8mgの小説ブログ

WEB小説(ちょっと挿絵)のブログです。ブログ形式だと順番的に少し読みにくいかもですが、一章ごとに完成したら、別サイトにアップしたいと考えています。※このサイトはリンクフリーです。

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WEB小説『画面の向こうのプロレスラー』をメインで更新中!ちょっとアレな性格の女子レスラーの成長物語ですm(_ _)m

画面の向こうのプロレスラー(第3話)

<前の話に戻る>

 

 

 ここは、都内某所のスタジオ内に設置された特設リング上…。

 

「目には目を。反則ばかり繰り返す不届き者には、きつ〜いお仕置きを!っね!?」

そう言う彼女は、冷静に佇みながらこちらの様子を伺っている。

 

「私の想い・・・受け止めてね!」 

彼女がそう宣言してから地獄は開始された。

 

バァンッ!!スパンッ!!ドガッッ!!バァァンッッ!!スパァァァンッッ!!

 

パァァアンンッッッ!!ダァン!!パァァンッッ!!ベキィィィッッッッ!!

 

脚技を中心とした彼女の一方的なラッシュの前に、俺の付け焼き刃のガードなど簡単に引き剥がされてしまう。顔面に何度も何度も拳と蹴りをぶち込まれ、顔の至る所が腫れ上がり、口の中が切れ、鼻血は止まらない。

 

ヤバい、ヤバい、ホントにヤバい、、、ぐぅひぃッッ!!

 

こ、こんなはずじゃ、、、ごほッッ!! 

 

ま、このままじゃ負け、、、がはぁッッ!!

 

よりによって、こんな水着のような格好の女に、、、ぐぉッッ!

 

一方的にやられて、、、ぶぉぉッッ!

 

俺のチャンネルの前回配信時・・・『百何十連勝?空気読まず止めてきまーす!!』と啖呵を切ってきたにも関わらず、この有様…しかも、反則技をあの手この手と仕掛けまくった結果がこれだ、、、ぐぎぃぃッッッ!!

 

涙で視界はもうほとんどなく、フラフラで立っているのがやっとの状態だ。

 

「じゃあ、とどめ・・・いくね!!」

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彼女は沈み込むように体勢を低くする。

 

い、嫌だ、ゆるしてくれ、、、彼女が獲物(俺)を仕留めようとする刹那、今日の試合が走馬灯のように頭を駆け巡る・・・

 

・・・とにかくどんな方法を使ってでも勝つ事が一番の目的だと考えた今日の試合、俺はグローブとシューズの中に金属製のプレートを仕込んだり…相手の目を潰す為に砂を使ったり…反則と知りながらあらゆる手を使って主導権を握ろうとした。しかし、対戦相手の彼女は俺の汚い戦法に何一つ不平を言う事もなく、正面から受け止め続ける。そして、とうとう反撃に転じた。その逆襲は凄まじく、俺の心は簡単にへし折られた。

 

・・・整った顔立ち、大きな胸、キュッとくびれたウエスト・・・

 

そんな彼女から繰り出される攻撃…しなやかな身体の動きに俺は思わず見惚れてしまう。

 

股間は大きく膨らみ、完全に勃起していた。こんなやられる間際…よりによってこんな状況で、なぜこんなにも欲情しているのか自分自身でも理解できなかった。

 

でも、ただ一つ言えるのは・・・

 

「うっ、、、ぅうつく・・・」

 

バァキィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!

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・・・ダァン!!

 

まだ、リングに沈んではいない、、、膝を付いた状態で、奇跡的に倒れ込んでいないだけだ。

側頭部を蹴られる瞬間、定かではないが彼女に手加減をされたような気がした。

しかし、膝を付いたこの状態から起き上がる事も身体を動かす事も出来ない…もうとうに限界は超えてしまっている。

 

「おっ、ナイスガッツ!最後にようやくナイスファイト出来たね!」

そう言いながら、彼女はゆっくりとこちらへ向かって歩いてくる。

 

そして、彼女は既に動けない俺の体をリングに寝かせるように動かして、ゆっくりと俺の頭、首周りに彼女の脚、太ももを絡み付ける。

 

・・・く、四の字・・・固め・・・

ギブアップを叫ぶ事も出来ない。体も動かない。もはや逃げのびる事は出来なかった。

 

彼女の太ももに埋もれていく恐怖と今日の試合で初めて密着した彼女の身体の感触とで、俺のアレは元気にいきり立っていた。

 

「カメラさんこっち!フィニッシュホールドいくよ!!」

 

・・・あぁ、俺はトドメを刺されるのか・・・

 

僅かな意識の中、彼女の手が俺の下半身に伸びる・・・!!!!!

