hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

A Good Girl’s Guide to Murder (Holly Jackson) - 「自由研究には向かない殺人」- 273冊目

ジャンル: 小説(推理・ミステリー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆


 現代口語のセリフ回しにあまり慣れておらず、読み始めの頃には少し時間がかかっていましたが、楽しんで読めました。 スラングとまでは言えないのでしょうが、ノンフィクション洋書だけ読んでいては知り得ない単語がいっぱいです。 主人公に迫り来る危機を描いた後半の怒涛の展開には圧倒され一気に読了。

  粗筋を少し。
 イギリスのとある町で5年前に起こった女子高生殺人事件。 犯人は当時、殺された彼女Andieとつき合っていたボーイフレンドのSal。 犯行を悔やんだSalはその罪の責めを負うべく遺書を残して首吊り自殺をした。その後、殺されたAndieの親は離婚し家族は散り散りバラバラ。 一方、殺人者であるSalの家族は事件後、人々の目を避けるようにひっそりと息を潜めてその町で暮らし続けていた。この風化した事件に新たな光を与えるべく取り組んだのが女子高生のPip。 幼い頃にSalと親しかったPipは、この殺人犯像と優しかったSalとのイメージがどうしても結びつかない。 納得が行かない彼女は、なんとこの事件の再検証を自身の高校の自由研究の課題として取り上げたのだ。 殺人者の汚名を晴らしたいSalの弟Raviと素人探偵コンビを組んだPipは、事件の真相解明に乗り出したのだった。
(2019年発刊)


メモポイント
⚫︎ 真犯人の手掛かりに少しずつ近づいていたPipとRavi。だがある日突然、Pipは「この事件から手を引く、興味が無くなった」と相棒のRaviに告げる。その心変わりに納得いかないRaviは精一杯の説得を試みるも、Pipは顔を会わそうともしない。 ついにRaviはPipに毒づき捨て台詞を吐きケンカ別れする。しかしあまりにも不自然なPipの急な態度の変化についてRaviは一晩よく考えた。そしてただ一つ辻褄の合うある推論にたどり着いた。翌日、RaviとPipの再会のシーン。
 「もうおしまいと、あれほど言ったのになぜ戻ってきたの?」と悲しげなPip。
 「僕はあれから一晩考えたんだ」とRavi。「文字通り一晩中だ。そしてやっと君の態度に辻褄の合う唯一の理由を思いついたんだ。僕には分かる。僕は君のことをよく理解している、そしてそれはたぶん間違いないはずだ」

 ‘Um . . . I,’ Pip stuttered, looking for clues in his face. ‘I don’t understand why you’ve come back.’
 He took a small step towards her. ‘I thought about it all night, literally all night; it was light outside when I finally slept. And there’s only one reason I can think of, only one thing that makes sense of this. Because I do know you; I wasn’t wrong about you.’
 ‘I don’t –’ ‘Someone took Barney, didn’t they?’ he said.
  ‘Someone threatened you and they took your dog and killed him so you would stay quiet about Sal and Andie.’
 The silence in the room was buzzy and thick.
  She nodded and her face cracked with tears.
 ‘Don’t cry,’ Ravi said, closing the distance between them in one swift step. He pulled her into him, locking his arms round her. ‘I’m here,’ he said. ‘I’m here.’


 んで、本作の惜しい点。
 「チェーホフの銃」という言葉がありますが、戯曲や小説を書く人に対してチェーホフが示した心構えで、「もし、第1幕から壁に拳銃をかけておくのなら、第2幕にはそれが発砲されるべきである。そうでないなら、そこに置いてはいけない。」というものです。 その例に習うと、この話ではまるであちこちに「銃」や「ナイフ」が置きっ放しになっているようで、Pipが真犯人に迫る過程でたくさんの伏線風のエピソードが出てくるのですが、回収されないまま終わっています。「えーっ、それならあの人の意味ありげな行動はなんだったの?」と。 ですので、この点は惜しかったかなと感じましたが、ハラハラのストーリー展開や登場人物の心理描写も上手く読後感も爽やか。 ベストセラーになったというのも納得の一冊でした。

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