風子は初めてのデートで悪酔いし、しかも処女を捨てた。
彼の愛し方は優しく、とても大事にされていると感じたが、最後に避妊具をつけないままに彼女の中に放った。
一瞬、何が起きたのかよくわからなかった。
ただでさえ初めての出来事で、そして自ら飛び込んだ状況だったがそれでもやはり、頭の中がぐるぐると回りだした。
驚きを隠せないでいると、
「実は僕は無精子で、それは結婚して数年して分かったんだ」
「結婚して…」
風子は耳を疑ったし、あまりにもショックで声にも出せないでいた。
確かに、年齢的には彼女よりかなり年上だから、妻子がいてもおかしくはない年齢である。
しかし、ラブレターをくれ自分に一目惚れしたと言いデートにも誘い、そして肉体関係まであっさりと結んだ。
だから、甘いと言われようが、まさか結婚しているとは夢にも思わなかった。
今時は、ラブレターに結婚してるけどと書かずにお誘いをしても、それが普通なんだろうか。
いろいろと考えたけど、自分の甘さにいてもたってもいられない、そんな気持ちになった。
風子は小さい時に公園の砂場で、一心不乱に砂の城を見事に作り上げ満足感に浸っている時に、心ない小学生の高学年の男子に走って来て踏み潰され崩れ去った、あの時を思い出し、まさにあの時と似ていると思った。
そう言われてみれば、自分は満足感や幸福感に浸ると、直ぐに何か良くないことがやってきて打ちのめされた。
「やっぱりか…」
そう言い、いつも辛酸を舐め涙を飲んできた。
今度もそうなのだと、諦めるしかないと即座にそう思った。