・・・そして俺のバトルパンツをずりおろし、イチモツをあらわにさせる。

 

「ニヒッ♡」

悪巧みをするような笑顔を浮かべた彼女は、俺のギンギンにいきりたったイチモツを激しく上下に動かしながら、テンカウントを始める。

 

「10、、9、、8、、7、、6、、、

 

ピキピキッ・・・俺のイチモツの中で何かが逆流してくるような激しい感覚に囚われる。や、やめてくれッ!や、やばい、、、

 

、、、5、、4、、3、、2、、これでフィニーッシュ!!!」

 

だ、だめだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

 

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ドピュッッ!ビュルルルルルルーーーーーーーッッ!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

198cmの大男が大の字になって倒れている。そんな彼を見下ろしながらリリーはちょこっとお辞儀をしながら勝利ポーズをカメラに送った。

 

このような結末となった、先日のプロレスラー鬼頭淳弥戦から間を置かずして開催・配信された次戦・・・

床に寝転がっている対戦相手の巨漢男の名前は『林葉マー』と言う”自称アマチュア総合格闘技西北チャンプ”という肩書きを持つファイターだ。

彼は大手動画サイトに”マーチャンネル”という自分のチャンネルを持つ配信者でもある。”挑戦”というテーマを掲げて格闘技における様々なことにチャレンジするチャンネルでそこそこ人気もある。チャンネル登録者数も少なくはなく、そんな彼が次の挑戦として挙げたのが、巷で噂の165連勝中のレスラー”リリー”に挑戦することだった。

 

絶対勝てると自信を覗かせて挑んだこの試合…。

序盤戦は林葉選手の反則技が目立ちまくる醜い展開となる。

それでもリリーは不満を漏らさず、とにかく攻撃を抑えて受け身にまわる戦術を取った。そして、林葉選手の打つ手がなくなったと見るや反撃を開始する…。

本来リリーはアクロバットな技や組み技などを多様するが、今日の試合は、相手のフィールドに乗りかかるように、総合格闘技のルールに寄せた打撃技中心のスタイルをとる。

 パンチやキックを何十発も大男に浴びせかけ、最後は彼女得意のホールド技で試合を決めた!結果的には彼女の圧勝に終わったのであった。

林葉選手は失神KOされ、ヒクヒクと体は痙攣を起こしていた。リリーは救護班を呼びすぐに病院へ搬送するように送り出す。

 

「ちょっとやり過ぎちゃったね♡」

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いやっ、毎回毎回・・・あなたやり過ぎてますよ!!と視聴者から総ツッコミを入れられそうなことをいう彼女だが、この試合の前半…相手選手の反則技に相当ダメージを蓄積させられたはずなのに、リリーは何事もなかったかのように明るく振る舞っていた。

 

ド派手な技がフォーカスされがちの彼女だが、無尽蔵のスタミナと忍耐力こそがリリーの真の魅力だ。ボロボロになってるのにそう見せないような立ち居振る舞いをする彼女に感動すら覚える。

 

・・・やはり、リリーはアスリートとして尊敬する・・・ 

そんな尊敬の気持ちが10%・・・

 

残りの90%は・・・ 顔、おっぱい、おしり、、、、□△×◯ねうぇksっか・・・・

 

さて、この無様に敗北した男こと 『林葉マー』選手のその後のお話・・・果敢に挑んだ挑戦は失敗に終わった。というより、反則を繰り返すその試合内容がよくなかった。『リスペクトを欠いた行為』に彼の動画チャンネルやSNSは当然炎上した。彼自身の行動が彼を応援するファンを失望させ、彼のチャンネルから離れる者が後を絶たなかった。

慌てるように彼は試合翌日に『謝罪動画』をアップロードしたが火に油を注ぐだけだったが、それから少し間を置いてまた別の動画をアップロードする。

 

『病み上がりの俺が〇〇女王様にボコボコにされてみた』というタイトル・・・

 

・・・あれっ?何か流れ変わった・・・?

 

そこには林葉選手が〇〇女王と呼ばれるSMクラブの女性と対戦してボコられる姿があった。どうやら、リリーとの対戦で、彼の中の何かが目覚め、扉が開いてしまったようだ。

これまでとは180度違うコンセプト・・・彼のチャンネルを離れる者は多かったが、俺はそっと彼のチャンネル『マーチャンネル』を登録した・・・。

 

 

 

俺、鏡恭助(かがみきょうすけ)は、先日ライブ配信されたリリーの試合を再視聴しながら、試合内容と気になった点などをノートにメモする。

リリーチャンネルのライブ配信時は欲情・興奮に全力を尽くす俺だったが、レスラーとしてのリリーを再視聴しながら分析することは俺のルーティーンでもある。

そうやって書き残してきた俺のこのノートと資料がいよいよ役に立つ時が来たかと思うと嬉しさのあまり心が踊り狂うようだ。

 

 

・・・いよいよ明日、俺、鏡恭助はリリーと対面する・・・

 

 

 

先日、俺は大学の友人…月島理科(つきしまりか)をLINEで呼び出した。

 「どうしたの?すごい真剣な顔して?」

「月島、お前にだけ話しておきたい事がある。」

俺が発する空気が伝わったのか、彼女は隣の席に座り、まっすぐ真剣な表情でこちらを伺う。

 「この前、リリーチャンネルのメールフォームで呼びかけてみたらって月島が提案してくれた件でさ・・・」

「うんっ!」

「・・・で、一応思いの丈をぶつけるように色々書いて送ったんだ!」

「うんっ!」

「そしたら、返信があったんだ。近日中に接触出来ないかって!」

「すごいね!!」

「もちろん、宜しくお願いしますって返信したよ!でもね・・・どういう形で接触するかどうか具体的な事はまだ何もわからないんだ。」

「そうなんだ。」

「リリーの正体って、完全に機密事項・・・タブーだろ!?」

「うん。」

リリーの正体・・・プライベートについては完全非公開で相当なセキュリティーによって守られている。彼女が一体何者なのかリリーチャンネルの関係者以外はわからないと言う。その核心を突こうとしたパパラッチがこの世のサイハテに飛ばされたと言う噂を聞いた事もある。

