モグラ女に樺太からきた部族...カオスで不気味な見世物小屋から考える旅芸人の生き方

これは久しぶりにすごいものを見た。いや、見てしまったという方が正しいだろう。

2022年11月16日、新宿の花園神社で行われている酉の市を訪れた。そこで鳥居の真横に設置された見世物小屋のプリミティブな雰囲気に惹かれた。入り口のお姉さんの調子の良い掛け声に誘われて抗えず、吸い込まれるようにして有料エリアに入った。

 

潰れそうなトタン小屋の中にはお客さんがひしめき合い、息を飲む表情で舞台を見つめていた。時おり、ええ!という驚きや、きゃー!!という女性の悲鳴が響き渡る。そこで起きている出来事に自分の知覚を疑わざるを得なかった。

 

インドから来たという女は、鎖を鼻から入れて口に抜けさせ、それでバケツを持っていた。その後、5本のろうそくを口に入れてかき消した。

 

顔がボロボロで傷だらけのOLは、自分の体にひたすらホチキスを打ち込んだ。お客さんにもホチキスを打ち込ませていた。ビシッと決めた服装には血の跡がびっしり..。

 

タコ女は軟体すぎて、タコのような動きをしていた。昨日デビューした新人らしい。

 

モグラ女は暗い地底で生活していたというが、目が虚ろで、ウジ虫のようなものを食べていた。きちんと舌で噛み砕かれている様子を見せた。

 

樺太からきた部族はドライアイスを口に含みその煙が口から立ち込める姿がシュールすぎた。舌で扇風機の動きを止める技も見せていた。

 

あまりにも身体能力が並外れている。自分の身体能力など、この程度かと思わざるを得ない。江戸時代には見世物小屋が300軒もあったというのだから驚きだ。いくら身体能力が並外れているとはいえ、体に負担がかかることは言うまでもない。数十分に1回の感覚で自分の出番が回ってくる。

 

手塚治虫のキリヒト賛歌という漫画で、天ぷら油に衣つきの身体で入り揚げられる芸をする女が自らの芸で死すという話があるのだが、究極的な話でいくとあれを思い浮かべざるを得ない。身を削って得られるものは何なのだろうか。

 

見世物化された人間が自らの身体をさらし、生を全うする様は、どこか哀れさを彷彿とさせ、江戸時代に貧困が理由で諸国を巡業せざるを得なかった旅芸人の系譜を垣間見ざるを得ない。しかし、この芝居を通して本当の意味での幸せを掴みとっている人間もいるのだろう。どれだけ気味悪がられても、悲鳴を上げられても、その狂気的な自分をさらけ出すことへの快感を感じる人は少なからずいるはずなのだ。

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