僕だけが正常な世界

作・演出: 水野美紀
出演: 崎山つばさ、鳥越裕貴、安里勇哉、定本楓馬、浅野千鶴、入手杏奈、竹内真里、江藤萌生、西野優希、猪俣利成、武藤心平、小口隼也、福澤重文、宮下貴浩、水野美紀、ノゾエ征爾
観劇日: 2022年12月20日(火) 13:00
上演時間: 2時間(休憩なし)
劇場: 東京芸術劇場 シアターイースト
チケット代: 8,500円(C列) [パンフレット代:3,500円]


【感想】

プロペラ犬は、2007年の旗揚げの時から応援しています。
2010年の番外公演『アウェーインザライフ』だけは、チケットを取りながらも、仕事のトラブルで急遽行けなくなりましたが、それ以外は欠かかしたことがありません。
昨年(2021年)の『2つの「ヒ」キゲキ』も観に行きましたが、プロペラ犬としての公演は実に6年ぶり、『珍渦虫』以来。
待ってました!

ミチル(崎山つばささん)は、幼い頃から繊細な感覚の持ち主で、それ故、周りとうまくやっていくことができません。
友達の元気(定本楓馬さん)や彼の妹・あかり(江藤萌生さん)と一緒に自分の居場所を探していましたが、なかなか見つけることができず、行きついた結論は……。

オープニングでは、鳥越裕貴さんがストレッチマットを持って登場します。
彼は、シアターイーストと間違えてウエストの方にやってきてしまった役者という設定。
彼の目の前で、ミチルたちの物語が始まるという構成になっています。

いやぁ、それにしてもテーマが重い!
プロペラ犬って、初めの頃は"ライトなコメディ・ホラー"みたいな(しかもコメディ色がかなり強めの)作品が多かったですが、第5回の『やわらかいパン』あたりから、かなりシリアス路線にシフトしてきました。
それでも前半は笑わせてくれて、徐々に……っていうパターンでしたが、今回は最初からヘヴィな感じで。

ミチルたちが、自分の居場所探しをする時のモチーフとして、あかりが好きな絵本『青い鳥』が出てきます。
そこに登場する妖精たちが、何とか場を和ませて、笑える場面を作ろうとしてるんでしょうが、純粋に笑えないというか。

主人公のミチルは、今で言えば"発達障害"ということになるんでしょう。
でも、そもそも"発達障害"って、誰基準? "普通"って、何と比べて?
自分にとっては、自分以外が変で、だから皆がそれぞれ『僕だけが正常な世界』って思うことになるんでしょう。
周りからはミチルがどう見えるのか? ミチルからは周りがどう見えるのか?
ミチルの苦悩が痛いほど伝わってきて、そこら辺は丁寧に描かれていたかな。
ただ、どうしてもミチル目線に比重が置かれるので、周りの人たちが、かなり"悪者"みたいになっていて。
でも実際、そういう場面に遭遇すると、私も多かれ少なかれそういう態度をとってしまうだろうなと思うと、複雑な気持ちになります。

それを劇の外から俯瞰的に見せる役目として、シアターイーストと間違えてしまった鳥越裕貴さんを持ってきてるんでしょうか。
それとも、怒りの捌け口が向かう先は、いつだって無関係な第三者であるという悲劇を表していたんでしょうか。

クライマックスでは、何とか救いのある結末へ向かわせようとしていましたが、かなり強引だったかなあ。
2.5次元で活躍されている俳優さんたちを使っているとはいえ、テニミュのパロディ的なことで解決しようとするのは(私は元ネタを知らないので、よく分かりませんでした)、ファンサービスなのかもしれませんが、ちょっと安易でしたねえ 笑。
6年ぶりということで、肩に力が入ってたんでしょうか。

原点回帰して、またライトで笑える作品が観たいなあ。
もしくは逆に、笑いのない、思い切りシリアスに振った作品か。
いずれにしても、今後も期待しています!