 「もし俺がリリーと会った場合、その時点で俺とリリーの間に接点が出来るけど、そうなると色々な事情が掛かってくると思うんだ。だから俺はバイトを辞めてきた。」

・・・リリーチャンネルからの返信で、近日中にアプローチさせてもらいますという返信があったので、バイト中に返信が来たりでもしたら、詳しく打ち合わせ出来ず、最悪会う話が流れてしまっては元も子もない。それだけではなく、秘密事項であるリリーの正体を知ってしまう事はそれだけの責任を伴う事であると俺は認識していた。

 「それで、今はいつ返信が来てもすぐに対応できるように1時間以上の睡眠は避けるように徹底してるんだ。」

それが、今自分が出来る最低限の行動だった。

 「ぁ・・・ぁあわわわ・・・ば、バイトを辞めて、そこまでして待ってるの!?」

 「当たり前だ!これくらいの覚悟がないと失礼だろ!!」

 「す、スゴいね・・・!!鏡くんの心意気はわた・・・いやリリーに絶対伝わるよ!!やっ、やばい・・・は、はやく・・・し、しないと・・・

 「んっ!?どうした月島??」

「いやっ、な、なんでもない!!」

 いきなり挙動不審になる月島だが、俺の事を本当に心配してくれているだろう。

 月島理科…彼女はホントにいい子だ。俺の中での一番はあくまでリリーで、それが揺らぐ事はありえないが、この月島はホントに俺の事を親身に思ってくれる。おそらく月島は俺の事を好きなんだろうとひしひしと感じている(うぬぼれ)

 

 それから”トレーニングに付き合ってくれませんか”というリリー本人からの招待メールが届いた。

日時は◯月◯日のPM2:00 ○○区○○の△△△公園にて落ち合う予定だ。

 至って簡素なメール内容だったが、テンションMAXの俺は、すぐに月島を呼び出して状況を伝える!!

 「おっ、落ち着いて鏡くんっ!!まだ時間もあるんだから・・・そうだ準備を整えようよっ!!一緒にトレーニングすることになるとしたら・・・ほら、トレーニングウェアとか必要になるものもあるんじゃない?」

「確かに!!そうだ!!月島ナイスだよ、お前はホントにいい事言うなっ!!」 

「◯月◯日だよね・・・その前日に予行練習も兼ねて、その○○区○○の△△△公園で待ち合わせして、それからスポーツ用品店に一緒に行かない?私、その日は夕方からバイトだけどその前に付き合うよ!」

「えっ?いいのか!?ありがとう月島!!俺、女性受けしそうな格好でどれを選べばいいかわからないんだ。本当に助かる!!」

「うん、わかった!!」

・・・月島、彼女はホントに健気でいい子。こんないい子は他にいないくらいの存在だが、俺が好きなのはリリーという本当に忍びない関係性に俺は心苦しくなる時もあった。

 

 

・・・こういう経緯があって今に至る・・・

俺はPCをシャットダウンして家を出る…。リリーとのご対面を控えた前日、俺は月島と待ち合わせして明日の予行練習&必要な物の買い出しに行く・・・。

 

 

 

「鏡くん。お待たせ!」

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いつものように眉毛をハの字のにしながら月島理科がやって来る。

 

彼女との待ち合わせ場合は最寄駅から少し離れた位置にある山遊具のある公園前だった。明日この場所でいよいよリリーと対面を果たすのだ。

 

「今日はわざわざ付き合ってくれてありがとな、月島!」

 「ううん、気にしないで!今日バイトは夕方からだから充分時間もあるし…」

現在時間はAM10:30。平日ということもあって人通りも少ない。

「…それに、大学以外で一緒に出掛けるのは初めてだね!」

そう言う月島は何か嬉しそうだ。本当によかった。俺みたいな不純な奴に嫌な気ひとつも見せず付き合ってくれることに心から感謝している。

「明日、いよいよ念願のリリーとここで会えるんだな。」 

「鏡くんはリリーと会えたら何したいの?」

「ボッコボコのギッタギタに、もうこれでもかって言うくらいケチョンケチョンにやっつけられたい!」

「そ、即答…だね、、、」

「当たり前だろ。俺くらいのレベルになると訓練はしっかり行き届いて、いつどんな状況でリリーに襲われても対応出来るようにイメージは出来ているんだ。」

「・・・す、すごいね!尊敬はしないけど。。。」

そうこうしながら、公園内の山遊具前まで歩いて来た。

 

