火曜日の朝母の住む介護施設にゆくと、そこのひとから「昨日えらい怒り出しはってね、出てゆくってゆってはるんです。」と母の報告を受ける。母の部屋へ行って何があったかを尋ねながら車椅子の母を施設の職員さんの集まっているダイニングルームに連れて入る。

 

 

湿疹のかゆみに耐えきれず、皮膚科に行きたいと訴えたが、介護人が内科医の巡回がくる2週間後に見てもらってから皮膚科へ行きましょうと言って月曜日には連れ出してもらえなかったと言って怒っているのであった。その介護施設の副社長が私の横で、介護人がいきなり入居人を医者に連れてゆくことはできないのだと説明したが、母はこんなところは出ていって他の介護施設に移ると息巻いており、副社長に対して「あんたのその偉そうな言い方はなによ。私の痒さも理解できないくせで駄目だとかできないとか言わないでちょうだい。」と怒鳴っている。

 

「介護には介護ならではの規定があるから、何処へ移っても同じだと思うよ、お母さん。家族が居たら医者に行けたのに月曜に私がおやすみ取ったからこんなことになったのね。ごめんね。連絡してくれればよかったのに。」と言うと、「いや、あんたはお休みの日だったから連絡する気は無かったよ。この人達がもっと親身になってくれなきゃ駄目なのよ。」とまるで泣きそうな顔をしかめて施設に対しての憤りはやまない様子。

 

施設の上役が3人と私達2人のついたテーブル席の場面で、「ここを出るならひと月前に宣告しなければいけないけれど、とりあえず、今日か明日皮膚科に行こうか?」と尋ねると頷くので近所の皮膚科を副社長の持ってきた便利帳に掲載されていた皮膚科に母の車椅子を押して向かった。

 

道のりを半分ほど来たあたりで「お母さん、あそこほんとに出たいの?」と尋ねると母が、「いいや。あれぐらい言うといたらちょっとはマシに対応しよるやろ。」とすました顔でいう。

 

やはりすべてハッタリであった。