投資リスクとは何か?一般的な危険とは異なる
この記事を監修した専門家
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
ウェルスパス投資顧問
複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
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「投資にはリスクがつきもの」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。

「リスクがある=危ないからやらない」と考える方もいるかもしれませんが、実際には投資によって資産形成に成功している人も大勢います。

では、そもそも投資リスクとは何なのでしょうか

この記事では投資のリスクとはどのようなものかを解説します。その上で安全性の高い投資の進め方をわかりやすく説明します。

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投資の定義・種類について

投資リスクを説明する前に、まず、

  • 具体的にどういった行動を投資というのか
  • 投資にはどのような種類があるのか
  • 投資を始めるためには何が必要になるのか

を説明していきたいと思います。

投資とは

自分が持っている資産の大半を、銀行預金や郵便貯金へ預けている方も多いと思います。これを貯蓄といいます。いつでも自由に使える状態でできる限り安全な形でお金を保持しておく方法と言えるでしょう。

ただ、ゼロ金利政策が進められている現代社会では、預貯金で得られる利子で資産を増やすことは容易ではありません。将来、貯蓄だけでは得られないもっと大きな資産を得たいと思ったときに、今すぐに必要ではない資金を運用して中長期的な視野で増やす行動が投資です。

投資とは

資産形成をする方法の一つで、一定のリスクをとり、それに見合った利益を見込んで現在保有する資本を投じる活動を指します。

投資は「老後の資金を手に入れたい」「住宅を建てたり住み替えたりしたい」といった将来に必要になる資金を手に入れる目的を持って行うことが多いのが特徴です。

どんな投資があるのか

次に、投資にはどのようなものがあるかを具体的に確認していきましょう。

株式投資
株式投資は古くから行われている投資方法で、株式会社が発行している株式の売買によって利益を得るのが基本となっています。株価が変動するのに応じて本来あるべき価値よりも安値のときに購入して高値のときに売却し、その差額で資産を増やすことができるという仕組みです。

債券
債券による投資もよく行われています。国や地方自治体、会社が発行する債券を手に入れてお金を貸す形になるのが特徴で、満期まで保有していると銀行預金に比べて大きな利息を受け取れるのが一般的です。

投資信託
投資信託は投資家から集めたお金を一つにまとめ上げたものを資金として「運用会社」が株式や債券、不動産などに投資・運用する金融商品で、主に証券会社、銀行などの「販売会社」を通じて販売されます。集まった資金は信託銀行に保管され、運用会社の指図によって株式などの売買を行います。投資家は投資額に応じた分配金をリターンとして獲得することができます。

不動産投資
不動産投資もしばしば取り組んでいる人がいる投資で、土地や建物などを購入して賃貸経営をすることによる家賃収入を得るのが基本的な仕組みです。

大きく分けて、上の4種類が投資です。

専門家からのコメント

ウェルスパス投資顧問
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉

FXや仮想通貨、商品先物、金やプラチナの取引も投資だと思っている方が大半だと思います。

私は、仮想通貨を除いては、「投資としてできるし、やっている人はいるが、投機として使われることが多いプロダクト」というのが正しいと思っています。

なぜ投機色が強いかと言うと、その時点で売買をする理論や根拠が無く(あるいは乏しいまま)、レバレッジをかけて資金を投入する方が大半だからです。

FXでも、二国の政治経済の動向を理解した上で、貨幣価値がどうなるか予想して売買するなら投資です。
金も、インフレを予想して、金に資産を逃避させるという目的なら投資でしょう。

仮想通貨については、私は終始、投機と考えていますが、中央銀行体制が崩壊すると予想したり、貨幣信用が低い自国通貨からの逃避行動だったら投資かも知れません。

不動産投資についても付け加えておきますと、家賃収入を目的とするもののみが不動産投資というわけではありません。例えば、「周辺より安い土地があり、安い理由が明白で、将来その理由が解消する可能性が高い土地を買う」場合についても、私は投資だと考えています。

