2023年05月05日

こどもの日。 『月の立つ林で』(青山美智子・著)

鯉のぼり0505。 午後、石川・能登地方で大きな地震があり、その後も揺れが続いています。
 これまでも、能登地方は地震が多発しているそうです。大型連休を楽しんでいることと思いますが、出来る限り“最悪のこと”を想定して、備えの再点検と十分な警戒をしておきたいと思います。


 今日は、国民の祝日の一つ「こどもの日」です。
 「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨として1948年に制定されました。
 また、五月五日は五節句の一つ「端午の節句」です。鯉のぼりを揚げ天の守護を願い、兜や鎧を飾り立身出世を願い、お祝いをします。
 さらに、「菖蒲の節句」とも呼ばれ、菖蒲湯に入ります。菖蒲の強い香りで、厄払いをします。

 あなたの「五月五日・こどもの日」は、どんな一日でしたか。



 2023年本屋大賞 第5位となった『月の立つ林で』(ポプラ社・刊)を読みました。
 これまでも青山氏の作品を読みましたが、それとは違った魅力のある5話でした。

 1章に登場する「怜花」は、長年勤めた病院を辞めた元看護師です。
 仕事を辞めた翌日、ポッドキャスト番組『ツキない話』に出会い、フォローし、その後も聞いています。
「竹林からお送りしています、タケトリ・オキナです。かぐや姫は元気かな」
 毎日午前7時に更新される10分間の番組です。

 隣から預かった猫 ルナを世話し、自由奔放な弟 佑樹の一面を知り…、彼女は思います。
 真っ暗な夜空の向こうで、月は何億回目のリセットをしたのだろう。
(略) 今は今の距離で、今の私にできることから。
 心がホッとする短編です。

 2章は、宅配便の委託社員をするコメディアン ポン重太郎の話です。場面や人物も違い、新たな話(物語)が始まったと思って読み進めました。
 「劇団ホルス、神城龍…」 どこかで聞いた名前です。1章の怜花の弟 佑樹が所属する劇団です。そして、ポッドキャスト番組『ツキない話』を聞き…。
 どうも、それぞれの登場人物、物語が交わっているようです。


 『ツキない話』が、新月の日の話を伝えます。
「ところで今日は、新月です。」
 タケトリ・オキナは軽快に言った。
「太古の昔から、新月に願い事をすると叶いやすいと信じられていて、それはこの現代でも続いています。不思議ですよね。新月って見えないのに、姿のない空に向かって願いをかけるって」(略)

 話は交わっているだけでなく、どうやら繋がっているようです。
 それも、必然の出会いと、優しい言葉に触れて…。
 似ているようでまったく違う、新しい一日を懸命に生きるあなたへ。
 長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家――。
 つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
 月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの想いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。
 最後に仕掛けられた驚きの事実と読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ、心震える傑作小説。
 父親が…、高校生が…、そしてアクセサリー作家が…。
 最後に明らかになること…。


 温かさに包まれるお話です。
 そして、『ツキない話』を聴き、空を見上げてみたくなりました。



 読書メモより
○ 「みんなで教え合って」とか「ひとりで背負わないで」とか、私は彼女たちの助けになるようなことを言ったつもりでいた。(略)
 それが杉浦さんのがんばりを奪い、彼女をどれだけ追い詰めていたか、ちっとも気づかずに。
○ ああ、でもきっと本田にとっては、中身なんて関係ないんだ。客に届ける大事な荷物としか思ってないんだ。
 自分の功労をアピールすることもなく、もくもくと仕事をこなす配達員の心遣いに気づいて、俺は胸が熱くなった。
十八年いきてきた、ただそれだけに対する世間の絶大な信頼。十七歳最後の日の私と何が違うんだろう。
○ 「好きとか嫌いとか、そういうことじゃないかな。ただ誰かの力になりたいって、ひとりひとりのそういう気持ちが世の中を動かしているんだと思う。俺が芝居をやっている理由もそうだよ」
○ 「私も、そんなふうに考えていた時期があった。でもね、何かを生み出すためには孤独でなければならないって、今の私は、そうは思わないわ。ひとりの時間を持つことと孤独は別のものよ」
○ 私が知らない仕事は、いったいどれくらいあるのだろう。本当に讃えられるべき人たちが世界中の隅々にいるのに、彼らはすごいと言ってくれなどと主張したりはしない

   目次

一章 誰かの朝
二章 レゴリス
三章 お天道様
四章 ウミガメ
五章 針金の光

【関連】
  ◇青山美智子(@michicoming)(Twitter)
  ◇青山美智子 (@aoyama_michico)(Instagram photos and videos)
  ◇本屋大賞
  ◇『ただいま神様当番』(青山美智子・著)(2021/01/22 集団「Emication」)
  ◇『お探し物は図書室まで』(青山美智子・著)(2021/04/10 集団「Emication」)
  ◇『赤と青とエスキース』(青山美智子・著)(2023/04/07 集団「Emication」)



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Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)日記読書
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