東京都が導入することを決定し、町田市でも導入することで進んでいる「パートナーシップ制度」について議会質問しました。

 


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本制度の導入目的は、主に性的マイノリティ当事者の「①困りごとの解消」と、「②社会的理解の促進」とされています。

今回、質問を通じて、当事者の「①困りごとの解消」とはどのような困りごとであり、制度を導入することで本当に当事者の困りごとの解消に繋がるのか?との視点で行政に今の考え方をお聞きしました。

パートナーシップ制度の登場から6年経過し、これまでに225自治体で導入され、人口カバー率は既に52.9%までにもなっていますが、全国的に、ほとんど利用されていないのが現状です。

当事者の困りごとに真剣に向き合うのなら、盲目的に流行りの制度の導入を急ぐのではなく、市できちんと調査し、当事者一人一人のリアルな困りごとに目を向けることこそが本当の課題解決になるのではないか?

との視点で考え方をお聞きしましたが、

行政側の答弁では、私が何を尋ねても「多様性」の言葉のもと、「②社会的理解の促進」でしか語られず、本制度導入の要諦である当事者の「①困りごと解消」について殆ど答弁はありませんでした。

市に寄せられた大きな声のみで政策判断をするのではなく、冷静に実態調査をし、課題解決には何が必要かを把握した上で市政に反映させることが大切だと考えています。


以下、当日のやり取りです。







2022.9一般質問(性的マイノリティ施策について)

(1)    町田市が導入を検討しているパートナーシップ制度について問う。


【壇上質問 厳太郎】
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東京都議会で6月15日、同性同士やトランスジェンダーなど、性的マイノリティのカップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する条例改正案が可決され、10月11日から受付を開始し、11月1日から運用が開始されます。

またここ町田市でも市長の6月の施政方針で町田市として、「(仮称)パートナーシップ制度」の導入を進めるとのことでしたので、この件について質問させていただきます。

そばに何か困っている人がいれば助けてあげたいですし、また助けてあげてほしい、素朴にそう思う方々がほとんどでありましょうし、私たち市議会議員も同じ思いであります。

性的マイノリティの皆様に関わるこのパートナーシップ制度に関して、そうした観点から伺ってまいりたいと存じます。

町田市を含む、これまでの議論では、性的マイノリティの方々の当事者の困りごとや生きづらさの軽減や、差別や偏見の解消に加え、性の多様性に関する社会的な理解の促進とされてきました。

東京都では、パートナーシップ制度創設の目的として、「多様な性に関する都民の理解を推進するとともに、パートナーシップ関係に係る生活上の不便の軽減など、当事者が暮らしやすい環境づくりにつなげる」としています。

町田市でも同様の考えで制度導入を検討しているのですか?



【答弁 市民協働推進部長】
2022年3月に策定した、「一人ひとりがその人らしく生きるまちだプラン(第5次町田市男女平等推進計画)」では、基本施策として、新たに「多様性を尊重する意識の浸透」を掲げ、その具体的取組の一つとして、「(仮称)パートナーシップ制度」の導入を位置付けております。
本制度は、困りごとを抱えている当事者の方に寄り添う制度であるとともに、多様性を尊重する意識の浸透をめざしています。
また、制度の導入に対しまして、市民の方からは、「積極的に進めてほしい」、「議論に時間をかけて導入を先送りにすべきではない」あるいは、「慎重に進めてほしい」などのご意見をいただいているところです。
そこで、行政だけでなく、市民、事業者など、全市を挙げた取組とするため、性の多様性を尊重する社会をめざす、「(仮称)性の多様性尊重条例」の制定を考えております。 
今後も引き続き、市民の方の声に耳を傾け、社会情勢の変化に対応しながら、検討を進めてまいります。



【再質問① 厳太郎】(当事者の困りごとの認識)


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市長の施政方針でも語られましたが、「性的マイノリティの方の困りごとや生きづらさの軽減や、差別や偏見の解消に加え、性の多様性に関する社会的な理解の促進につなげること。」が制度導入の目的のことでした。

制度導入の目的のポイントは二つです。

性的マイノリティ当事者の「困りごとの解消」と、「社会的の理解の促進」でありましたが、「困りごと」とは、どのようなことと認識していますか?

行政が直接的に関わる「性的マイノリティの方の困りごと」は具体的にどのようなことがあるのでしょうか?


