陽のはじめてのひとりごはん
馬たちにエサをやるとき、陽が生まれてからは、楽を馬房に入れて、詩と陽は一緒に食べさせていた。
馬たちは、群れができると、上から下まで順位が決まってしまう。
みんな一緒にエサをやろうとすると、上の順位の馬が独り占めしてしまうことがある。
楽と詩では、詩のほうが順位が上で、2頭一緒にエサをやると、詩が楽を威嚇して、エサを独り占めしてしまう。
陽は、これまでは問題なく詩と一緒に食べていた。
ところが最近、詩は陽のことも時々威嚇するようになった。
陽も大きくなれば、群れの一員として、ボスの詩には遠慮しなければならなくなる。
というわけで、陽の新しい飼い桶を買った。
これからは、3頭別々にエサをやろうと思った。
日曜の朝、楽と詩をそれぞれの馬房に入れて扉を閉めた。
3頭それぞれの飼い桶にエサを入れた。
3頭ともすぐに食べはじめた。
ところが、陽はすぐに落ち着かない様子をみせた。
馬房の扉は閉めてあっても、入れないだけで、楽と詩は目の前に見える。
それでも陽は、不安そうにウロウロしはじめ、エサどころではないようだ。
普段はヤンチャで我が物顔の陽。
意外な一面を見た気がした。
気が小さい楽の子だなと思った。
仕方なく、陽のひとりごはんは諦め、詩の馬房の扉を開けると、陽は自分のエサを残して、詩の馬房に入って一緒に食べはじめた。
落ち着かない陽
お父さんお母さんを見つめる陽
陽のエサは、あとで詩が食べてしまった。
ボクはひとりごはんはまだ結構ですから…。
なんだかしおらしい雰囲気になっていた。