【AP.2020】魔法少年イツキくん ~地球防衛軍の一日~③ | 想像の箱庭‐SHU_ZENの書き溜め小説

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全部まとめてフィクション、同じ世界観のファンタジー小説です!
毎週、週末にドカン!と更新しています。

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 ……ダメだ、華麗に着地してバンザイポーズをしたところから見て元気そうだ。この『UMAKOSHI-SAN☆』。


『!? 副司令、今更だが貴重な情報が手に入ったぞ』

「何よ」


 ミコトはめんどくさそうに返事を返した。
 万歳からの見事なY字バランスを見せつけている『UMAKOSHI-SAN☆』をよそに、眼鏡はピュンピュン飛び回りながらまくしたてる。


『あの顔をデータベースで照合してみたところ、競馬場で撮影したイヌカイさんオフの日がヒット!』

「は!?」


 ゴリキュアが反応した。あの顔ってどの顔? まさか馬マスク?
 ピコン、と眼鏡のレンズに写真が表示される。“ヒットした該当写真、2件”……


『……つまり彼は、【ストレスのあまり競馬でスる犬ゴリラ】となってしまったイヌカイさんの顔馴染み……そう、相手は鈍足と名高い不人気の競走馬、アメノヒエイエイオー

「貴重どころか激しくどうでもいいな、その情報!?」


 本気で馬の情報だった。
 ちなみに最初に表示された画像は競馬場、2メートル四方に誰もいないドン引きされたゴリキュア、そして静かに歩み寄る警備員の写真である。


『つまりあれは頭部がエイエイオー、首から下が地●武男だ!

多分地●さん関係ないと思う! あと一応エイエイオーのマシな写真ないの!? 見切れてんだけど!」


 そう、警備員に確保される2秒前なゴリキュアイヌカイがメインになっていて、アメノヒエイエイオーは鼻面しか見えていない。


『ああ、はい勿論。全身』

「……ごめん、同一馬か分からない!


 ただの馬だ!
 ――そう思わず、オレが突っ込んだ瞬間、


「……ブルルルルルルァ!!!」


 ……地●武男は雄叫びをあげた。


「ねえ、威嚇してるよあれ!?」

「……ああ、威嚇してるなエイエイオー

「あれをエイエイオー扱いでいくのねゴリキュア!?」


 ……『UMAKOSHI-SAN☆』はふぁさっと浮かび上がった。


「ブルォルォルォルォ!!」


 徐々に全身が発光し始めるそれ。うん……ヤバい、なんか始まったぞ。


『HAHAHA、マズいぞ、馬の顔が判別できないイツキくんに怒ったかな?』

「……メガプロ、彼の気持ちを考えるなら、まず眼鏡の形が判別できないやつがいると仮定すればいいと思う」

『――なんてことだ! 中華丼に溺れて死ねイツキくん!!


 指摘するミコト。いや、待って。
 頼むから要らないアドバイスを眼鏡に与えないで。
 ――ってかなんでオレ、眼鏡に呪われてるんですかね!?


『……一応だが、覚えておきたまえ』


 親の仇でも見るような目……いや、レンズで眼鏡は言う。


『……君の四肢接合部は、白菜と筍と卵の旨味成分に弱い……』

「なんで!?」

「まあ」


 そこでミコトがエアクイッた。
 何ミコト。さては好きだな、その眼鏡ズラシ?


「……中華丼を投げつけられたら生命活動を停止する、魔法少年さんのどうでもいい情報はさておくとして

「いや副司令どうでもよくな……いやどうでもよかったよね、確かに目下の問題はあれだよね!」


 みるみるうちに変形し、組み上がっていくシルエット。
 それはどちらかと言えば馬メインだった。


「……馬ってかUMAだよこれ……」

『UMAいことは言わないでもらいたい!』

「あの」


 尚もエアずらしをしながらミコトはクールにいう。


「……悪いことは言わないわ。私をイラつかせる前に粉々に割れてくれる、メガプロ?

『了解した!(ガシャン!)』

同じダジャレでもオレはいいんだ!?


 というかなんの躊躇もなくひとりでに割れたんだけど、あの眼鏡!?


『(発生)……ホ〜ラ……みてごらん副司令……眼鏡が割れると、そこにはMEGANEがあるんだよ……☆』

何事もなかったかのように破片の中から現れるなら、何で割れたのお前!?

『へびの脱皮と同じさ☆』

「クソ、やべえな、第二形態か!」


 一人だけシリアスみたいな顔をしてゴリキュアが言う。
 ……いや、そんな顔しても恰好がコメディだから台無しだよ!?

