▼米国株を割安だと発言するバフェット
ウォーレン・バフェットは、CNBCとの単独インタビュー(
「米国株はバブルではありませんか」と問われた際、
「米国株はバブルの領域にない。
長期金利が7-8%
米経済のダイナミズムは顕著で、
暫くはいかなる大統領のもとであっても順調に推移する」
米国株に投資している人から見ると、このバフェットの発言は
とても心強く感じます。
一方で、「株価の話をしているのに、
と感じた人も多いと思います。
金利と株価を直線に結びつけて説明すると、
少し話が飛躍してしまいます。
これを理解するのには、
「景気サイクル」と「債券価格と金利の関係」の2つの概念を
先に抑えておく必要があります。
▼そもそも、経済には「波」があります!
経済には波があって、好景気と不景気が交互に訪れます。
「景気が良い」、「景気が悪い」の意味は
世の中のお金回りの良し悪しを意味します。
景気=お金が世の中を回る勢い
経済の主役は、家庭と会社と政府の三者です。
そしてお金は、この3つの間を回っています。
「金は天下の回りもの」なんて言いますが、
実際にグルグルと回転しているというイメージを思い浮かべてくだ
好景気というのは、このお金の流れが速くて、
グルグル回転に勢いがあるということです。
世の中を駆け巡るお金の回転が速くなっているので、
同じ時間内に入ってくるお金も多くなります。
会社からの給料も多くなり、みんながたくさん買い物をします。
政府にもたくさん税金が入り、みんな、大喜びです。
逆に、
入ってくるお金が少ないと、みんな買い物をしなくなります。
会社にはいるお金も少ないから、給料も減ります。
政府に入る税金も少なくなり、みんながジリ貧になっていきます。
・好況期=お金のグルグル回転に勢いがある
・不況期=お金のグルグル回転に勢いがない
▼景気と金利の関係
経済には「好景気」と「不景気」の時期があり、
これらは交互に訪れます。
銀行の立場に立って、この交互に訪れる景気が良い時、
悪い時のそれぞれの場合において
どう行動しているのかを想像してみましょう。
景気が良い時は企業も個人もお金を借りるために銀行に殺到します
こういう場面において、
銀行は貸し出し金利を下げるでしょうか?
好況期の銀行は殿様のようなものです。
貸出金利を上げても資金を借りてくれるので、
反対に不況期になると、みんな、銀行に寄り付かなくなります。
貸出金利を思いっきり下げても、
誰もお金を借りてくれないという厳しい時期になります。
・好況期に入る→金利が上昇する
・不況期に入る→金利が下落する
▼債券価格と金利の関係
金利というのは債券価格によって決定します。
金利と債券価格はちょうどシーソーのような関係になっています。
<金利と債券価格はシーソーの関係にある>
(出典:大和証券)
上記の図を例にすると、
表面価格100円、表面利回り3%で売りに出された債券は
市場金利が4%に上昇すると、3%の債券の投資魅力が
薄れるので、債券価格が下落します。
反対に市場金利が2%に低下すると、
3%の債券の投資魅力が上がるので、債券価格が上昇します。
そのため、次のような関係が成立しているのです。
・金利が上昇する→債券価格が下落する
・金利が下落する→債券価格が上昇する
先程の景気サイクルの話とドッキングさせると、
次のようなイメージになります。
・好況期に入る→金利が上昇する→債券価格が下落する
・不況期に入る→金利が下落する→債券価格が上昇する
▼中央銀行の金利操作
金利には中央銀行の政策も関係してきます。
中央銀行は主に短期金利に働きかけて、
経済が安定的に成長していけるように調節しようとします。
景気が過熱しすぎると、バブルになってしまいます。
人間の欲望には際限がないので、お金回りが良くなってくると、
儲けるために我先にと
無謀な投資(設備投資、株式投資、不動産投資等)
グルグル回転に勢いがつきすぎると、
最後はバブルが弾けて大恐慌に突入してしまうリスクがあります。
そうならないように、中央銀行は長期的な視点に立って
短期金利を上昇させて、
反対に不況期に入ると、中央銀行は短期金利を引き下げて、
景気を回復させようとします。
・好況期に入る→中央銀行が利上げを行う
・不況期に入る→中央銀行が利下げを行う
▼株価と金利の関係
ようやく株価と金利の関係について話ができる下地が整いました。
好況期に入ると金利が上昇して、債券価格が下落していきます。
不況期に入ると金利が下落して、債券価格が上昇していきます。
この金利に対して、株価は逆方向に作用します。
例えば、長期金利が2%から5%に上がった場合、
投資家の多くが、リスクの大きい株式投資を行うよりも
債券を購入した方が安全で、
反対に長期金利が5%から2%に下がった場合、
債券の魅力がなくなり、相対的に株式の魅力が上がります。
・金利が下がる→株価が上がる
・金利が上がる→株価が下がる
いきなり、上記のように言われてもピンと来ない方は
次のように考えてください。
・金利が下がる→低利回りの債券には魅力がない「株式>債券」→
・金利が上がる→高利回りの債券には魅力がある「株式<債券」→
▼ウォーレン・バフェットの発言の真意
バフェットはこのように発言していました。
「米国株はバブルの領域にない。
長期金利が7-8%
米経済のダイナミズムは顕著で、
暫くはいかなる大統領のもとであっても順調に推移する」
現在、長期金利の目安となる米国10年債利回りは
2.3%(2017年4月10日現在)で推移しています。
<米国10年債利回り(1988年1月~2017年4月)>
この金利を見ると、経済全体の流れが見えてきます。
2.3%という金利水準は歴史的にはかなり低い方です。
つまり、景気サイクルを見れば、まだ景気回復の初期段階だという
米国の中央銀行であるFRBは最近、
先月、ようやく1%に達しました。
FRBはこのまま米国の好景気が続くようであれば
これからどんどん引き上げていくものと思われます。
各国の政策金利が次の通りです。
<2017年 世界各国の政策金利>
南アフリカ共和国やトルコの政策金利はそれぞれ7%、8%
これはかなり高い金利水準です。
政策金利は「短期金利」を意味するので、
長期金利だったら、もっと高い金利になっています。
現在、両国の10年債利回りは南アフリカが9%、
トルコが10%に達しています。
お金のグルグル回転がかなり高速になっていることが伺えます。
その点、米国は利上げを実施している最中とはいえ、
政策金利は1%に到達したばかりです。
まだ米国の「お金のグルグル回転」は遅いと判断できます。
・低金利・・・お金のグルグル回転に勢いがない
・高金利・・・お金のグルグル回転に勢いがある
▼長期的な視点と短期的な視点
米国の株価はリーマンショック(2008年)の大暴落から、
ほとんど調整もないまま、上昇しています。
そのため、短期的には暴落してしまうかもしれません。
バフェットはCNBCとの単独インタビュー(2月27日)の中で
「明日、20%値下がりする」可能性もあると話していました。
一見、強気の発言と矛盾しているように見えますが、
そういうわけではありません。
「米国株はバブルの領域にない。
という発言は、長期的な景気サイクルの観点から述べています。
一方、「明日、20%値下がりする」可能性もあるという発言は
短期的な株式のボラディリティ(価格変動性)の観点から述べてい
この点については混同しないように気をつけてください。
バフェットの言っている
「金利と比較すればまだ割安な方だ」を意訳すると、
「お金のグルグル回転に勢いがないので、
通常、バブルはグルグル回転に勢いがある時に生じる現象ですよ。
バフェットは常に長期的な視点に立って行動しているので、
近い将来、
私たちもバフェットのように長期的な視点に立って、
行動していきましょう。
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