 「場所間違えないようにしっかり道のり覚えないとね。」

「そうだな…まぁ、3日前から毎日ここに来てシュミレーションしてるけどな!」

「えっ!!み、み、3日前から!?」

「当たり前だろ!リリーは基本的に正体を隠してるのに、俺との接触でパパラッチにでも見つかったらまずいだろ。だからもしもの場合の脱出経路を3日前からここに来て調査してるんだ。」

 俺はリリーと会うまでの時間を有効的に活用しようと出来る限りの事はするつもりだ。

「ホントは1週間前ぐらいから入念にシュミレートしたかったんだけどな。」

  「だ、大丈夫!そこまでしなくても鏡くんの想い、やる気は充分にリリーに伝わると思うよ!ほっ、ホントに!!」

「そうか…。でもそこまでしたいんだよ。ただの自己満足だけど、どうせやるならリリーに自分の全身全霊を掛けるくらいの事はしたい。それに別に伝わらなくてもいいんだ。無償の愛ってやつだ。」

正直、リリーに見返りを求めるような事は微塵も思ってない 。はっ?なんなの!?と軽くあしらわれるくらいの方が逆に興奮するのだ・・・俺はそれくらい調教されている。

「いやっ、伝わる!絶対に!!鏡くんの気持ちをスルーするような、おざなりにするような奴は私が絶対に許さない!!」

と、急にヒートアップする月島。いきなりどうしたと彼女をなだめるが、時々月島は気持ちを全面に押し出すような状態になることがある。すごく熱いハートを持っていて、思いやりに満ちている。そんな彼女に惹かれるのは当然の事でリリーと俺の行く末がどう展開していくかはわからない・・・でも月島には包み隠さず全てを話して共有していきたいと俺は考えていた。

 

それからは、再確認するように公園を少し散策してから、次の目的地であるスポーツ用品店(トレーニングウェアなど必要なものを購入するため)へ向かうことになった。

 

「大型スポーツ用品店がある〇〇商店街通りへは、駅に戻ってから二駅目だね。」

「なぁ、二駅くらいならここから歩いていかないか?運動にもなるし!」

「うん、いいよ!途中、勾配のある坂があるみたいだけど景色もよさそうだし!」

そうして、俺と月島は〇〇商店街通りまで、徒歩で移動することになった。

「月島、〇〇通りまでの道のりはお前に任せる。俺を導いてくれないか!!」

「う、うん、わかった」

 

月島を先頭にして移動する。彼女は時々スマホをチェックしながら道順に間違いがないか確認する。

 「うん、この道で大丈夫みたい!」

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「そうか、それはよかったナイス月島!」

ホントに月島はナイスだ!

ナイスパン・・・ナイスタイツ越しのパンチラ!と俺は拳をグッと力強く握った。

 

月島理科(つきしまりか)は、派手さはなく、前に前にとグイグイ出るようなタイプではない。それでも可愛い顔でおっぱいもデカいとなると、他の男子からモテない訳がない。大学において月島は多くの男達からアプローチを受けまくっているようだが、それをことごとく断った上で俺と仲良く接してくれる…もう俺は彼女を本当に大切にしなければという気持ちでいっぱいだ。邪な考え等は厳禁だ。

 

しかし、向こうがせっかくサービスショットを提供してくれているのに、それを見て見ぬ振りをするなんて、それこそ愚かな行動だ!パンチラをガン見する事こそ、紳士としてのたしなみであり、彼女の気持ちに最大限に応える最適解である。

現在、〇〇通りまで彼女に案内してもらっているが、そこまでの経路は既に調査済みであり、3日前から待ち合わせする公園の周辺2〜3km圏内は可能な限り歩き尽くしていた。

月島よ、、、この先〇〇通りまでは急勾配な坂や階段が続く都内有数の坂道スポットだ!お前の無防備なスカートの中を余す所なく堪能させてもらえそうだ!

・・・そう思いながら、俺は対面から人が歩いて来た時邪魔になるからという理由で、月島が俺の目の前、程よくパンチラが拝めるような位置に来るようにして歩かせる。

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・・・おやおや、この期に及んでそのような無意味な行動に出るお馬鹿さんは誰ですか?

 

やはり俺の視線に気付いたのか、月島はスカートの中が見えないように、左手でガードしようとする・・・とても愚かな行為だ!

 

月島・・・そちらがその気なら、こちらとしは・・・

 

 「ここからは本気で行かせてもらう!!」

 

俺は心の中で(心の外にも出てた)そう宣言した!!!!

 

 

・・・こんな感じで俺と月島は、〇〇通りまでの間・・・『パンチラを見ようとする者、見られまいとする者』という”どうしようもなくくだらない争い”を繰り広げながら移動した。

(↓サイドストーリーをFANBOXにて掲載!こちらもよろしくおねがいします!)

box8mg.fanbox.cc

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「どした!?」

「・・・・・・。」

「まぁ、月島!そんなに気にするな!俺も全然気にしてないから大丈夫だって!」

「いやいやいやッ!散々スカートの中を覗かれまくった私が、なんで悪いみたいな風潮になってるの!?」

 現在、既に〇〇通りに到着している・・・ここまで来る途中、月島のスカート内部を堪能した俺だったが、まだプンスカ怒っている月島を、なだめて、話の要件をすり替えて、彼女の怒りを封殺した。

