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私たちが小学生の頃、

スーパーカーブームというのがありました。

 

サーキットの狼」という漫画が火付け役でしたが、

高度成長期とはいえ、日本は今よりも貧しい時代だったし、

そう実物の名車に出会えることはなく、

専門雑誌などで、イタリアや西ドイツの
自動車メーカーや車名をこぞって覚えたり、

駄菓子屋で、カードや消しゴムを買って集めたりといった楽しみ方でした。

 

そんな中で、大きくなったらとにかく免許取って車に乗りたい。

それも格好いい車に乗りたい。殆どの男の子はそう考えていましたし、

我々は、そんな気持ちが未だに残っている世代です。

 

 

 

さて1970年代当時、

特に僕らが過ごした田舎町でも比較的たくさん走っていて、

子供にもわかりやすく格好いい車と言えば、

せいぜい日産のフェアレディZくらいだったでしょうか。

 

 

ある土曜日の下校時間。

当時はもちろん土曜も小学校が半日開校してましたので、

昼過ぎくらいのこと。

昇降口を出たところ、先の校門前の県道で、

信号待ちで停車している一台の車。

少し距離がありましたが、白い横面が見えていました。

 

「あれ何?」という一人の声が上がると、

「Zちゃうん?」と答える子供。


 

※上の写真がフェアレディZ。今見ればこれも相当なロングノーズだが。
 

「そやけど、えらい前長いで。」

「?!‥‥」

 


 

その瞬間、そこに居合わせた子供たちは皆、

一斉に県道に向けて走り出していました。

そして交差点に群がりました。

 

「トヨニセや!」

 


 

 それはトヨタ2000GTという車。

トヨタヤマハの共同開発という異色性、007のボンドカーでもあり、

当時でも破格の値段と、総生産台数が337台という希少性から

幻と名車と言われた日本唯一のスーパーカーでした。

 

「なぜ、こんなところで?」

もちろん公道で見ることなど初めてのことです。

興味津々で子供たちが熱い視線を送っていると、

運転手が気を良くしたのか、

昼間にもかかわらず、リトラクタブルヘッドライトを

ガバっと上げて、あのカエルみたいな特徴的な顔を見せると

ピカッと点灯させてくれました。

 

途端に、子供たちは「オー!!」と声を上げて大興奮。

そして、信号が変わると2000GTは「ブオーンっ」と格好よく去っていきました。

 

古き良き昭和時代の一コマでしたね。

 

 

最近の若者は、車離れということをよく聞きます。

 

少子化もあるでしょうが、

バブル崩壊以降、自動車は道具としての機能だけを追求してきたようで、

車に格好よさを求めなくなっているのが一因ではないかと思います。

 

メーカーにとっても、合理性や機能の追求というのは、諸刃の剣で、

逆に用が無ければ、まるで必要のないものになってしまうのではないでしょうか。

たとえば、住まいが都心で交通の便が良ければ、

わざわざ車を所有する必要などないことです。

 

ただの道具ではなく、嗜好品としての価値を見出してこそ、

所有する楽しみもある。

決して実用的で無くても

骨董品やアンティーク雑貨に魅かれる気持ちに近いものがありますね。

 

なるほど、片や旧車が密かなブームというのも頷けます。

 

では、今日はこのへんで。

 

レトロな雑貨屋こっとり堂