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”空々と漠々”へ ようこそ!!
セリフ多め、文字数多め、おもに高校生男子がワチャワチャしているBL小説置場です。
つたない文章ですが、少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。
下記タイトルリンク、右側ノベルリスト(PCのみ)から各話に飛んでお読みいただけます。
<はじめて>の話。 全23話
夏休み最後の日、一人暮らしのオレの部屋を深夜に訪ねてきたのは片想いしていたクラスメイトだった。
口説きに来た、「抱いてやるよ」と突然言いだして……。
それが生涯忘れ得ぬ一週間、そして、オレの〈はじめて〉の始まりだった。
夢で逢えたら 全6話
「〈はじめて〉の話」その後のエピソード。
ナツノヒカリ 全100話
幼なじみで親友の灰谷に彼女ができた。 心は穏やかではいられない。オレはあいつに片想いしていたからだ。
あてつけで始めた灰谷の彼女の友達との交際。
ひょんな事から知り合ったなんかワケありに見える年上ゲイサラリーマンとの情事。
にぎやかな悪友たち。
真島信17歳、ひと夏の物語。
城島と牧野 ナツノヒカリ番外編 全10話
「ナツノヒカリ」番外編。
何もかも捨て、長い間片想いしている親友を思い出の部屋で待つ男・城島……その後。
アキノワルツ ~連載休止中~
「ナツノヒカリ」続編。
季節は秋になっていた。
今までと変わらないようで、でも少しだけ違う微妙な距離感になった真島と灰谷。
バイト先の後輩・友樹はやたらと真島になついてきて……。
二人の悪友・中田と佐藤にもそれぞれ変化が訪れる……。
短編 ゾンビを生き返らせる方法 全2話
非BL。
小説投稿サイトにも投稿しています。
★fujossy
https://fujossy.jp/users/kayao99/mine
★アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/novel/114322914/977752726
書き直したものなので一話の分量が少なめで読みやすいかもしれません。
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なお、性描写を含みますので閲覧は自己責任でお願いします。
趣味のブログですので誹謗中傷などはお断りします。
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『アキノワルツ』休載について
『アキノワルツ』、お読みいただいてありがとうございます。
タイトルのままですが、しばらくお休みを頂きます。
週3日投稿していましたが、ストックが無くなってしまいました。
くわえて首と右腕に痛みがあり、長時間キーボードを打つのが困難になったためです。
秋のお話なので秋までには再開できればいいのですが……。
少しづつ書き続けては行きますので、時間がかかるかもしれませんが、お待ちいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
カノカヤオ
アキノワルツ 第42話 春日井大社
「久しぶりだな」
灰谷を見て春日井が言った。
「オレのこと、覚えてるんですか?」
「覚えてるさ。灰谷だろ。西村と同じチームにいた」
春日井が自分のことを認識していたこと、名前まで覚えていた事に灰谷は驚いた。
「良いセンスしてた。いまどこでやってるんだ?」
あの春日井大社にこんな事言われる日が来るなんてな。
感慨深い。