 

そして、いよいよスポーツショップへとやって来た俺たちはビルの中へ入る。

5階建のビルで4階までがスポーツショップエリアとなっている都内でも有数の専門店だ。スポーツ用品だけでなく、スポーツ関連の書籍や映像資料も取り扱う充実ぶりにアスリートでもない俺でさえ、お店へ入れば気持ちがワクワクしてくる。

 

俺たちは格闘技関連の商品が置いているコーナーへと移動する・・・その途中・・・

大型液晶モニターが設置され、スポーツ関連の映像が垂れ流しとなっていたが、そこに映されていた映像には、先日リリーと対戦した相手プロレスラーの『鬼頭淳弥』がスーツ姿で映し出されていた。

その映像に思わず俺と月島は立ち止まり、モニターの映像を見る。

どうやら、記者会見のライブ映像のようだ。記者からの質問に”現役続行”を高らかに宣言する鬼頭淳弥選手。

プロ団体に所属するレスラーが何処の馬の骨ともわからないような女子レスラーに無様に敗北して大恥をかいたにも関わらず、なおも現役を続行するのか?今日はあなたがいつ辞めるのかを聞きに来た!・・・等という辛辣な言葉を記者達から浴びせられた鬼頭選手だったが、その表情には一点の曇りもなかった。

「本気で戦って、実力で負けた。ただそれだけです!再戦とかそんな事を考える以前に、まずは来年のチャンピョンシップを制覇することを目標に今後も邁進します!」

そう鬼頭選手は高らかに宣言した。周りとの温度差が印象的だったが表情を見るになんの躊躇いや戸惑いもないようだ。

 

「すごいな、鬼頭さんは!!」

「うん、そうだね。」

この鬼頭淳弥選手やこの前の林葉マー選手など、リリーとの対戦で敗北した彼等がその後、何か心変わりしたような、吹っ切れたような印象に変わっている。

リリーにドピュドピュ(隠語)され、醜態の向こう側に達した彼等は何故か清々しく、その姿に共感したくなるのだ。

 

 

それからは、格闘技用のハーフスパッツやグローブ、膝プロテクター等のセンス的な部分を月島と相談しながら選び一通りの物は購入した。

「月島も何か買うのか!?」

「うん、コレっ、リストバンド!」

彼女が持つのは黒のメンズリストバンドだった。

 「これは私から鏡くんへのプレゼント!これからガンバレって応援の意味も込めてね!」

 「マジかよ!?嬉しいよ、月島!!ホントにありがとな!!」

月島には感謝しかない。今日も、そしていつも俺に付き合ってくれる上、リリーと対面するキッカケを作ってくれたのも彼女だ。

「月島には与えてもらうばかりだから、何かお返しがしたいんだけど・・・」

何か欲しいものがないか、俺が出来る範囲でのお返しを聞くが、現時点でとりわけ欲しいという物は思いつかないそうだ。

「じゃあ、貸しって事でいいかなぁ?」

「貸し・・・あぁ、わかった!」

「いずれまとめてガッツリ回収したいと思います・・・だから、その時まで震えて待ってね!」

「おいっ!やめろその言い方は!」

月島にはとてつもなく多くの大きな借りが出来てしまったようだ。まぁ彼女が楽しそうなので、俺はそれでよしとした。

 

「思ったより早く終わったなぁ。」

「そうだね。」

「月島、お前アルバイトは夕方からだろ?結構時間を持て余すよな、、、とりあえず、お昼も回ってるし、何か食べに行くか!」

「うん!」

現在の時刻は12:30…買い物が予想以上に早く終わったため、時間を潰すことになったが・・・ここまでの俺の用件は全て終わった。これからの時間は、今日付き合ってくれた月島の時間潰しに付き合うつもりでいた。

 

「明日リリーと会うから、前日の今日は何を食べればいいかかなり迷うなぁ。」

「そうだね。」

リリーと会った後、もしトレーニングに同行する・・・とかいう事になったりでもしたら、かなり激しい運動が想像される。そんな時、前日のコンディション作りは重要であり、どう立ち振舞って明日に臨むのかをしっかり考えなければならない。

「そんな鏡くんの為に、アスリートフードを取り扱うお店知ってるよ!!」

「マジっ!?そんなのがあるんだ??」

「うん。スポーツの大会前の食事にっていう触れ出しで結構人気のお店。そこなら消化が良くて簡単な食事も取れるはずだよっ!」

「おぉっ!!すげぇな月島っ!!お前はなんてナイスなんだよ!」

「うん!!だって、そのお店が私のバイト先だったりするから・・・」

「そうだったんだ!?そんな所で働いてたのか?月島お前、この前イベントのバイトで働いてるって言ってなかったっけ・・・?掛け持ち!?」

「うっ、うん!!そうなの。掛け持ちなんだ、掛け持ち!!掛け持ち!!」

 

そうこうしながら、俺と月島は彼女のバイト先のお店へ移動する事になった・・・現在いる〇〇通りからは距離もそれほど遠くはなかった。

 

