第18回ショパン国際ピアノコンクール 3次予選 第2日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

10月15日は、3次予選の第2日。

ネット配信を聴いた(こちらこちら)。

ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選出場者発表

第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が4月から9月へと延期

第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選免除の出場者発表

第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が2021年4月から2021年7月へと延期

予備予選 第1日

予備予選 第2日

予備予選 第3日

予備予選 第4日

予備予選 第5日

予備予選 第6日

予備予選 第7日

予備予選 第8日

予備予選 第9日

予備予選 第10日

予備予選 第11日

予備予選 第12日

1次予選 第1日

1次予選 第2日

1次予選 第3日

1次予選 第4日

1次予選 第5日

2次予選 第1日

2次予選 第2日

2次予選 第3日

2次予選 第4日

3次予選 第1日

 

 

 

 

 

以下、曲はいずれもショパン作曲である。

 

 

1. Leonora ARMELLINI (Italy, 1992-06-25)

 

- Polonaise-Fantasy in A flat major Op. 61

- Mazurka in E minor Op. 41 no 1

- Mazurka in B major Op. 41 no 2

- Mazurka in A flat major Op. 41 no 3

- Mazurka in C sharp minor Op. 41 no 4

- Sonata in B flat minor Op. 35

 

ピアノはファツィオリ F278。

明るい音色と、どっしりした情熱とが特徴。

ただ、幻想ポロネーズなどどっしりしすぎて流れが重くなっている。

ソナタは情熱的だが、第1楽章第1主題と第2主題のテンポが違いすぎるなどソナタらしさが薄く、また技巧面でも緻密とは言い難い。

 

 

2. J J Jun Li BUI (Canada, 2004-06-10)

 

- Ballade in F major Op. 38

- Mazurka in G minor Op. 24 no 1

- Mazurka in C major Op. 24 no 2

- Mazurka in A flat major Op. 24 no 3

- Mazurka in B flat minor Op. 24 no 4

- Rondo à la Mazur in F major , Op. 5

- Piano Sonata in B minor Op. 58

 

ピアノはシゲルカワイ EX。

反田恭平の優勝を最も強く脅かしうる人物ではないだろうか。

この2人は、音楽のドラマ性の表出、音の圧倒的な迫力という点で、他に抜きんでている(堂々たる風格の反田恭平、スマートな威力のJ J Jun Li BUI、といったところか)。

反田恭平も弾いたバラードやロンドは引けを取らない出来だし、ソナタ終楽章の凄味に至っては圧巻というほかない。

 

 

3. Michelle CANDOTTI (Italy, 1996-05-18)

 

- Ballade in F major Op. 38

- Scherzo in B flat minor Op. 31

- Mazurka in A minor Op. 59 no 1

- Mazurka in A flat major Op. 59 no 2

- Mazurka in F sharp minor Op. 59 no 3

- Sonata in B flat minor Op. 35

 

ピアノはスタインウェイ 479。

2次では微温的に感じた彼女だが、今回は思ったより情熱的で良い。

マズルカも明るい音色がよく活きている。

ただ、スケルツォの再現部直前の展開部風の部分や、ソナタ第2楽章など、技巧面で危うい箇所もある。

 

 

4. Yasuko FURUMI (Japan, 1998-02-05)

 

- Rondo in E flat major, Op. 16

- Mazurka in A minor Op. 59 no 1

- Mazurka in A flat major Op. 59 no 2

- Mazurka in F sharp minor Op. 59 no 3

- Piano Sonata in B minor Op. 58

 

ピアノはスタインウェイ 479。

なんと清廉なショパンだろう。

極度に洗練されていながら、自然体でわざとらしさが全くない。

ロンドはそのサロン的な浮薄さを、マズルカはその民族的な土臭さを飛び越えて、純粋な美に達している。

そして、ショパンコンクール in Asiaでの感動がよみがえるソナタ(その記事はこちらこちら)。

上記のJ J Jun Li BUIのような凄味はむしろ良しとせず、あくまで「ソナタ」としてのこの曲そのものに仕えるような姿勢。

ストレートに引き締まった第1楽章といい、清流のように美しく流れる第2楽章や終楽章エピソード部といい、この曲の理想の演奏である。

今回小さなミスが散見されたが、どうか許容してほしいところ。

 