「あ、実は中学に入ってから脚やっちゃって」
「そうか。残念だな」
悪い事を聞いてしまったとでもいうように春日井の顔が曇る。
「もう昔のことなんで」
「急遽招集したんすよ。親父、週末のサッカー命だから」と西村が割って入った。
「見つかんなかったら小遣い減らすとか言われて電話かけまくって。こういうときに限って誰も見つかんなくて。もう、最後の頼みと灰谷泣き落としましたぁ」
おどける西村に春日井が静かに笑う。
「春日井さんもっしょ?」
「オレはカラダ動かしたくてさ」
西村は何度か春日井と対戦しているらしく、かなり親しげに見えた。
『亮~、ちょっと来い』
「なんだよ親父ぃ」
父に呼ばれて西村がその場を離れると春日井と二人きりになってしまった。
「春日井さんは大学のリーグなんですよね」
「ああ。N大。オマエら来年受験だろ、どうすんだ?」
春日井は肩にかけていたカバンから水筒を取り出した。
「オレは一応、大学進学で考えてるんですけど」
「専攻は?」
「まだ決めてなくて」
「そっか」
水筒のフタを開け、春日井は一口飲んだ。
ふわりとコーヒーの香りが漂った。
「良い香りですね。コーヒーっすか」
「ああ、これな。最近ハマってるんだ。豆から挽くの。手挽きのミルでな」
「へえ」
カラダの大きな春日井が小さなミルをグルグル回す姿を灰谷は思い浮かべ、口元が少しゆるんだ。
「あ、いま思ったろ」
「え?」
「でっかいカラダで小さなものグルグルしてんな、って」
「…」
その通りだったので灰谷はとっさに返事を返せなかった。
「灰谷、オマエのプレイと一緒な。嘘つけねえのな」
「すいません」
「いいよいいよ。そういうとこいいと思うぜ」春日井は人懐っこく微笑んだ。
「灰谷、オマエ高校どこ?」
「西高です」
コーヒーを口に運ぼうとしていた春日井の手が西高と聞いてピタリと止まった。
「…へえ。そうか」
そうつぶやくと水筒の口に唇をつけたまま、春日井はしばらくじっとしていた。
が、「また、来るだろ?」と言い、一口コーヒーを飲んだ。
急に話題が飛んだがサッカーの事だなと思い、「え?ああ。はい、たぶん」と灰谷は答えた。
やみつきになりそうな予感があった。
「あの、さ……」
「はい?」
水筒のフタをキュキュっと締めながら「一年の立花ってやつ、知らないよな?」と春日井が訊いた。
え?立花?
春日井の口から出た意外な名前に灰谷は驚いた。
「友樹、ですか」
「え?知ってる?立花友樹」聞いた春日井も驚いている。
「バイト先、いっしょです。コンビニなんですけど」
「コンビニ?ああ……そんなこと聞いてたな」
まさか春日井大社の口から友樹の名前が出てくるとは。
世間はせまい。
「真島ってオレのツレがいるんですけど。やっぱバイト先いっしょで立花と仲良くて、つうか立花が懐いてて。真島のうちに入り浸ってます」
「友樹が?」
信じられないとでもいうように春日井の目が丸くなった。
「はい」
「そうか……」
そう言うと春日井は黙ってしまった。
急な気まずい雰囲気に、西村は?と見れば何か話しこんでいて、まだ時間がかかりそうだった。
「あの、訊いてもいいですか。友樹とはどういう」
「ああ。家がとなり同士でガキの頃から知ってて」
「へえ」
「……あいつ、元気か」足下をみつめながら春日井がそう訊いた。
「オレの知る限り、元気ですね」
「そうか……うん」
そう言うと、春日井は小さく何度かうなづいた。
まるで自分自身を納得させようそしているかのように灰谷には見えた。
「お待たせ~メシ行こう~」父親から解放された西村が大きく手をふって走って来る。
「あいつ、ピアノ、弾いてるかな」春日井がぼそりとつぶやいた。
ピアノ?