そのお店の名前は『ファースト膳』・・・名前を見ると和食かなと思うがお店の装いは洋食屋さんっぽい…よくわからないお店だったが、確かに人気なのか店内はかなり混雑しているようだった。

 「こっち来て!!」

 お店に入り口に案内されるのかと思いきや、月島はお店横の小さな扉を開けて路地裏の方へ俺を誘導した・・・

 「えっ!?え!?」

戸惑っているうちにも、月島はスタスタと裏路地の先にあるまた小さな扉を開けて室内に俺を案内する・・・

「おいっ!月島これはどういうこと・・・」

「まぁまぁ!!」

そう言いながらさらに奥の扉をボタンで開けると、それは業務用のエレベーターらしきボックスだった。月島はB2ボタンを押すとエレベーターはウィーンという大きめの音を響き渡らせながら俺たちを閉じ込めた箱は下へと動き出す。

普段消極的な彼女が、なりふり構わずといった態度を取る事は珍しかった。

 

「月島!?お前の事は信頼してるから別に構わないけど・・・状況説明を今ここで問いつめた方がいいか?それとも後で聞く方がいいか?」

「・・・もうちょっと後の方で。」

「・・・わかった!」

 

月島はこれまで俺のために色々と動いてくれた。力になってくれたり、助けられたり…

そんな健気な彼女が初めて見せたわがままを否定することなんて出来なかった。

だからここは彼女の思う通りに行動することにした。

 

 

ノロノロとした搬入用のエレベーターが地下へ到着する。

エレベーターを降りると廊下のような所に出たが、真っ暗で向こうに見えるは非常口の明かりだけだ。

 

ガチャンッッッッ!!

 

ブレーカーを引き上げる音。月島がレバーを操作したようたが、辺り一面真っ暗だった空間が 一気に明るくなる。

 

「こっち。」

廊下を少し行き、L字型の角を曲がったその先は開けた地下空間になっていた。

 

「これは!!」

そこには広々とした空間の中央にリングが設置され、壁側には様々なトレーニング機材が並んでいる・・・トレーニングジムそのものだ。しかも機材関係も新しく、最新の設備が揃っているようだった。

 

「トレーニングルーム!?どうして?」

「え、えっと、、、あの、、、」

 

月島は何か物凄く緊張しているようで、少し震えている。いやっ、何か言いにくそうな事を必死に心を整えて言おうとしているようだ。

月島が見せた強引な誘導、このトレーニングルーム・・・状況を察するにおおよその事は読めてくる。

 

「言いにくいなら、俺が当ててやろうか!?」

「えっ!い、いや…」

 

「月島、お前はリリープロジェクトの関係者で、もしかしたらスタイリストか何かだろ??どうだ!?」

 

俺がリリーに会いたい会いたいと連呼するものだから、関係者である月島は、ずっとひた隠しにするのも心苦しく何とかしたかったんだろうと俺は悟った。

 

「い、いや、合ってる所もあるけど、ちょっと違う!!」

「何ッ!じゃあマネージャーか何かなのか??」

「いやっ、そうじゃなくて・・・」

「じゃあ、何だよ!?正解教えてくれるか?」

「う、うん、、、あのね、、、

 

 

 

、、、あの、、、つ、つまりは、、、

 

 

 

、、、私が、、、リリーです。。。」

 

 

 

「へっ?月島が、、、リリー??」

「そうなの、、、」

 

 

 

「ないないないないないないないない!!!」

「!?」

 

 

「それはありえんよ、月島〜!!冗談キツイぜまったく!!」

「いやっ、ホントだって!!」

「確かに、お前とリリーの髪の毛の色が似てる。体型が似てる。推定バストサイズが似てるとか、色々俺も月島がリリーじゃないかって考えた時もあったよ!でも色々考えて検証した結果、別人だって結果に至ったんだよ!」

 

俺は月島がリリーじゃないか疑惑を当然考えた事もある。しかし、月島との普段の会話や接し方を見た上で俺は月島はリリーじゃないという結論に行き着いた。

 

理由は中身が全く違うからだ!!

 

モニター越しではあるが、リリーチャンネルの動画を擦り切れるくらい何万回も見てきた俺だから言える。モニターの向こうのリリーは自分を偽って演じながら闘っているとは思えない。狂気に満ちて、実は対戦相手をリスペクトしながら破壊を好むその狂いっぷりは、演技して出せるものではない。

一方、俺と月島は出会ってからの付き合いもそこそこ長い。彼女の人となりもわかってきたつもりだ。そんな月島とリリーとを比べて同一人物だと言う方がおかしい!!