 

5. Alexander GADJIEV (Italy/Slovenia, 1994-12-23)

 

- Polonaise-Fantasy in A flat major Op. 61

- Mazurka in B major Op. 56 no 1

- Mazurka in C major Op. 56 no 2

- Mazurka in C minor Op. 56 no 3

- Sonata in B flat minor Op. 35

 

ピアノはシゲルカワイ EX。

ロマン的だが浸りすぎない、一歩引いて眺めたような余裕がある。

ただ、少し諧謔的というか、ソナタなど全楽章がスケルツォ風に聴こえるきらいはある(そのぶん第2楽章は真にスケルツァンドだが)。

また、タッチの滑らかさや洗練度に難がある箇所もある。

 

 

6. Avery GAGLIANO (United States, 2001-07-16)

 

- Sonata in B flat minor Op. 35

- Mazurka in B major Op. 56 no 1

- Mazurka in C major Op. 56 no 2

- Mazurka in C minor Op. 56 no 3

- Scherzo in B flat minor Op. 31

 

ピアノはスタインウェイ 300。

安定した技巧と透明度の高い音を持ち、丁寧で穴があまりない。

ただ、音楽性があっさりしていて、クライマックスでも最強音を出さず、迫力に欠ける分、別の魅力があるかというと難しいところ。

ソナタ第2楽章やスケルツォなどももっとアグレッシブさが欲しい。

 

 

7. Martín GARCÍA GARCÍA (Spain, 1996-12-03)

 

- Prelude in A flat major Op. 28 no 17

- Prelude in E flat major Op. 28 no 19

- Prelude in F major Op. 28 no 23

- Piano Sonata in B minor Op. 58

- Mazurka in G major Op. 50 no 1

- Mazurka in A flat major Op. 50 no 2

- Mazurka in C sharp minor Op. 50 no 3

- Prelude in C sharp minor, Op. 45

- Waltz in F major Op. 34 no 3

 

ピアノはファツィオリ F278。

分厚くて明るい音を持ち、長調の前奏曲数曲で開始する、最後はワルツで締めるなど、選曲含め独自のリサイタルに仕立てている。

タッチは洗練からは遠いが、ソナタ第2楽章やワルツなど意外なキレやノリをみせる箇所もあり、ギャップが楽しい。

並み居る巧者たちの中からあえて選ぶかというと難しいところだが。

 

 

8. Eva GEVORGYAN (Russia/Armenia, 2004-04-15)

 

- Fantasy in F minor Op. 49

- Mazurka in B flat major Op. 17 no 1

- Mazurka in E minor Op. 17 no 2

- Mazurka in A flat major Op. 17 no 3

- Mazurka in A minor Op. 17 no 4

- Sonata in B flat minor Op. 35

 

ピアノはスタインウェイ 479。

幻想曲、彼女ならばさぞ情熱的かと思いきや、意外に普通か。

マズルカも悪くはないが、第1日の進藤実優の魂の吐露のような同曲演奏を聴いた後では分が悪い。

ソナタは彼女の本領が発揮できている感があるが、それでもこれまでのビハインドを挽回するほどかと言われると、どうだろうか。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは

 

2. J J Jun Li BUI (Canada, 2004-06-10)

4. Yasuko FURUMI (Japan, 1998-02-05)

 

あたりである。

次点で、

 

3. Michelle CANDOTTI (Italy, 1996-05-18)

5. Alexander GADJIEV (Italy/Slovenia, 1994-12-23)

6. Avery GAGLIANO (United States, 2001-07-16)

7. Martín GARCÍA GARCÍA (Spain, 1996-12-03)

8. Eva GEVORGYAN (Russia/Armenia, 2004-04-15)

 

あたりか。

さすがはショパンコンクール、他のコンクールならファイナルでも十分に通用するハイレベルな3次予選であり、優秀な奏者たちをばっさばっさと外さなければならないのは実に悩ましい。

 

 

次回(10月16日)は3次予選の第3日。

3次予選の最終日である。

 

 


音楽(クラシック) ブログランキングへ

↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。