【27話】「ある豪勢なお屋敷で」【web小説】 | 浅田瑠璃佳@物書きブログ✡✡言の葉の楽園✡✡

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結婚式が終わった、その夜。


花梨那(かりな)は和雄(かずお)の部屋の窓から外を眺めていた。


対して和雄は、自身のベッドに腰掛け本を読んでいる。

「……疲れたわね。」

笑顔で振り向き、和雄に話しかける花梨那。

「……。」


和雄は彼女を見ることもなく、本に目を落としたまま何も答えない。


そんな和雄をしばし無言で見つめてから、花梨那は和雄の隣に腰掛ける。


そして先ほどの柔らかな笑顔を呼び起こし、彼女は和雄に話しかけた。


「本当に本が好きなのね。」

「……。」

「それ、なんの本なの?」

「……トルストイの、『アンナ・カレーニナ』」

「それ、悲劇よね。 結婚式の後に読んでて疲れない?」

「……別に。」

花梨那は和雄に寄りかかり、自分の体をぴったりと彼につける。

和雄は依然、本から目を離さずにいる。

「ね? もうそろそろお休みになりませんか?」


花梨那の問いに、和雄は体勢を変えることもなく答える。


「……先に寝ていてくれて構わない。」

「……ダメよ。 一緒がいいの。」

「……。」

花梨那は和雄の方を向き、真っ直ぐに言葉をかける。


「私はあなたの妻なんだから。」


和雄はやっと本から目を離し、花梨那の方を見る。



しばし見つめ合う二人。



ふいに花梨那が目を閉じ、和雄に口づけようとした。


次の瞬間、和雄は彼女の両肩に手をかけて彼女の動きを制した。


花梨那は目を見開き、驚いて和雄を見る。



互いの呼吸を感じられるほどの距離で、目を合わせたままの二人。



花梨那は、動揺した。



自分が今日まで思い描いていた結婚というものが、脳内でガラガラと音を立てて崩れ落ちてゆく。



「(……この人は、何を見ているの?)」


和雄が、自分の夫が見つめる先には、確かに自分がいるはずなのに。



彼の目は……。




まるで、自分を妻としてはおろか、人間としても認識していないかのような無機質な目で、花梨那を見つめていた。


「(……これが、自分の妻に対する夫の目なの?)」


和雄の様子に、花梨那は恐怖さえ感じていた。


しばしの対峙の後、和雄は花梨那から体を離して口を開いた。



「……ベッドは一人で使ってくれて構わない。 ゆっくり休んでくれ。」

「……え?」

困惑する妻をそのままに、和雄は本を抱えて部屋を後にした。



花梨那は、しばらく呆然としていた。



だがふいに彼女は、母の言葉を思い出す。



「あなたは素晴らしい家に嫁ぎ、立派な跡継ぎを産むのよ。」


その言葉が、花梨那を奮い立たせた。



To be continued



最新話27、非常に遅くなり申し訳ございませんでした赤ちゃん泣き

次回もどうぞお楽しみにニコニコ飛び出すハート



カメrurikaカメ