2024年9月21日から12月22日まで開催された、たばこと塩の博物館「嗅ぎたばこ入れー人々を魅了した小さな容器」の鑑賞レポです。
もう終わってしまった展示で申し訳ないですが、同博物館では数年ごとに嗅ぎたばこ入れの展示を開催しているので、ぜひこちらをご参考に次を楽しみにしてください。
嗅ぎたばこと嗅ぎたばこ入れ
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「嗅ぎたばこ」とは、粉状にした葉を鼻から吸い込むたばこの嗜み方。アメリカ大陸が起源とされており、その後歴史に伴う人の移動によってヨーロッパや中国へ伝わったそうです。他にもモンゴルやチベット、ウズベキスタン等様々な地域で嗅ぎたばこの伝統的な風習が見られます。
「嗅ぎたばこ入れ」とは、嗅ぎたばこの携帯用・保管用に作られた容器です。主には箱型の「スナッフボックス」とボトル型・壺型の「スナッフボトル」があり、中国では後者を「鼻煙壺(びえんこ)」と呼んでいます。
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鼻息も荒く「鼻煙壺!鼻煙壺!」と入館した鼻煙壺ファンの私も、あまりのめくるめく鼻煙壺に、出てきたときには「ビエンコ…ヨカッタ…ビエンコ…スゴカッタ…」と足ももつれるパンチドランカーに。
さっそく、嗅ぎたばこ入れの繰り出す美のパンチの一端をお届けしたいと思います。
ヨーロッパの嗅ぎたばこ入れ
アメリカ大陸からヨーロッパに渡った嗅ぎたばこは、特にフランスとスペインで盛んになったそうです。
フランスでは18世紀以降、金や銀、宝石を使った豪華な嗅ぎたばこ入れが多く製造され、上流階級ではステータスとなりました。
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iPhone13のカメラ機能では太刀打ちできない、小さなサイズに緻密な装飾が施された嗅ぎたばこ入れの数々。(画像クリックで拡大します)
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パッと見ると白いラインに見えるものが、単眼鏡で見ると真珠の列だったりと、その豪奢さと精密な装飾にはため息が出ます。
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こちらはドイツ製のスナッフボトル。けっこう大きいです。
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もちろんドイツにもいろいろな種類の嗅ぎたばこ入れがありますが、「いっぱい入って実用的!」と言わんばかりの大きさにちょっとお国柄を感じてしまいました。
日本の嗅ぎたばこ入れ
日本では嗅ぎたばこはあまり流行らなかったそう。
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日本製の嗅ぎたばこ入れは主に輸出用に作られており、上の画像のような象牙や漆を用いたものに人気がありました。
チベット・ウズベキスタンの嗅ぎたばこ入れ
チベットの嗅ぎたばこ入れは、骨製に金属補強を施したものや金属製のものが見られます。
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放牧や狩猟生活のなかでは、壊れやすいガラス製よりも丈夫な金属製のほうが実用的だったからだそう。
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ウズベキスタンでは嗅ぎたばこを「ナス」と呼んでおり、嗅ぎたばこ入れは「ナスカドゥ」と呼ばれます。
「ひょうたんを利用した壺型のものなど、様々な種類がある」との説明がありましたが、これがそのひょうたん製ではないでしょうか。丸みがあって可愛いですね。
中国の嗅ぎたばこ入れ 鼻煙壺
中国にヨーロッパから嗅ぎたばこが渡ったのは17世紀頃とされています。箱型がメインのヨーロッパと異なり、中国では壺型・瓶型の嗅ぎたばこ入れ「鼻煙壺」が主流となりました。
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10cmほどの大きさにこの緻密な装飾!素晴らしい根気と技術です。
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象牙や琥珀などの外側を装飾するだけでなく、内側もくり抜くのは非常に高い技術が必要とのこと。いつまで眺めても飽きない美しさと、作った人の熱意のオーラがあります。
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磁器製鼻煙壺のなかには青花や釉裏紅も。みんなだいすき景徳鎮窯も、この時代は官窯として政府より様々な指導や援助を受けつつ、洗練された鼻煙壺を生み出せるようになっていったそうです。
下の画像は、嗅ぎたばこを保存する「親壺」や、嗅ぎたばこを鼻煙壺に移すための「漏斗」「長匙」が揃った一式。
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「親壺」は青花釉裏紅のような気が・・・いつも身近に置く鼻煙壺はもちろん、周辺道具の装飾にもこだわりが感じられるのは流石です。
内画鼻煙壺
19世紀の初めに生み出されたという「内画鼻煙壺」
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瑪瑙やガラス製の鼻煙壺の内側に筆を差し込み、裏返しに描く手法で装飾した鼻煙壺です。
この小さな鼻煙壺にこの猫ちゃんたちを内側から手で描いたと思うと…ちょっと気が遠くなります。
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おそらくこちらと同じ方だったと思うのですが、会場内では鼻煙壺を内画で装飾する様子のビデオが公開されていました。
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製作者のサインも内側から裏返しに書かれていた…脱帽の技術でした。
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こちらは内画を描くための顔料や筆の展示。
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瓶の内側に差し込みやすいよう曲がっており、非常に緻密な細筆であることがわかります。
博物館の物販スペースやAmazonなどを見て驚いたのですが、意外に内画鼻煙壺ってリーズナブルなんですね・・・。こんな超絶技術を使っているんだから「もっと取りなよ!」と言いたい。
でも、超絶技術をマスターしてどんどん製品を作り、惜しげもなく安価で売ってしまうところが、中国の中国らしい底知れぬ部分なのかもしれません・・・
たばこと塩の博物館には、非常になんというか、資本を感じる豪華な常設展示もあるので、ぜひじっくりと時間を取れる日に訪問してみてください。
アクセス
公式サイト
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