投資に必要なもの

投資に取り組んでいくために必要なものは選んだ投資の種類によって違いがありますが、何を選んだとしても必ず用意しなければならないものがあります。

それは、元手になる現金です。

投資の種類によっては数十円や数百円からでもできるものがありますが、不動産投資のように数百万円はないと始めることすらできない投資もあります。また、同じ種類の投資でも最低必要金額が商品によって異なる場合も多く、注意が必要です。

また、投資は性質上、投入する金額が大きいほど得られる利益も大きくなります。そのため、大きい利益を得ようとすれば、大きい資金を用意することが不可欠です。

「この投資をしたい」「これくらいの利益が欲しい」という希望がある場合には、それに合わせた金額を貯蓄などで作ってから取り組んでいくようにしましょう。

リスクとリターンの関係性

投資をする上ではリスクとリターンについて理解を深めておくことが必須です。

ここでは投資におけるリターンやリスクの意味を解説します。リスクについて身近な事例も紹介するので、具体的なイメージを持てるようになりましょう。

リターンとは

投資におけるリターンとは「資金を投入したことによって返ってきたもの」のことです。

投資におけるリターン

投資ではリターンをプラスの意味で捉える習慣になっているので、投資取引によって得られた利益を指します。広い意味では損失についてもリターンと呼び、収支がどうなったかを指し示すこともあります。

株式投資の場合
株式投資では株式を売買したことによって得られた利益を指します。安く買った株式を高く売れば、その差し引きの値から手数料を引いた金額がリターンです。

不動産投資の場合
不動産投資では、家賃を徴収することで収入を得られます。しかし、賃貸経営をするには賃貸管理のコストや不動産の維持費用などがかかります。不動産投資ローンを組んでいる場合には返済もしなければなりません。このような一連のお金の出入りを考慮して、プラスになった分の金額、あるいはマイナスになった金額が不動産投資のリターンになります。

積み立て預金の場合
積み立て預金をしているときには利息として得られている金額がリターンです。預金は低金利の時代になっているのでリターンはかなり小さくなりますが、株式投資や投資信託なら同じ金額を運用して大きなリターンを得られる可能性があるでしょう。

このように、投資方法によってリターンの幅や得られる可能性の高さが変わるため、投資に取り組む際にはどの投資方法を選ぶかも重要となります。

リスクとは

投資におけるリスクとは「資金を投入した時点での予想が、100%的中するとは限らない」という不確実性を指します。

「リスク=損すること」というイメージがありますが、実際は運用結果として得られる利益が期待していたよりも減ってしまうことだけでなく、増えることも含めた不確実性そのものをリスクと呼ぶのです。

投資だけでなく、私たちの身近なところにも様々なリスクが存在します。例えば、以下のようなシーンを想像してみましょう。

暮らしの中の身近なリスク
天気予報で「1日を通して晴れ」という予報だったので傘を持たずに出かけたら、急に天気が崩れて土砂降りの中を歩いて帰ることになったという経験は誰にでもあるでしょう。このように「天気予報が100%当たるわけではない」ということがリスクです。

これと投資でも同じことが起こり得ると考えると理解しやすいでしょう。良くも悪くも予想とは違った結果になるということは、日常生活でもしばしばあるものです。

投資は「このような結果になるはずだ」と予想を立てて、その通りになることで想定していた幅のリターンを手に入れるのが基本です。予想が的中し続ければ着実に資産を増やすことができますが、予想が外れたために想定よりも利益が少なくなったり、損失になることもあります。

もちろん誰しもリターンは確実に得られたほうが良く、損失はできる限り小さいほうが良いに決まっています。しかし、リスクとリターンは「一得一失」の関係にあり、期待できるリターンが大きいほどリスクも大きくなるのが一般的です。リターンを得るために、リスクを避けることはできません。