 

「月島とリリーの性格は全く別人だぞ!!お前と知り合って1年以上経つけど、これまでずっとお前は、ちょっとポンコツな月島理科を猫かぶって演じてきたのか!?俺との1年間の思い出は偽りだったのか!?そうじゃないだろ!?まぁ、これだけのトレーニングルームに案内してくれるって事は、リリーの関係者だって事は認めるよ。もしかして生き別れた双子とかか何かか!?」

「違う!!そうじゃない!!確かに私とリリーの性格は似てないけど、それでも私はリリーなの!!」

「月島、お前は強情なヤツだなぁ…。じゃあ、お前がリリーだって何か証明してくれないか!?」

「わかった。私、リリーになるよ!!それでいいよね!!」

「ああ、いいよ!!なんなら勝負でもしてみるか?それでお前の実力も証明出来るだろ!?」

「わかった・・・でもどうなっても知らないからね!!私着替えてくるから、鏡くんも着替えて待っててよね!!」

「着替えるってコレ?」

「うん。」

 

今日買ったばかりのハーフスパッツやグローブに着替えろという事だ。購入後、即使用とは思ってもみなかったが、俺は月島の提案に従う事にした。

思いもよらない展開だ。まさか、俺と月島が勝負する事になろうとは…。とは言え、あの月島のようなポンコツな女の子とまともに闘っていいものかと躊躇いもある。でも女の子とマジで勝負するというシチュエーションに遭遇する事は滅多にない。この機を逃すものかと俺は鼻息荒くOKした!

 

「じゃあ待ってて。」

月島はトレーニングルームの脇の扉を開けて、更衣室に入っていった。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

おいおい、2人っきりで一体何やってんだ!?

 

 

俺はようやく今の状況を客観的に見つめ直せるようになった。

誰もいない広い地下室にリングがあり、そこで勝負する。そんな常軌を逸した状況が月島1人の力で出来るはずがない。絶対何者かの手助けがあっての事だと思うが、確か月島はどこかの令嬢だけど今は寮暮らしをしていると聞いた事がある。経済力でこんな状況を作り出せるものなのか?それはわからない。

 

そう言えば、明日リリーと対面するという話だったけど、それはどうなった!?

今日、何故月島と勝負する事になった??

 

色々な事がありすぎて状況がまだよく掴めない。もうこれはしばらく周りの状況に流されてみて様子を伺うしかないと判断した俺は、月島が着替え終えてやって来るのを待つ事にした。

 

真新しいハーフスパッツやグローブ、プロテクターを装着した俺は、トレーニングルームのガラス張りの壁の前に移動し、自分の全身を見渡す。

 

・・・あれっ、結構イケてるんじゃね、俺?

 

格闘家みたいなそれっぽく見える錯覚に駆られた俺は心なしか強くなったような気がしていた。

 

そうこうしているうちに

ガチャン!と更衣室を開ける扉の音がした。

 

ようやく月島が着替え終えて出て来・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「初めまして、鏡恭助くん!!」

 

 

 

えっ

 

 

 

 

いやっ、おかしい・・・目の前にいるのは間違いなくリリーだ。説明などいらない。見ればわかる。

 

 

・・・でも俺は目の前のリリーを無視して、真っ先に更衣室の中を確かめた。更衣室の中には誰もいない。月島が先程まで着ていた服が丁寧に折り畳まれて置かれているだけだった。人が隠れられるようなスペースもない。

 

 

 

えっ

 

 

 

・・・って事は・・・

 

 

俺は更衣室から出て後ろを振り返った。

 

 

 

「ニヒッ♡」

そこには悪戯笑いの表情を浮かべる彼女の姿があった。

 

 

 

 

ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

えええええええぁぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

天地がひっくり返るようだった。いやっ俺の周りの空間が歪んで見えている。瞬間湯沸かし器のように真っ赤になって熱量が爆上げされた自分がいる。完全に冷静さを欠いているようだ。

月島がリリーなんてあり得ない!!!あり得ないが目の前には正真正銘のあのリリーが立ち尽くしている。

 

そ、それでも俺は常日頃から彼女と会う日を想定して準備してきたんだ。自分にそう聞かせながら口を開く。

 

 

「その状態の今、月島理科、彼女は寝ているんですか!?」

 

 

!!!!!!

俺のその言葉に彼女は驚いたような表情を浮かべる。

「ううん、理科あの子はちゃんと起きてるよ!心の中ではいつも二人でくっちゃべってるわ!!今あの子は凄く恭助に申し訳なさそうにしてる。でも、凄いね!なんでわかったの!?」

「君が″初めまして″って言ったから。つまりは意識も記憶もあって2人で共有してるって事!?」

「そうよ!今は私が表に出ているだけ!」

 

 

・・・そうか、そういう事なんだ・・・

 

俺はその可能性も考えた事もある。しかし、今でも信じられないくらいだ。

 

 

「遅くなったけど初めまして!!月島理科のもう1人の人格、、、リリー!!」

 

月島理科は二重(多重?)人格で、そのもう1人の人格があの狂気のレスラー『リリー』である。これで色々な辻褄が合う。しかしながら、念願のリリーと対面出来たのにも関わらず、あまりに驚きの事実が多くて、頭がついて来ていない。感動に浸ってもいない。

 

「ようやく会えたね、恭助!!」

「俺の事・・・もう説明する必要もない・・・よな?」

「うん、恭助の事はよ〜く知ってるよ!私の事が好きとか、私の事を愛してるとか!!」

 

 

今まで月島の隣で散々リリーについての俺のコメントは全て筒抜けだった!!!!