「さあ……弾いてるって話も聞いたことないし、弾いてるのも見たことないですね。まあ、オレが知らないだけかもしれないですけど」
「そうか……」春日井の顔が曇った。
アキノワルツ 第41話 サッカー
ピピー。
試合終了を知らせる笛の音が響くと、灰谷はその場に倒れこんだ。
ハッ ハッ ハッ ハッ。
息がはずみ心臓がバクバクと音を立てた。
肺が新鮮な空気を求めている。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
なんも考えられない。
灰谷は目を閉じ、カラダの声を聴いた。というより丸ごとカラダになった。
全身を流れる汗。
フル稼働する心臓・肺・駆けめぐる血液・震える筋肉。
ヤバい……久々のこの感じ。
忘れてた。
オレ自身だ。
まるごとオレ自身だ。
何思う事もない。
全部まるごと、まぎれもなくオレ自身だ。
あー気持ちいい~~~。
大きく手足を伸ばして息を吐き、目をあけた。
空はかき曇り今にも雨が降り出しそうだった。
「おーい、大丈夫か? 灰谷」
上からのぞきこんで来たのはかつてのチームメイト西村だった。
真島の言っていたとおり、あいかわらずムーミン谷にいそうな顔をしている。
「オマエ、相変わらず負けず嫌いな」西村がニヤリとする。
「うっせ……」
「変わらねえな」ニコニコしながら西村が手を差し出した。
試合はもちろん会うのも久しぶりだったが、走り出せばすぐに昔の呼吸に戻った。
「ミムもな」西村の手をとり、灰谷は起き上がった。
「おーそれ、"ミム"。懐かしいなあ。オレの事ミムって呼ぶのはオマエとあいつ。オマエのツレの真島だけだわ」
「だろうな」
「真島、元気かよ?」
「ああ。元気だよ」
「つうかさあ、なんでミムなんだよ」
「さあな。そいつは言えねえな」
「おーい。いいかげん教えてくれよ~」
絶対に種明かししないと真島と決めている。
40代半ばの田辺の父たちのチームに加わった10代のメンバーとして4ゴール6アシスト。ヘルプとしてはまずまずだろう。
ただ後半、相手チームのキーパーが替わってからは1点も奪えなかった。
冷静的確でマシーンのような反応。
10代?いやあのカラダの出来具合は20代前半か。
それにしても自分とそう変わらないと思う。
「なあ、あのキーパーって……」
チームメイトから肩を叩かれ健闘をたたえられている、手足が長く、背の高い男。
どこかで見た事があるような……。
「あ? わかんねえの灰谷。春日井大社だよ」
春日井大社!
守護神・春日井一臣(かずおみ)!
少年サッカーで何度か対戦した選手だった。
チームメイトより二十センチも背が高く、長い手足。
春日井が手を広げるとゴールが小さく見えた。
まるで大鳥居のようだっていう意味なのかなんなのか。
ついたあだ名が春日井大社。
狙ったボールはすべて止められた。
その頃よりさらにデカくなっている。
「大学のクラブチームにいるんだってさ。プロの誘いもあるらしい」
「へえ」
<お疲れ><ご苦労さん><ナイスアシスト>
帰り支度を終えたチームの人に次々と声をかけられた。
「灰谷くん、今日はお疲れ」
西村をそのまま30ぐらい年を取らせたような、やはりムーミン谷顔の西村の父がご機嫌で灰谷の背を叩く。
「いい走りだった。またよろしくな」
「はい。ありがとうございました」と灰谷は軽く頭を下げた。
「亮、父さんたち打ち上げ行くから。未成年はほれ、これでなんか食って帰れ」
西村の父は財布から札を数枚抜き取ると息子に渡した。
「うん。あー春日井さーん」
「春日井くんもお疲れ。君、もう酒飲めるんだっけ?」
「あ~、年齢的にはOKなんですけど。体質的に受けつけないんですよね」
春日井は穏やかな表情で答える。
目の前で見る春日井はやはりデカい。
身長180のオレがちょっと見上げるくらいだから190近いんだろう。
試合中のオーラ出しまくりの春日井大社は、試合が終わった今、まるで首の長い草食恐竜みたいにゆったりのんびりとした雰囲気をまとっている。
「じゃあ、こいつらとメシ食って帰れよ」
こいつらの言葉で春日井はチラリと灰谷を見た。
「あ、いや、速攻帰らないと。課題、朝イチ提出なんで」
まあオレの事なんか覚えてないだろうけどな、と灰谷は思う。
「君も担ぎ出された口だな。ほいじゃあまあ、これでメシでも買って帰れよ」
西村の父がお札を差し出すと、「いや~いいっすよ。カラダ動かしたかっただけだし」と春日井は断った。
「いいからいいから」と西村父は春日井の手にお札をすべりこませた。
あまり断っては悪いと思ったのか「すんません。ごちそうさまです」と春日井は最後には受け取った。
「ほいじゃあ。またな」
西村父は春日井の肩を軽く叩くと、集まっているチームメイトの元に歩いて行った。
大人は飲み会か。
しかし、課題があっても誘われれば少しの時間でもかけつける。
さすがは春日井大社だ。
灰谷は春日井の横顔をみつめた。
「久しぶりだな」
灰谷を見て春日井が言った。