したがって、投資でリターンを得るためには「リスクが生じる要因を正しく把握したうえで運用する」ということが重要となってきます。

専門家からのコメント

ウェルスパス投資顧問
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉

「リスク」とは、しばしば「危険」という意味で使われますが、専門家にとっては「不確実性」を意味します。

ある株を買った時に価格が下がって損をする「危険」がリスクなのではなく、価格が上がっても下がっても、自分が思う、あるいは過去の価格の動きから想定される価格からのぶれ、その「不確実性」こそがリスクとされます。

金融工学的なアプローチではリスクは標準偏差(ボラティリティ)の数字で表現されます。リターンも同様に数値化することが出来ます。このリスクとリターンの数字の関係性によって、その株は「ハイリスクハイリターン」であるとか、「ローリスクローリターン」であるとかということを判断することが出来ます。(但し、いくつ以上がハイ、いくつ以下がロー、という明確な数字の基準があるわけではありません。TOPIX構成銘柄の平均と比較して決めることが多いです。)

プロの投資家は、単純にリスクが小さいもの、あるいは単純にリターンが大きいものに投資をするのではなく、リスクとリターンの関係性が良いものへの投資を心がけます。その際に使われる尺度のひとつに「シャープレシオ」というものがあります。これはリターンの数字をリスクの数字で割ったものです。この数字が大きければ大きいほど、投資効率が良いとされます。

投資に潜むリスクとは

投資におけるリスクについてもう少し詳しく理解していきましょう。

株式投資はリスクがあるとよく言われますが、投資に潜むリスクはどのような投資方法を選ぶかによって違ってきます。最近人気になっているFXや仮想通貨も、株式投資とは違うリスクがあるので注意が必要です。

また、現金をそのまま持っていたり、預貯金をして貯蓄をしていたりするときにもリスクがないわけではありません。ここではそれぞれのケースについて、想定されるリスクを確認しておきましょう。

現金や預貯金の場合

資産を現金や預貯金として持っているだけなら、リスクはないと思うでしょう。確かに額面的には減らないかもしれませんが「価値が変動する」というリスクはあります。

現金の「価値」とは

インフレが起こると物価が高くなるので、貨幣価値は下がります。現金で持たずに例えば土地や貴金属などに換えておいた方が価値の低下が起こらずに済む可能性があるのです。逆にデフレが起こると貨幣価値は相対的に上がるので、現金で持っているだけで商品の購入をしやすくなるでしょう。

さらに、預貯金から得られる利率が変動するリスクも常にあります。高度経済成長期からバブルの崩壊を経験した人なら、大幅な利率の低下が起こり得ることはイメージしやすいでしょう。

「お金が減らなければ良い」というのであれば信頼性が高いと言えますが、資金を増やす目的で預貯金をする場合には、利率の変動リスクが潜んでいることは念頭に置いておく必要があります。

株式投資の場合

株式投資の場合には株価の動きが常に安定しているわけではないため、正確な予想をするのが難しいと想像できる人も多いでしょう。

企業の業績だけでなく、経済動向や法規制、投資家の売買の動きなどによって、株式市場は大きく揺れ動きます。特に短期での取引では想定外の動きが起こりやすく、予想から大きく外れているケースも少なくありません。

株式投資の難しさ

例えば、この企業は新しい事業をうまく成功させて成長しているから1ヶ月もあれば株価が上がるはずだと考えて資金を投入したとしましょう。その直後に競合企業がもっと魅力のある事業を立ち上げたために株価が下がってしまう可能性は否定できません。

これが本当に起こってしまうと、予想が外れて損失を生むこともあります。

株式投資では予想が外れてしまったときには損失を最小限にする目的で「損切り」をするのが常識です。しかし「もしかすると持ち直すかもしれない」という淡い期待があって損切りができず、さらに損失を大きくしてしまうこともあります。

