前回の更新から少し間が空いてしまいました
というわけで、有沢翔治さんから贈っていただいた文芸同人誌、『TEN』の感想を書いていきたいと思います。
なお、有沢翔治さんと『TEN』については前回の日記で紹介しておりますので、そちらをご覧ください
No.115 【斉藤明夫試論】
1930年に詩集『森羅万象』を刊行した詩人・脚本家である斉藤明夫の生涯と思想、作品の命題についてまとめた論文。乃木大将や坪内逍遥、カフカなどの歴史的に名高い人物、そして斉藤氏が患っていたという精神疾患についても言及されています。やや難解でしたが、『統合失調症の幻覚』という章に書かれていた、
1.真実は関係者しか知らない
2.関係者が真実を言っているとは限らない
この二言には、思わず唸らされてしまいました。たとえ嘘をついたとしても、それも舞台の上では演出になってしまうのでしょう。
No.116 【パズル】
サラリーマンが小学校時代の同級生の男と再会し、「没になったから」と彼が企画・制作したパズルを譲り受けるエピソードから始まる物語です。パズルをもらった息子はすっかり没頭し、絵が完成に近づくにつれて次々と怪奇現象が起こるように…。「すべての商品は人間を飲み込み、『異次元』へと誘惑する」という言葉の通り、だんだん日常から異次元へと誘われていく光景に、静かながらも恐怖心が煽られました。最後の世界観が崩壊していく様は圧巻で、『アッシャー家の崩壊』を連想させられます。息子や主人公たちがその後どうなったのか?その後が気になりますね。
No.117 ※売り切れのため手元になし。割愛※
No.118 【2019年5月1日】
今は懐かしき、平成~令和に切り替わる直前の頃の物語。ネタバレになってしまうのであまり詳しく言えませんが、『シュレーディンガーの猫』を連想させられるエピソードでした。つまりはAとB、異なる時間軸で2つの世界が存在した場合、「Aという時間軸の世界に進むのは【Aという時間軸の世界】に選ばれたからに過ぎず、自分が進まなかった【Bという時間軸の世界】も必ずどこかに存在する」という意味ですね。分岐点が発生する度に、毎回調整して交通整理をしているお2人にはもう「お疲れ様です」の一言しかありません。余談ですがこの話を読んでいて、塩鮭が食べたくなってしまいました。
No.119 【素晴らしき教科書】
近未来、紙によるテキストがなくなり、電子書籍による教科書のみで教育されるようになった時代。児童は1人ひとり、タブレット端末を支給されている世界です。そして電子書籍だと修正も容易なため、その単元を学んでいる真っ最中にまるっと内容が書き換えられていきます…。こんな学校やだ。テスト勉強も何回やり直せばいいのか…って感じだし。ただ、現在においても「今伝えられている世界史は【戦勝国】にとって都合の良い内容に書き換えられている」と唱えている人もいるし、本当のことは当時の人に聞かないと分からないでしょうね。
No.120 【よくあること】
安月給のサラリーマンが副収入を求め、知らず知らずのうちに“あるモノ”に手を染めてしまう話です。「今もらっている給料だけじゃ生活が厳しい」「せめて副収入があと3万円あれば…」と思っている方も、少なくないのではないでしょうか?この主人公もTwitterで見つけたアルバイトに応募していますし、「気がついたらやってしまっていた」という人もいるかも…。正直、身につまされる話だと感じました。お金も大事だけど、用心に越したことはないですね。
No.121 【伝染病】 ※テキストのみ。写真なし※
今もなお全世界を脅かし続ける「新型コロナウイルス」をテーマにした物語。名古屋で暮らす主人公が、中国の友人王氏にメールを送る形式で展開していきます。ちょうどスタート時が2020年1月下旬のため、最初はノンビリしていますが、その先は皆さんも知っての通りで…。「インフルエンザほど怖くない」「それほど脅威ではない」と、かつて言われていた時期を思い出しますね。家族がマスクやトイレットペーパーを買い占めようとしたり、この時期でも平気でパチンコに行ったり…といった展開が続くなか、ついに恐怖に満ちた出来事が起こります。オチは明確に語られていないので、ホラーというよりはテラーに近い作品だと感じました。
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以上が文芸同人誌『TEN』の感想でした。
この感想文を読んで、もし「自分もTENを読んでみたい!」と思った方は、下記までご連絡ください。編集部と連絡のとれる方に連携し、折り返しご連絡いたします。
Twitter:@amemiyayohko (または「天宮耀子」で検索お願いします)
mail:pochipochipochidayo@gmail.com
Gmailだと気づかないことも多いので、Twitterの方が返信確実です。
それではよろしくお願いいたします
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有沢翔治さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/
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