【答弁①市民協働推進部長】
当事者の困りごととしましては、まず「自分たちの関係や存在を認めてほしい」
ということが挙げられると思います。このため、行政として、性の多様性を尊重する社会づくりを推進していきたいと考えております。



【再質問② 厳太郎】(医療や住宅分野における当事者の困りごと)

東京都人権部企画課は制度導入の目的を、当事者の生活上の不便軽減など性的少数者が暮らしやすい環境づくりと、多様な性に関する理解推進を挙げています。

東京都ではパートナーシップ制度の導入検討にあたり16万人に対して大規模実態調査を行いました。

調査では非常に細かい困難経験の選択肢が列挙されていましたが、調査の結果、7割の当事者が「困難経験なし」と回答し、当事者の3割が「困難な経験あり」と回答しています。

当事者の困りごと、困難経験ありと回答された経験内容のうち、最も経験率が高いのは「相談相手の不在」11.6%、次いで「親の無理解」10.7%でした。

それ以外の生活上の不便として、東京都は、「特に医療分野と住宅分野における意見が寄せられている」とし、

「例えば医療機関においてパートナーの診療情報を聞けない、手術の同意ができない、病院での付添いや看護がさせてもらえないといった意見を聞いている。」

 「また、住宅分野におきましては、例えば同性カップルが公営住宅において申込みができない例や、民間賃貸住宅で同性カップルを理由に入居を断られる例があると聞いているほか、職場におきまして福利厚生制度が適用されないなどの意見を聞いている」、としています。

医療関係と住宅関係の困りごとです。

よく性的マイノリティの困りごととして例示されるのが、面会者の範囲や手術の同意者、あるいは病状の説明を受ける人を誰にするかということがあります。

色々なお医者さんにお聞きしますと、「法的な家族であるかどうかでは区別せず、患者さんの意向に沿って面会や手術の同意や病状の説明を行っている」のが実際のところだそうです。

調べてみますと、「患者権利章典」における「だれでも差別されることなく、適切な医学水準に基づいた安全で効果的な医療を受ける権利」があり、患者の主体性を持って対応することが当然であるようです。

都立病院では、面会者の範囲や患者が希望する手術などへの同意者を誰にするかは、法的な親族に限定せず、患者自身に決定いただいており、性的マイノリティの患者についても同様とのことでした。

町田市民病院でも同様に対応されていることと思います。

それでは、次に、性的マイノリティの方々の住宅に対しての困りごとであります。
こちらもよく例に出されるのは、賃貸住宅に入れないということであります。

少しお調べしましたら、性的マイノリティの方々が同性であることを理由に賃貸住宅に入れないとの困りごとの相談は、市営住宅を取り扱う「町田市住宅課」には寄せられたことはいないとのことでした。

しかし、都営住宅条例ではこれまで、入居資格に「親族同居要件」があり、同性パートナーは入居できませんでした。

東京都では都営住宅や福祉住宅などの関係条例5件が条例改正され、同性パートナーでも都の公営住宅に入居申し込みができるようになりました。

つまり、当事者の困りごとの中で、医療や住宅分野における当事者の困りごとはすでに解消されているか、解消されつつあると思いますが、この医療や住宅分野の点について町田市はいかがお考えですか?



【答弁②市民協働推進部長】
市ではこれまで、当事者の方との懇談などを通して様々な困りごとを伺ってまいりました。医療や住宅などの個別分野におきましても、当事者の方の困りごとがあると認識しており、「(仮称)パートナーシップ制度」に基づき交付される証明書を活用した官民サービスの付与について、当事者の方の困りごとに寄り添い検討していきたいと考えております。



【再質問③ 厳太郎】 (制度の導入で当事者の困りごとは解消するのか)

先ほども説明しましたが、東京都のアンケート調査によって医療や住宅分野以外で、当事者の困りごととして明らかになったもので多いのは「親の無理解」「友人の無理解」「差別・いじめ」「相談相手の不在」でした。

特に当事者にとって深刻なのは身近な人の無理解だと思います。

しかしこれらの問題はパートナーシップ制度で解決できる問題では無いと思われます

港区が都内在住の性的少数者に「パートナーシップ宣誓制度があれば宣誓したいか?」と質問したところ、「宣誓したい」と回答したのは当事者のうち28.8%にとどまり、これに対して71.3%は「宣誓したいと思わない」と回答。

その理由は、

「そっとしておいてほしい」27.4%
「特段のメリットがない」23.2%
「認めてもらう事柄ではない」22.1%
「宣誓することでかえって偏見・差別にさらされることが心配のため」17.9%

であり、パートナーシップ制度は当事者に求められているとは言えず、制度導入で性的少数者の困りごとが解決するとは当事者ですら考えていないことを町田市はどのように認識していますか?

