老後の不安と、理想の60歳と

先日、友人のK枝が3年ぶりの日本滞在から戻ってきた時も話していたのが、日本を離れて、親と離れて暮らす友人たちと、いつも話題になるのが、親の健康・介護問題や終の住処問題である。

幸いなことに、自分も自分の近しい友人たちも、まだ親が元気でいてくれているのだが、もうかなりの高齢である。いつ何が起こってもおかしくない年齢だ。

ついこの間も実家の母から、ちょっと熱が出て寝てる、と仕事中に珍しく家族チャットが届いたものだから、妹とふたり、コロナの症状は出てる?とか、水分補給して無理しないで!とか、もう仕事どころではない。

もちろん、まだ介護が必要という訳ではないのだから、あれこれと先の心配をしても仕方がないのですがね。

今は、遠い空の下から、いつまでも健康で、元気でいてくれることを祈るだけである。

親の話が出ると、必ずと言っていいほど、

「やっぱり、いずれはここを引き上げて、日本に帰った方がいいかな」

という話がセットで出てくる。

アメリカは物価も高いし、医療費は恐ろしいし。

日本に戻れば、何かあったら親・家族にすぐ会えるし、ご飯も美味しいし。

実際に、そうやって、日本へ帰っていった友人たちをたくさん見送ってきたのだ。

「だいたい、今でさえも英語力あやしいのに、これ以上歳取ったらますます英語が口から出なくなりそうよね」

とついこの間も会社の同僚と、老後のアメリカでの生活の不安を話していたところであった。

そんな話をしていると、

「あんた、日本に帰るって言っても、N君はどうすんのさ」

と聞かれることになる。

「あ、忘れてた(失笑)」

と、半分冗談で答えるが、今現在同性婚が認められていな日本へは、N君と一緒に老後を、というのも厳しい話なのであった。

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先日、N君の水泳チームのゲイの友人が60歳(!)になり、その誕生会に招待されていたので行ってきた。

招待状には、ドレスコードが

「ファビュラスな服装」

とある。

”はて、ファビュラスな服装とは?”

としばらく悩み、結局、我々は柄のシャツにスーツジャケット、と地味な格好での参加となった。

会場は、サンフランシスコ市内の大きなレストランを貸し切って行われた。

入り口に到着し、コロナワクチン接種証明を見せて中に入ると、早速ウェイターの青年(いい男!)がスパークリングワインの入ったグラスを手渡してくれて、久しぶりのパーティ気分で思わず気持ちも上がる中年オカマよ。

会場内には、”ファビュラスな服装”を着飾った、大勢の人たち-100人以上いただろうかーが、彼のお祝いのために集まっていて、まるで結婚式の披露宴のようである。

会場の壁には、彼の幼少期から現在までの、家族や友人、パートナーとの写真があちこちに飾られていて、彼の60年間の歴史を垣間見ることができた。

皆、指定された席に着き、食事とワインがサーブされ始めた頃、会場の中央に設置された舞台に、今夜の主役、60歳になった友人の登場である。

こうやって、家族、パートナー、仕事の同僚、そして多くの友人に囲まれて、60歳を迎えた彼は本当に幸せそうで、眩しいほどの笑顔!

そんな彼を見ていたらと、さて自分が60歳になったら、と考える。

こんな盛大なパーティはもちろんできないだろうが、あんなふうに幸せな笑顔でいられるだろうか。

しかし、せめて、60歳になった時に、あんなふうに幸せな笑顔でいられるように、自分も、今はなんとか頑張らなきゃだわ、と元気をもらった気がするのだった。

しかも、その彼は水泳を長年続けているからなのか、60歳には見えぬ若々しい外見で、酒ばっか飲んでジムもサボってる自分にとっては、やはり遠い存在である。

老後のことを考えると、暗い気持ちになりがちだったが、そんな60歳の彼に少し元気と希望をを分けてもらった一夜であった。


日本の蒸し蒸しする恐ろしく暑い夏の気候を考えると、
いつも爽やかなサンフランシスコ、離れられないわな。


コメント

Giro さんの投稿…
私もあと10年程で60歳を迎える訳ですが、両親の事とか自分の老後の事とか、そして配偶者の事とか現時点では答えは全く出ない感じで、具体的なシミュレーションも思いつかない状態。


海外在住者に限った事では無いのでしょうが、いろいろありますよね・・・。


幸せな60代を迎える為にお互いに頑張りましょうね。

samurai sf さんの投稿…
Giroさん、こんにちは。

自分も、もやもやしながら、具体的な計画は何もない状態でです。(汗)

特に、先日の大阪地裁の判決と、Giroさんも書かれていたような、日本国内での同性婚に対する否定的な声の多さに、そういう意味では、パートナーと堂々と安心して生活できる場所に住んでいられる国に、住み続けた方がいいよなぁ、とも思います。

我々が60代を迎える頃には、日本も変わっているでしょうか。

そちらも毎日暑そうですが、どうぞご自愛ください。
ふわり さんの投稿…
samurai sfさん、こんにちは。

お母様はその後、体調は回復されたでしょうか。今頃はお元気にされていることを願っています。親の高齢化だけでなく、私達は遠距離にいるというのがダブルで不安ですよね。同じ年代のお友達と集まると出る話題も、私も全く同じです。親、自分の老後、健康問題、これに尽きますね。

私は今越の初めに日本へ帰省してきました。samurai sfさんの今回のポストはタイムリーな話題で、父の事と私自身の終の棲家というか、精神的にも体力的にも楽な環境で将来暮らすためという前提で色々と考えたりプランを立てるために戻ってきました。しばらくは、日米を行ったり来たりの生活になるかもしれません。アメリカ、特に経済も思考もコンペティティブなベイエリアは、私がもう少し若くて健康で体力があれば生きていけるのでしょうが、コロナ禍以降色々と粗が目につくことが多くなり、暮らすのが辛くなりました。まあ、アメリカに限らず日本にだって色々問題はあるんですけどね。とは言え、私にも夫と娘がいるので、そうそうスパッと生活を切り替えるのはなかなかですが、まあ、無理せず自然の流れに任せて結果みんなが幸せな形に落ち着けばいいなと思っています。

ベイエリアは猛暑だそうですね。どうかご自愛下さいね。そして楽しい夏をお過ごし下さい。
samurai sf さんの投稿…
ふわりさん

こんにちは!

ふわりさんの、日本での滞在のブログ楽しみに拝見しています。(特に食事関連!)  うなぎ本当に美味しそうで、羨ましい・・・! 今日も日本での休暇から帰ってきた友人と、やたら値段だけ高い飲茶ランチをしていたのですが、日本での食べ物の美味しさと安さの話に終始してました。

ふわりさんのおっしゃる通り、若い頃はアメリカ、ベイエリアの生活に楽しいことも多かったですが、今は健康や食事、老後のことを思うと、色々と考えてしまいます。自分もN君や仕事のこともあるので、すぐに日本での生活に切り替えるのは難しいですが、これから歳をとっていくことを考えると、やはり日本での老後の方が平穏に暮らせるような気がしています。実際、会社の同僚も、周りのゲイの友人たちも、老後は日本をと考えている人が多いみたいです。

日本も暑い日が続いているようですが、どうぞふわりさんも熱中症にお気をつけて、ご自愛ください。良い日本での滞在を。 また、ふわりさんの日本での滞在記楽しみにしています!