2021年10月20日

現代野球に必須の三軍

 アメリカではメジャー・3A・2A・1A…という巨大なピラミッドが形成されており、その頂点にいるのが大谷翔平らがいるメジャーリーグです。1Aやその下にもたくさんリーグがありますが、ややこしいのでここでは省略します。それくらい、圧倒的な選手層があります。

 それに比べて日本プロ野球は圧倒的に選手層が薄く、ちょっと一軍で怪我人が続出したら二軍の試合編成に影響が出るほどの貧弱なものです。2019年の星孝典コーチ(西武)など、二軍の捕手不足という信じられない理由で一時的に現役復帰しています。

 一軍と二軍しか持ってない球団も多い中、最近ようやく三軍を持つ球団が増え始めています。今日の記事はこの三軍についてです。

◇ 三軍のメリットとは?

 もちろん選手の出場機会を増やすことがメリットです。二軍レベルにも達していない若手はもちろん、故障から復帰する選手が試合勘を養う場としても使われています。

 一軍の公式戦に出場可能な登録選手は各球団70人が上限ですが、現在のところ育成選手には上限がありません。ソフトバンクや巨人などは20名前後の育成選手を抱えていますので、90人くらいの大所帯です(これでもアメリカよりは圧倒的に少ないですが)。

 一軍の登録人数が29人なので、故障者を差し引いても残り61人すべてを二軍戦に出場させるのは難しく、三軍創設はもはや必要不可欠になりつつあります。

◇ 三軍を持っている球団は?

 2021年9月末現在、三軍という名前の組織を持っているのは、ソフトバンク・巨人・広島・西武の4球団。ただし広島は故障者の調整が主となっており、2020年シーズンから三軍が創設された西武も若手育成が主体。対外試合を積極的に行っているのはソフトバンクと巨人のみです。

 このほか、三軍という名前ではありませんが、楽天と阪神も「育成チーム」などの名前で三軍と同様の組織を持っています。広島や西武とは違い、社会人チームなどとの交流試合も多く行われています。

 2021年から三軍を導入予定だったオリックスは、コロナ禍の影響で延期になった模様。しかし二軍とは別に試合が行われていますので、オリックスは事実上三軍組織を持っていると言えるでしょう。2022年から三軍を正式に導入するかどうかは、現時点で情報がありません。

 まとめますと、ソフトバンク・西武・オリックス・楽天・巨人・阪神・広島の7球団が三軍か事実上の三軍を持っている。西武と広島以外は、積極的に試合をこなしている、ということができるでしょう。

◇ 結局は資金力が物を言う

 対外試合をたくさん行う三軍を創設した場合、コストは年間3億円程度と言われています。もちろん安い出費ではありませんが、裏を返せば三軍を持つデメリットは金銭面だけなのです。

 三軍を持てば育成選手が増え、戦力外通告を受ける選手が毎年多数現れますが、これはやむを得ないことでしょう。私は戦力外になった選手の面倒を見る必要はないという考えです。

 多数の戦力外通告は無責任だ! と主張する人も少数いらっしゃるようですが、山口鉄也や千賀滉大のような育成出身選手を歴史に埋もれさせるほうがはるかに無責任でしょう。

 ちなみにソフトバンクや巨人は、全員ではないにせよ戦力外になった選手の再就職の面倒をかなり見てやっているようです。これも資金力があればこそ、ですね。

◇ ところで日本ハムは?

 ここまで日本ハムの「に」の字も出てきていませんが、それも当然です。三軍もそれに近い組織も何も持っていないのですから。

 少し前までは「少数精鋭」と称して育成選手を1人も保有しておらず、二軍の競争原理を放棄して少数の選手に出場機会を与えることを優先してきました。2010年前後まではそれで問題なかったようですが、現在はご覧の有様。

 1億歩ほど譲って、他球団よりも突出してスカウティングや育成能力が優秀であれば少数精鋭も通用するのかもしれませんが、清宮幸太郎の現状を見ればそれもダメだということがお分かりいただけるでしょう。

 FAでの補強に消極的である以上、育成でカバーしなくてはならない球団なのですが、三軍を創設するという話は今のところ聞いたことがありません。