そして、Uは今日もモデル事務所の大きな部屋で、スタッフの指導を受けながら、最終確認としてウォーキングの練習を重ねていた。もうパリコレクションやミラノコレクションの予行演習という感じで、本番さながらのものだった。
スタッフ:「Yes, it is. You are great.」
U:「Practice every day.」
スタッフ:「You overcame again and again.」
スタッフがそう褒めると、Uは多少ではあるが、照れ臭さを感じていた。この時、左手の薬指にはダイヤモンドの指輪がはめられている。
→Close Up→その光り輝く指輪
それからも何度も最終確認として、ランウェイを想定したウォーキングが敢行された。ついに夢を掴んだUは心躍る気持ちだったし、結婚も決まり、何よりも日本にいる母も回復していることを知っていた。悪いことは時を待たずして連続的に来るが、良いこともまたバタバタとやってきた。アメリカに来て、初めて味わう成功の味だった。
そして、大きな部屋に社長のSが入ってきて、自分の目で最終的に確認をする。社長のSが手塩にかけて育ててきたUを温かく見守る。
S:「Looks nice. You are the very model.」
U:「I'm happy to hear that.」
S:「これからも幾多の困難があろうとも、もう弱音を吐くことなく、勇気をもって立ち向かってほしい。あなたならできるはずよ」
U:「Thank you very much. 」
S:「You should enjoy the two Collections in Europe.」
そう言って、SはUを送り出すと、Uはモデル事務所で束の間のひとときを過ごした。このことはもちろん、日本のモデル事務所の女性社長のNにも知らされていて、すでに祝電が届いていた。
27歳のU(V.O.):「こうして私はアメリカで、アメリカ人の獣医師と結婚し、パリコレクションとミラノコレクションに出演することになった。今までの私の努力が実った形となり、地下で風雪に耐えてきた反動で、地上に這い出た時は明るい光を浴びた。12月の冬から3月の春にかけての時期だった」
Uは今まで温かく見守ってきたモデル事務所の社長のSやスタッフらに感謝の言葉を捧げ、小さく笑いながら、右手を挙げた。
そして、飛行機で場所をアメリカからヨーロッパに移した。ヨーロッパの建築美が目を見張り、そのマダムのファッションセンスも気を引く。人々の美的感覚も優れていて、大通りを歩く人々の服装も高貴に映った。
→ヨーロッパの街並みをWide Shot
Uはここからモデルとしての第2章が始まると思っていて、少し落ち着かない気持ちもあるが、今日ここに夢を叶えるための第一歩を踏み出した。