当事者の困りごとに真剣に向き合うのなら、盲目的に流行りの制度の導入を急ぐのではなく、市できちんと調査し、当事者一人一人のリアルな困りごとに目を向けることこそが本当の課題解決にはなりませんか?


【答弁③市民協働推進部長】
港区が2019年に行った当該調査は把握しておりますが、町田市の当事者の方などの声を踏まえ、「(仮称)パートナーシップ制度」の導入を考えているところでございます。また本制度の導入などを契機として、性の多様性への理解促進に向け、行政はもとより、市民の皆様、事業者の皆様も含め、「多様性を尊重し、お互いを認め合えるまち」をめざしてまいります。



【再質問④ 厳太郎】(都で既に導入されるのに市で導入する意義は)

更にお聞きしたいのは、既に町田市の上位自治体である東京都が導入を決定しているパートナーシップ制度を町田市がこれから導入しようとしている点です。

当然ですが町田市民は東京都民でもあります。

これまでも様々な場面で「それは東京都が行っている事業だから町田市での導入は検討していない」との趣旨で答弁がなされ、東京都と町田市の取り組みは分けられてきました。

例えば、「暴力団排除条例」の時は、町田市内の飲食業組合からの要望で「暴力団排除条例」を町田市が率先して条例化すべきとの発言に対しても、「東京都が制定に向けて準備しているので、その内容を受けてから考えたい」との答弁でした。

今回のパートナーシップ制度の導入は、どのような考えで既に東京都が導入を決めているのに、東京都である町田市でも導入を考えているのですか?

東京都民でもある町田市民が町田市独自で制度を導入することによる恩恵や意義についてどのように考えていますか?


【答弁④市民協働推進部長】
当事者の方からは「東京都が導入をしても、より身近な町田市に制度があることで、自分たちの周りでも性の多様性への理解が広がるのではないかと期待している」などというご意見をいただいております。また、例えば東京都ではパートナーシップ制度の申請を原則電子申請のみとしておりますが、町田市が導入する際には対面での手続きとするなど検討していきたいと考えております。


【再質問⑤ 厳太郎】(当事者に本制度は必要とされているのか)

これまでに国内の様々な地方議会で議論されてこられ、全1775自治体のうち、225自治体でパートナーシップ制度が導入されてこられ、その人口カバー率はすでに52.9%となりました。

しかし、実際に制度を利用しているカップルは3168組しか存在せず、この制度を必要としている当事者は6年目を向かえても、あまり存在しないことが指摘されています。

導入した225自治体のうち50以上の自治体では申請者はゼロです。

また、自分の住む自治体にパートナーシップ制度が導入されていることを認識していながらも、「活用していない」と回答したのが当事者の8割を超えています。

それはこの制度自体が当事者の困りごとの解決という点でも、理解促進という点でも課題解決にマッチしていないことを表しています。

こうした結果を踏まえ合理的に考えれば、当事者にとってパートナーシップ制度をあえて導入する必要性は薄いと言えるでしょうし、

身近にいる性的マイノリティの方々とお互いの個性を尊重しあいながら普通に接することの方が一般の当事者にとっても望ましいのではないでしょうか?

私には多くの友人がおり、その中には性的マイノリティの方々もいます。
性別を問わず、皆が思うことは差別や偏見に晒されず、それぞれが自分らしく平穏で安らかな日常をおくることです。

町田市にも様々な意見が寄せられていることと思いますが、寄せられた大きな声のみで政策判断をするのではなく冷静に実態調査をし、課題解決には何が必要かを把握した上で市政に反映させることが大切だと考えますがいかがでしょうか?


