大統領がここまで国を破壊できるのかと、皆、驚いているようです。

思いつきで政策連発して経済破綻──大統領一族がやりたい放題のスリランカ

2022年5月13日(金)17時12分
スミット・ガングリー(インディアナ大学教授) ニューズウィーク日本版

<港を中国に譲渡し、化学肥料と農薬を突然禁止するなど、政策はどれも行き当たりばったり。借金体質とコロナ禍でついにデフォルト、IMFが求める緊縮財政でさらなる打撃は必至か>


インド洋の真珠と呼ばれる島国スリランカ。その政府が対外債務の支払いを一時停止すると発表したのは4月12日のことだ。南アジアの国が事実上のデフォルト(債務不履行)宣言をするのは20年ぶりとなる。

現在のスリランカにはガソリンがない。食料がない。停電も頻繁に起きる。だが、この危機は、数十年にわたる無理な政策運営の結果だ。

しばらく前から国内各地では、スリランカ政治を牛耳るラジャパクサ家に対する大規模な抗議デモが起きていた。ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領と兄のマヒンダ・ラジャパクサ首相(前大統領)も、このファミリーの一員だ。

だが、どんなに大衆の人気がなくても、与党勢力と軍の暗黙の支持を得ている2人が、権力の座を手放す気配はない。

スリランカは長年、借金頼みの成長モデルを実践してきた。この戦略は、1970年代から2000年代初めまでは総じて成功を収めた。

この間デフォルトに3回陥ったが、いつも迅速な債務再編で乗り切れた。低所得国として、IMFや世界銀行から極めて緩い条件で融資を受けることができたからだ。おかげで1973~2001年の経済成長率は年平均4.9%と力強いものだった。

ところが、19年に国際的な位置付けが低所得国から中所得国に引き上げられると、融資を取り付けるのが少しばかり難しくなった。それでも政府は、どうにか成長のポテンシャルを示すことで、高リターンを求める民間の投資家から資金を集めることができた。

その背景には、経済成長だけでなく国内の安定があった。スリランカは約30年にわたり激しい民族闘争に苦しんでいた。だが09年に政府側が確固たる勝利を収めたことで、平和の時代が到来した。内戦末期に政府軍による人権侵害があったとされるが、国内の安定は揺るがないとの見方が支配的だった。

スリランカに地政学的なポテンシャルを見いだす投資家もいた。中国がユーラシア大陸をまたぐインフラ整備構想「一帯一路」を発表すると、スリランカは「海のシルクロード」の中継地として注目を集めるようになった。実際、ラジャパクサ家の地元である南部ハンバントタには、中国の融資で深海港と国際空港の整備が進められることになった。

ところがスリランカは、身の丈を大幅に超えた融資の返済に窮することになる。17年には、債務を緩和してもらうのと引き換えに、ハンバントタ港の運営権を99年間中国国有企業に譲渡する羽目になった。空港の整備もストップした。

一方、ラジャパクサ兄弟の政策は、ただでさえおぼつかないスリランカ経済に大きなダメージを与えてきた。

ラジャパクサ大統領は21年、大統領選での公約どおり有機農業への全面移行を発表し、化学肥料や農薬の使用を禁止した。準備期間もなく導入された措置に国内の農業は大混乱。主要作物の生産高は急減し、食料価格は高騰している。

慌てたラジャパクサ政権は、農家の収入保証をする一方で、減税にも踏み切ったため、財政は一段と悪化した。さらにコロナ禍で経済の柱である観光業が大打撃を受けたほか、海外にいる出稼ぎ労働者からの送金が激減したため、スリランカ財政は一段と厳しさを増した。

スリランカは多様な民族や政治グループがあることで知られるが、ラジャパクサ大統領の退任を求める点では一致しており、全国各地で街頭デモが実施されてきた。これを受け、4月3日までにほとんどの閣僚が辞職したが、肝心の大統領と首相は頑として権力の座に居座っている(2人の弟のバシル・ラジャパクサ財務相は辞職した)。

その背景には軍の支持があるようだ。理由は2つある。第1に、そもそもスリランカでは、軍は強力だが文民政権を尊重しており、政権を支える立場に徹している。これは一部の近隣諸国とは大きな違いだ。

第2に、ラジャパクサ兄弟は軍と関係が深い。05年にマヒンダ(現首相)が大統領に就任したとき、弟のゴタバヤ(現大統領)を国防次官にした。ちょうど内戦が収束に向かっていた時期だ。兄弟は、このとき軍が犯したとされる人権侵害を見逃してやり、さらに国際的な調査にもストップをかけたため、軍は大きな恩義を感じているらしい。

それでもラジャパクサ兄弟は、現在の危機を突破する方法を探している。その一環としてインドとの関係修復にも励んでいる。中国に対抗心を燃やすインドとしては、スリランカへの影響力を拡大したい思いもあるのだろう。4月中旬、インド政府が新たに20億ドル以上の金融支援を行う方針であることが明らかになった。

その一方で、中国は現在のスリランカの経済危機には、積極的に救済の手を差し伸べていないようだ。これは上海などで急拡大する新型コロナへの対応に忙しいのと、かねてからのサプライチェーン危機で、中国経済も苦しい立場にあるからかもしれない。スリランカの金融当局としても、これ以上中国への依存を拡大したくはないようだ。

ただし、中国とインドの支援だけでは危機の収束にはおそらく足りず、スリランカとしてはIMFの緊急融資に頼るしかない。だが、それを受けるためには、IMFから大掛かりな緊縮財政(つまり増税と、燃料補助金のカットといった歳出削減)を求められるのは間違いない。これ以上借金を増やすことにも待ったがかかるだろう。

もともとラジャパクサ兄弟はIMFと良い関係にはなかったから、ただでさえ厄介なIMFの支援交渉は難航する恐れがある。とはいえ、さすがに今回の危機には焦っているのか、新たな組閣ではラジャパクサ家の人間を閣僚に就けることは避けた。ラジャパクサ大統領は、危機の早い段階でIMFに助けを求めなかったのは間違いだったと認める発言さえしている。

だが今、スリランカは経済だけでなく、政治も危うい状態にある。数十年にわたり国政を牛耳ってきたラジャパクサ家が、緊縮財政が不可避的にもたらす政情不安を乗り切れるのかどうかは分からない。分かっているのは、このファミリーの無責任と軍の共謀のせいで、スリランカは一段と大きな混乱の渦にのみ込まれようとしていることだ。




https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/05/post-98675_1.php


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