パンケーキを毒見する | ヤンジージャンプ・フェスティバル

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なかなか更新が進まない、観てきた映画の感想文。

今回は先月観に行ったこちらの作品。

 

観たいと思っていたものの、都合が付かず見逃していたこともあり、ようやく観に行くことができたのでした。

 

 

【あらすじ】 

「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」などの社会派作品を送り出してきた映画プロデューサーの河村光庸が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務め、第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫った政治ドキュメンタリー。ブラックユーモアを交えながらシニカルな視点で日本政治の現在を捉えた。

秋田県のイチゴ農家出身で、上京してダンボール工場で働いたのちに国会議員の秘書となり、横浜市議会議員を経て衆議院議員となった菅氏。世襲議員ではない叩き上げの首相として誕生した菅政権は、携帯料金の値下げ要請など一般受けする政策を行う一方で、学術会議の任命拒否や中小企業改革を断行した。

映画では、石破茂氏、江田憲司氏らの政治家や元官僚、ジャーナリストや各界の専門家に話を聞き、菅義偉という人物について、そして菅政権が何を目指し、日本がどこへ向かうのかを語る。さらに菅首相のこれまでの国会答弁を徹底的に検証し、ポーカーフェイスの裏に隠された本心を探る。

(映画.comより)

 

タイトルやポスターから想像がつくと思いますが、本作は第99代内閣総理大臣だった菅前総理についてのドキュメンタリー映画。

 

僕が観に行った2021年9月18日は、次期総理を決める総裁選が告示された翌日だったこともあり、図らずも「この映画で、改めて菅政権を振り返る」みたいなタイミングでの鑑賞。

 

作品としては、菅前総理と関わりのあった人物や、菅政権に物申す人たちのインタビューを中心に、時折モンティ・パイソン風のアニメが挟まれる・・・といった感じで、どこかしらマイケル・ムーア監督風のバラエティ色強めのドキュメンタリー映画といった雰囲気。

 

鑑賞前は「もしかしたら、ちょっと退屈するかもな」と思っていたところもあったのですが、そんなことは全くなく、最後まで興味深く観ることができました。

 

で、観終わった感想はというと「この国で生きていくことが恐ろしくなった。」というところ。

 

秋田県の農家出身で集団就職で上京。

工場で働いたのちに秘書になり、議員となり、総理大臣へというキャリアを積んだ「叩き上げの庶民派首相」として、世間からの支持を得た菅氏だが、実は周到にメディアをコントロールし、半ば強引に自らの主張を貫き通すといった裏の顔が・・・という一面が関係者によって語られる様子は本当に恐ろしく、いつの間にやらこの国は変わってしまった、もしくは変わってしまいつつあるんだな・・・と痛感。

 

ドキュメンタリーとはいえ、あくまでもこの作品は「映画=創作物」なので、作中で語られていること全てが真実とは限らないし、そもそもドキュメンタリー映画というものは、撮影した素材を監督が思う結論に近づけるように再構築して造られるものだから、この映画で語られている全てを鵜呑みにしてしまうのは危険なことだし、慎重になるべきだと思うけれども、そこを差し引いたとしても「これはちょっとマズいな・・・」と思わざるを得ない場面がいくつもあって、怒りを感じるやら、呆れてしまうやら・・・・。

 

そんなわけで、繰り返しになりますが

「この国で生きていくことが恐ろしくなった。」

と思わずにはいられない、そんな作品でした。

 

で、この作品のメッセージとしては

「国民は政治家の言いなりになるヒツジであってはならない」

「政治家の不正とは戦わなければならない」

「『戦い』とは革命やデモだけではなく、最も有効な手段は『選挙』だ」

といったあたりで、その考えには完全に同意なんだけれども、この映画を映画館にお金を払って観に行くような人は、そもそも毎回投票に行っている人たちなんじゃないかな・・・と思って、ちょっとだけ失望したのも確か。

 

このような作品が、もっと気軽に誰もが観られるようになればいいなと思いましたし、この作品に対抗して現与党側の立場で野党側を批判する映画を公開したりして、それぞれがそれぞれの立場でこの国の行く末について活発に話し合えるような、そんな世になればいいのにな・・・と思ったのでした。

(2021年9月18日 あつぎのえいがかんkikiにて鑑賞)