【答弁⑤市民協働推進部長】
制度が導入されても、利用する必要がないという方は、いらっしゃると思います。一方で、生きづらさや困りごとの解消に制度が必要という方もおり、多様性尊重の観点から、制度の導入をめざしているところでございます。


【再質問⑥ 厳太郎】(制度導入の危惧)

東京都でパートナーシップ制度の導入が検討されている際に、「女性の人権と安全を求める会」から女性を守る観点から、都議会へ反対の立場で意見書が提出されました。

その内容は、

「社会のさまざまな制度やルールの多くが、身体上ないし生物学上の(あるいは少なくとも戸籍上の)性別区分に基づいて設計され、運用されており、それらの制度やルールは、身体的に弱い立場にある女性と女児を守るために必要不可欠なものです。しかしながら、東京都のパートナーシップ宣誓制度を利用することで、このような施設やルールの運用が実質的に損なわれることになれば、それは女性と女児の人権と安全を深刻に脅かすことになるでしょう」

とあります。

これは東京都のパートナーシップ制度の導入によってこれまで守られてきた女性と女児の人権を脅かすことについての危惧から提出されたものです。
制度導入検討においていかが考えますか?


【答弁⑥市民協働推進部長】
この制度は当事者に寄り添い導入を検討しているところですが、基本的な考えは、全ての人がその人らしさを発揮できる社会の形成をめざしております。このことから、既存制度への影響についても考慮しながら、取り組んでまいります。



【まとめ 厳太郎】

「既存制度への影響も考慮します」との答弁ですが、

自身が性的マイノリティを公言している松浦大悟元参議院議員は、以下のように警鐘を鳴らしています。

「ゲイカップルといえば身体的男性同士、レズビアンカップルといえば身体的女性同士だと想像するかもしれないが、実はそれだけではなく、未手術のトランス男性で、なおかつゲイ(体は女性で性自認は男性、性的指向は男性)という人もいる。

東京都のパートナーシップ制度の導入によって正式に「男性」だと認められた人物が赤ちゃんを産めば、男性/女性の概念は大きく変わり、「産む性」は女性だけではないことが広く世間に明示される。

いまでは「妊娠するゲイ」や「妊娠させるレズビアン」が出現しており、社会はさらに錯綜している。

性別の再定義という重要な決定が、国民的議論もないまま行われようとしていることにとてつもない違和感を覚えている。」

と性別を性自認にまで拡大すると、多大な混乱を招くことから、これまでの性的マイノリティの方々の生活にも看過できない影響を及ぼすと、当事者の一人として危惧しています。

また、先述の松浦大悟元参議院議員は、

「諸外国では「性自認」を基準とした分類方法がこれだけのカオスを生んでいるわけだから、わが国は別の整理の仕方を考えてもいいのではないか。性的マイノリティだけでなく性的マジョリティにとっても暮らしやすい最適解を、国民全体で考えていくしかない。おそらく左派LGBT活動家は、筆者が指摘したような「LGBTの不都合な真実」を、都が関係者に対して行ったヒアリングで喋っていないだろう。LGBTの全体状況を把握するためにも、ぜひ東京都には一般の当事者の意見を聞いてもらいたい。」

と著書で記し、

パートナーシップ制度に対して「混乱を回避するには以下の2つのやり方しかない」と断言しています。

A .同性パートナーシップ制度の権利の付与は、性自認ではなく身体的性別によって判断する。

または、

B .同性パートナーシップ制度から「同性」の文言を外し、経済的相互扶助に限定した誰でも使えるパートナーシップ制度とする。


町田市で導入を検討しているパートナーシップ制度は法的根拠がないとのことでしたが、これらのことも十分検討すると同時に、一般の性的マイノリティの方々の本当に思っていることと直接向き合い、本当の意味での困りごとを解決することを模索していただきたく思います。


町田市が導入を検討している「パートナーシップ制度」について縷々お聞かせ願いました。

本制度の目的は「①当事者の困りごと解決」と「②社会的理解の促進」のはずでしたが、本日の答弁では私が何を尋ねても「多様性」を連発され、「社会的理解の促進」でしか語られませんでした。

今一度「当事者の困りごと解決」に着眼すべきと思います。

また、町田市からの答弁では「多様性」との単語が一番多く使用されました。

「多様性」を語る上では、

かつてアメリカのブッシュ大統領は、「ポリコレ」と呼ばれている「ポリティカルコレクトネス」を推進する人々を「多様性の名のもとに多様性をつぶしている」と批判したことも是非とも覚えておいていただきたく思います。

以上で私の一般質問を終了いたします。
ありがとうございました。