2025年02月24日
『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』(木下昌輝・著)

江戸時代、こんなにややこしい殿様は他にいなかったかもしれない。
小藩から25万石の大藩に養子入りし、苛烈な藩政改革に取り組んだ。
誰にも負けぬ弁舌と知識、厳しい倹約令と公共投資の両立、当時の身分制度を破壊する新法、そして、どこにもない市を生み出そうとしたが……
蜂須賀重喜という男が愚者なのか賢者なのか、勝者なのか敗者なのか。
皆様の目で確かめてください。
三十万両もの巨額の借財を抱える徳島藩。藩政改革を担ったのは、型破りな人物だった。
徳島藩蜂須賀家の物頭、柏木忠兵衛は新藩主候補との面会のため、江戸に急いだ。藩の財政はひっ迫している。新たなまとめ役が必要だった。
しかし―。「政には興味なし」新藩主となった蜂須賀重喜はそう言い放つ!家老たちの専横に抗して、藩主の直仕置による藩政改革をめざす忠兵衛ら中堅家臣団。対立が激化するなか、新藩主が打ち出した驚きの改革案とは!?そして、徳島藩を狙う大がかりな陰謀とは…。
アクション&サスペンス満載、著者渾身の時代長篇!
題名の「秘色」に、表紙にも背にもフリガナが付いていましたが、それに気づかず「ひしょく」と思い込んでいました。
“ナゾの色”あるいは“ヒミツ”が縁を結んでいくのだろうと予想しながら、本を開きました。
目次に続いて、見開きで「秘色の契り 人物表」がありました。このような人物表や相関図の載る物語は、「これは誰だっけ?」と何度も見直すことになるので、早速コピーをして、すぐ確認できるようにしました。

人物表の最初に載るのは、阿波国徳島藩第十代藩主 蜂須賀重喜です。実在の人物で、徳島藩四羽鴉と呼ばれた柏木忠兵衛、樋口蔵之介、林藤九郎、寺沢式部が、徳島藩の復興を期して佐竹家分家新田藩から迎えました。
巨大な借財にあえぐ徳島藩は、お飾りの藩主を据えて五大老が牛耳っており、徳島藩の特産物「藍」を作る職人が、大阪商人の餌食になっていました。
その商人が、表紙に描かれていた人物のようで、新しい藩主候補を探しに向かう忠兵衛が(最初に)船で出会った金國屋の金蔵です。
商人が武家を使うというのか、この男のいう話が、全く理解できない。このときの忠兵衛には不思議な話でしたが、物語の後半で…。
「下手すりゃ、この国もえげれすの商人に食われるかもしれまへんで」
「この国?」と、忠兵衛は復唱した。
「ええ、さいだす」
藩主になりたくなかった重喜ですが、第十代藩主となってからは“新しい法度”により藩政改革を一気に進めようとします。
一体、幾度目の休息であろうか。もう柏木忠兵衛にも分からない。二日前の昼から始まった衆議は、波乱がつづいた。三塁の制という忠兵衛らさえ聞いたことがない法度は、改革に賛成だった家臣たちでさえ反対に回るほどだった。夜を徹した衆議は、翌日になっても終わらず(略)混乱の続く徳島藩の改革は進むのか…。
「秘色(ひそく)」は、藍染めから生まれる特別な色を指し、物語の重要なテーマです。
その「秘色(ひそく)の契り」は…。
徳島藩の「藍」は…。
本書は物語で、史実とは異なる部分もあるでしょうが、“蜂須賀重喜の行った再興(改革)”が、現代の日本経済、日本社会に求められている気がしました。
どこかに隠れている“現代の重喜と四羽鴉”を見つけ出すときではないでしょうか。
映画化、ドラマ化が楽しみな作品でした。お薦めの物語です。
目次
一章 末期養子
二章 五社宮一揆
三章 船出
四章 明君か暗君か
五章 蝿取り
六章 呪詛
七章 謀略
八章 密約
九章 藍方役所
十章 血の契り
十一章 主君押し込め
十二章 空の色
【関連】
◇木下昌輝@歴史エッセイ本4月発売!! (@musketeers10)( X )
◇直木三十五賞(公益財団法人日本文学振興会)
◇とくしまヒストリー ~第22回~(徳島市公式ウェブサイト)
Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)
│読書
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