感想
昨年のH3打ち上げ失敗は、けっこうショックだった。そのいきさつをまとめた番組を「コズミックフロント」でやっていたが、
主に打ち上げ中止に関わる部分の説明に終始し、打ち上げ失敗原因への掘り下げには乏しかった。
まあ失敗から3ケ月かそこらだったし。
今回はH2から定評があったシステムにもメスを入れたという。
そこに、自分らの衛星をボツにされた「だいち3号」の関係者が協力に名乗りを上げた。
受ける側も辛いよな。まさか断れないし・・・
同じJAXAの中での話だから、そう無理に盛り上げる必要もないんだけど。
NHKの好きな「プロジェクトX」臭がプンプンするな。
しかしここから技術的な話。スイッチON-OFFで異常電圧が出ると言うけど、それ「当たり前」のこと。蛍光灯のグローランプは、点灯時に接点を開閉することで、瞬時に高電圧を作ってランプを点灯させるもの。JAXAの人間はそんな常識もないのか!
びっくりしたなー、もう。
本当に、日本の技術って大丈夫か?
それからもう一つ思うのは前回失敗の時、どうして280億もかけて作った衛星を新開発の1号機に搭載したのか。
何をおいても1回目には注意すべきだった。
内容
3/17。日本の新しい大型ロケットH3の打ち上げが成功した。
日本の宇宙開発の未来を担う。
昨年3/7。最初のH3は発射途中で破壊された。
完璧に仕上げた筈のロケット。何が失敗したか。現場に密着。
3/末に行われた人工衛星見本市。ロケットに注目が集まる。
中でも「スペースX」の発言。「今年148基の打ち上げ予定」
アメリカと中国はこの5年で倍増。日本は6位。
各国が競い合う大型ロケット。
衛星は重くなる傾向。物資、人を運ぶ未来。
日本のこれまではH2AとH2B。成功率98.2%。
打ち上げ1回の費用は100億。
アメリカは1基75億。これでは競争に負ける。
H3は打ち上げコスト50億を目指す。JAXAとMHI(三菱重工)の共同開発。その傘下に150社以上が連なる。
9年がかりでエンジン開発。
パワーアップし全長57m。積載重量は従来の1.3倍。
そして2023/3/7に打ち上げ。2段目エンジンに着火せず自爆。
開発責任者の岡田匡史は15分間呆然とした。
何故着火しなかったのか?手掛かりは地上データ。
2段目エンジンの電流、電圧異常・・故障の木解析(FTA)
原因を全て書き出し一つづつ潰して行く(全て検証)
JAXAとMHIで互いに抜けがないかの議論(思いが噛み合わず)
部品は全て厳しい検査を通って来た。予想外の事が起こった。
原因の絞り込みが出来ず月日が流れる。
H3の打ち上げは2027年までに7基打ち上げ予定だったが全て延期。
世界では次々と打ち上げられ、日本は世界の宇宙競争から脱落。
今後参入が厳しくなる。
そんな時に究明を助ける助っ人が。
一通のメール。「役に立てるかも知れない」
送り主は前回の打ち上げに搭載していた「だいち3号」の担当者。川北史朗他3名。
人工衛星で電気的故障の経験が豊富。
そこで点火装置に着目。30年前に開発したもの。
これまで200回以上の使用実績がある。
点火装置ONの瞬間に規定以上に電圧上昇。点火ミスの可能性。
電圧、電流、ON-OFFタイミングを変えて1000回以上の検証。
それを筆頭に各要素を洗い出し、要因を7つまで絞り込み、その全てに対策を打った(失敗から170日)
11月。ロケット組立て。失敗は許されない。
岡田の自問自答。納得のいく2号機に仕上がったか?
岡田はロケット一筋35年。H2 8号機の失敗も経験。
その度に前進した。
2023/12月。新たな試験の実施。今回はシステムとしての確認。
MHI飛島工場で、実物大エンジンを真空空間に置いての試験。
非公開での2日間の試験が終了し「確信持てるデータが取れた」
2024/1/10、会見。
過去に実績のあるシステムの見直し。難しい判断・・・
2/2、超小型衛星積み込み。地球観測用2基と、「だいち3号」のダミー衛星。分離可能かの検証。
2/16、前日。発射場までの移動。
2/17、打ち上げ当日。新たに成功させるべき3つのこと。
①第2段エンジンの着火
②超小型衛星積の軌道投入
③ダミー衛星の分離確認
そして発射。
初段の終了後、第2段エンジンに着火。
そして超小型衛星の軌道投入、ダミー衛星の分離も成功した。
ようやく第一歩を踏み出した。
失敗で蓄積される経験は大きい。失敗で終わらせない。
神ではない。100%は、ない。
3月にワシントンDCで行われた「人工衛星国際見本市」
顧客を探そうと面談を重ねる日本スタッフ。
イギリスの通信衛星会社とも5年前からの案件を再開。
MHIの宇宙事業部長 五十嵐巌談
年間6機からスタートするが、数年以内に8機以上を目指す。日本政府は年間3機の使用なので残り5機が商用衛星に利用可能。
今、愛知の工場から次の3号機の発送が始まっていた。
課題はまだある。更なるコストダウン。競争力ある価格。
日本の宇宙開発の未来を開く挑戦は、続く。