 そう、みるみるうちに組み上がっていくあれは、四足歩行の馬……
 ……の、首の上に乗っかった上半身。


「…………あ、やっぱ馬越さんだ……」


 そう、おっさんの上半身。
 極め付けにTシャツの文字は

 『ケンタウロス☆UMAKOSHI』

 と変わっていた。

 ……眼鏡はショックを受けたように言い放つ。


なんてこった、逆パターンか!

「逆パターン? 何かわかるの眼鏡!?」

『分かるとも……! ああ、首から上が地●武男になってしまった……!』

だから関係ないだろその大物俳優!!


 オレがなおもツッコミを入れたその時、ヤツが嘶いた。


「ヒヒィィアア!! ヒフヒフ、ブルルルルルルァ!!」

「そして馬越さん、顔にも関わらずボイスが馬のままだ!!?」

『に、逃げるぞイツキくん……! 私の経験上、このタイプに改造されたエイリアンは!』


 カッ、と眼鏡のレンズが輝いた。


『無差別にアツアツのおにぎりを投げる!!』


 ――ちゅどどどどどど!!!


「……ねえ、オレ、エイリアン由来の技術で蘇生されたんだよね? やつら人間の食べ物を何だと思ってんの?」


 ……だって中華丼弱点だよ、オレ。中華丼が武器と化すなんてどういう技術?
 中華丼の旨味成分ひっかぶったら何、オレはバラバラ死体?
 ヤバくない? もう笑顔でタケノコ食えなくない??


「あっち、カスった!」

「地味に痛いなこれ」

『解析したらたまに爆発するらしい!』


 ……ともかく、さっきから雨あられと降り注ぐおにぎり。
 それは投げるというより、もはやマシンガン状態だった。
 おにぎりマシンガンだ。


「テレビ番組だったとしてもこれテロップいれられない惨状だよ。なんだよこれ!」

「ハッ……食べ物の無駄だってか! 画面前のよいこは真似すんなよな……!」

誰に言ってんのこのゴリキュア!?

『君たちはしゃいでないで、このランダムバクダン握りを回避するんだ!! 死ぬぞ!』


 ――ぼふん!!

 眼鏡がキレた瞬間、至近距離で何かが爆発したのが分かった。


「……っ!?」

「ミコト!?」


 被弾したらしいミコトがいつの間にかいない! 降り注ぐおにぎりで目を凝らしても捉えられず、眼鏡がフレームをバキッと折りたたんだ。


『ッ、ミコト副司令、呼気の反応がロスト……!

「くそッ、めっちゃ可愛い副司令!」


 いやゴリキュアさんの呼び方ァ!


『微弱ながらクロロホルムの気化を検知……2時の方向に熱源が移動!』

連れ去ったってことだよねそれ!?


 その時、おにぎりでモクモクになってしまった視界にニョキっと細長い人影が映った。


「……君たちの副司令官は、僕が預かろう

『誰だ!』

僕はこの円盤ズを統括する葉巻型UFOの一個師団長だ。名を、えっと……そうだな……なんか仮っぽくしとこう……」

『名前を今考えないでいただきたいのだが!? ええいもうアレだ! 粉塵爆発マンでいいだろう!』


 人影は頭にかぶったバイザーの下、困ったようにほっぺたをかく。


「……いや、『P.N.くま〇子ジャッキーさん(1977)』くらいで」

『どこぞのFM多摩に寄せられるお便りペンネームみたいだな、このダサい感じ!? というか誰が知ってるんだそんな懐かしいアニメタイトルを! 何歳だお前!

「どうとでも言いたまえ、眼鏡の怪生物」


 ブロロロロ、とモーター音のようなそれが聞こえ出し、バイザーの人影がフシュンと消えた。


「というわけで地球の諸君、アディ・ダス・網戸!

アディオス・アミーゴの間違いだろそれ! コラ、UFOを飛ばす気か!」

魔法少年イツキくん!


 走り出したゴリキュアを背に、空飛ぶ眼鏡がキラリと光った。


『ケツを叩け!!』

「は!?」


 いきなり何を言い出すのか、思わず眼鏡を凝視した。


「……あれか! メティスに頭から麻婆豆腐ぶっかけた時の!」


 こちらを振り返るゴリキュアの勝手な回想。
 ……ねえ、あのメティスに何したのこいつら!?


『ゴリきゅんその通り、奥の手だ! さあケツを叩け!

「過去の事件で何らかの身体機能を使ったらしいのだけしか分かんないし、なんかそのメティスさん激しく死んでない!!?」


 ――ぱちん!


『ええい、もっと激しく連打! 君にはケツをドラミングした分だけ空を飛べる機能があるんだ!

「地味に嫌な機能しかないのかコレ!?」




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原作↓
「世界創造××(ブログ版)」
「世界創造×× ~誰かが紡ぐ物語~(小説家になろうリメイク版)」