逆にもう値下がりするだけだから諦めて損切りをすると決めたものの、予想が外れて値上がりを起こすケースもあります。

このような値動きの予想の難しさそのものが、株式投資のリスクです。

FXの場合

FXは投資ではなく投機的性質が強い商品ですが、FX=投資と考える向きもありますのでここで合わせてご紹介します。

FXは二国間の通貨が関わるので、一方の国の政治経済情勢だけでなく、相手国のものも理解して取引をする必要があり、値動きの予想が非常に難しい性質があります。

それに加えてFXでは「レバレッジ」をかけられる仕組みになっています。

レバレッジとは

取引に使える金額を証拠金よりも多くできる仕組みで、例えば25倍のレバレッジをかけると1万円の証拠金で25万円の取引が可能です。

この仕組みの結果、多額の損失が出て払えないような状況に陥らないように、FX取引では自動ロスカットが設定されているのが基本です。自動ロスカットとは、取引に必要な証拠金維持率が一定の水準を下回ったときに、強制決済をする仕組みがのことです。

少額取引でも大きく資産を増やせる可能性を秘めているのがレバレッジのメリットですが、損失も同じ比率で大きくなってしまうため、レバレッジをかければかけるほどリスクも高い取引をすることになります。

これらの特徴より、FXはリスクが高すぎて、投資に向かない金融商品です。

専門家からのコメント

ウェルスパス投資顧問
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉

上でも書きましたが、FXについては、「投資としてできるし、やっている人はいるが、投機として使われることが多いプロダクト」と私は考えています。
投資として取引するには、二国の政治経済の動向を十分理解して、その結果、貨幣価値がどう変動するか理論的に説明ができることが重要だと思います。

投資のリスクを下げるには

投資にリスクはつきものなので完全に回避することはできません。

しかし、リスクを最低限に抑えて投資をする方法はあります。ここでは、その方法を二つの角度から紹介します。

投資を分散する

投資リスクを低減させるためには、複数の投資をいつも並行して行っている状態にすることが重要です。

複数の投資をしていると、もし一つが予想外の結果になって損失を生むことになったとしても、他の投資が成功すればカバーすることが可能です。すると一つの投資だけを見ると損をしていても、トータルで見れば資産を増やすのに成功しているという形ができあがります。

このように投資は、分散させて総合的に利益を生み出すと考えて取り組んでいくのが安全策です。

投資におけるリスク分散の例

例えば株式投資をしている場合であれば、同じ銘柄だけを買わずに複数の銘柄を持つことでリスクを分散させられます。同じ銘柄でも、購入する時期を分散させることもあります。アメリカ株投資や不動産投資も並行して行ったりすると分散度が高まっていきます。

運用資金には限界があることを考慮すると、あまりにも分散させ過ぎてしまうと一つの投資あたりの投入金額が減ってしまうため、リターンも少なくなる点には注意が必要です。しかし、複数の投資に分散させてリスクを低減させるという考え方は重要なので覚えておきましょう。

少額の投資からはじめる

投資リスクを低くするためには、まずは投入する金額を少なく抑えておくのも良い方法です。少額の投資をしてもリターンが少ないのは確かですが、予想が外れてしまったときの損失も少なくて済みます。

投資リスクについて大きな不安を抱いているときには、まだ初心者の段階であることが多いでしょう。投資は実際に運用する経験をしてみないと、どのようなリスクがあるのかを考えるのが困難です。少額の投資から始めてどのような結果になるのかを理解し、取引の仕方や戦略の立て方を学んでいくようにしましょう。

投資に慣れてくるとだんだんとリスクが見えてくるようになり、資産をどの程度投入すべきか、ここはやめておくべきかを判断できるようになります。まずは実践的に練習するのが先決だと考え、自信をつけてから本格的に投資を進めていくのが賢い方法です。

まとめ

投資にはリスクがありますが、その分だけ貯蓄よりも大きなリターンを期待できます。リスクマネジメントをして正しく取り組めば、投資は資産を大きく増やせる魅力的な方法です。

投資リスクがとれる余裕資金があるなら、少額からでも投資を始めてみませんか?