俺の動揺にさらに追い討ちをかけられるようだった。

 

 

「それに恭助は私に会ったら何したいっていってたかなぁ??確か〜即答だったよね〜??」

 

急に冷や汗が出て来て、脚もガクガクと震えてきた。

 

「恭助はボッコボコのギッタギタに、もうこれでもかって言うくらいケチョンケチョンにやっつけられたいんだったよね!!??」

 

もう、名指しでリリーの口からそのような言葉が聞けただけでも鼻血が吹き出しそうになっていた。しかしながら、自分自身の生命の危機的状況でもある。

 

「い、いやっ、それは言葉の誤りっていうか、社交辞令みたいな・・・」

「その望み叶えてあげる♡」

 

死ぬ!!逃げられない!マジで死ぬ!!

ホントにヤバい!!

本来なら明日会う予定で心の準備がまだ出来ていない…ってそんな事を言ってる場合じゃない!!今まで俺が月島にベラベラ喋ってた事が全てリリーに伝わってた事があまりに致命傷過ぎる!!

マジでこのまま水蒸気になって蒸発したい!!

 

「・・・あの・・・怒ってる?」

「ううん、そんな事ないわ!むしろ楽しみで仕方がないの!!ずっとこの手で私を愛してくれてる恭助の事、ぐちゃぐちゃにしてみたいって思ってたから、ようやくその願いが叶うと思うと・・・興奮が収まらないの!!」

 

アカン!!これは絶対アカン奴や!!

彼女の目は完全に狂っている。彼女の言動も狂ってる!!

 

それから何を言い合ったのかよく覚えていないが、言葉巧みに強引にこのトレーニングルーム中央のリング上げさせられた俺は、リングの端と端とでリリーと対峙していた。スパーリングという事で、特にルールで縛るという事もなく、どちらかが戦闘不能となれば勝敗が決まるという事にした。ギブアップではなく戦闘不能で決まるとか、もう死は確定じゃないのだろうか?と思えてきて半泣きになる。

 

「ずーっと楽しみにしてたんだよ!!恭助をこの手でぐちゃぐちゃにするその時を♡」

 

くそぅッ!!リリーはとことん俺の精神を動揺させようとしてくる。彼女とまともにやり合って勝てるはずがない。これまでプロレスラーや様々な格闘家達と対戦し、勝利してきた彼女だ。そんな化け物相手に勝てる可能性はゼロである。もう脚はガクブルで立っているだけでもやっとだ。こんな状態で闘えるのかどうかもわからない。出来れば逃亡したい。

 

 

・・・完全に意気消沈していた俺だったが、ふと自分の手のひらに視線がいく。

 

目黒のリストバンド・・・今日月島にプレゼントしてもらった物だ。

 

そう言えば、リリーは月島理科でもあるんだよな。あのちょっとポンコツ、チョロい所もあるけど、とっても優しい彼女・・・それが月島理科だ。

 

そうだよな!リリーは月島理科だったんだよな!

 

そう考えると、さっきまでの全身の震えが嘘のように静まっていた。

 

 

「リリー!!お前は月島理科だよな!!」

 

「えっ?そうだよ。」

 

「そうだよな!?ビビる必要なんてなかったよ!!俺が月島相手に負ける訳がない!!月島がリリーだとしてもそれは変わらない!!」

 

「ふぅ〜ん、、、そうなんだ!?」

 

「リリー!!

 

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「俺が今日まで対リリー戦を想定してどれだけ準備してきたかを思い知らせてやるよ!!これは愛だ!!愛ゆえにどれだけ俺がお前を分析してきたのかを見せつけてやる!!」

 「勝つのは絶対に俺だ!!」

 

 

 

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「わかった!じゃあ私も全身全霊をかけて相手してあげる!!その愛を上回るくらいの慈愛で受け止めて、全力で恭助を潰しにいくわ!!」

「勝つだけじゃ飽き足らない!!私は破壊したいだけ!!」

 

 

 

 

「いくぞ!!」

「オッケー!!」

 

俺とリリーは両方向からリング中央へ向かってダッシュする。

 

いよいよ念願のリリーとの勝負が始まる。

 

 

 

 

わかってはいるけど、俺はこの闘いに敗れるだろう。

 

敗れるだけで済まされないかもしれない。それでも、俺はこの状況を受け入れ、未来に可能性を繋げていく為には、俺自身の闘争心を掻き立て極限状態になければならない。

これまでの平和ボケしてきた俺だけど、今はそんな日常から一転した危機的状況だ。

この生命の危機は自然災害や戦争に遭遇して受けたものではなく、大好きな女の子から齎されたものである。そう考えると自分は少しだけ恵まれてるのではと思えてくる!

”どうせ死ぬなら憧れの女の子…リリーに殺される方が本望だ″と多分俺は極限状態になれば決心が付くだろう。

俺は自分自身を極限状態に持って行く為にリリーを煽って状況を悪化させた。

このような時が来る事を実際に恐怖を感じながらも心のどこかで願ってきたからだ。

モニターの向こう側で繰り広げられてきた惨劇の当事者がいよいよ自分になるのだ。

 

 

 

 

 

 

画面の向こうのプロレスラーは 、もう画面越しではなくなったのだ。

 

 

 

 

 

 

『 見せてやるよ!!俺の華麗なる敗北を!! 』

 

 

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