職員室の『同調圧力』とはどういうものなのか、元公立学校教員が説明する

以前、新聞記者から取材を受けた際、「職員室の『同調圧力』とはどういうものなのですか?」と質問されたことがある。

そのときうまく答えることができなかったので、今回ここにまとめておきたい。

公立学校の教員には法律で残業代を支給しない代わりに時間外勤務命令を行ってはならないとある。そのため、例えば勤務時間外の部活動指導や登校指導、休日のPTA行事への参加などは労働としては扱われない。

建前としては、”命令ではなくお願い”ということで教員に行わせている。あくまで”お願い”なので、強制力はないはずなのだが、そこを補完するのが『同調圧力』である。

では『同調圧力』とは具体的にどのようなものなのか。一般の方にも理解できるように書いていきたい。

ステップ① 全員が行う前提で計画される

まず、全員が行う前提で計画される。

本来、お願いなのであるから、選択肢があるはずなのに、選択する機会は設けられず、全員が行う前提で担当が割り振られたりする。

ステップ② 「やったほうが良いよ」

“お願い”であるのだからと断ろうものならば、次は善意「やったほうが良いよ」と言ってくる。言ってくる相手は、先輩、学年主任、校長など。

ポイントは彼らは、善意で言ってくることである。なぜかといえば、彼らは同調圧力に背くと、村八分にされてしまうことを知っているからである。本気で心配して善意で言ってくるのである。

ステップ③ 「あの人だけズルい」

それでも無視して”お願い”を拒否しようものなら、同僚から「あの人だけズルい」とくる。

場合によっては、「みんな、あなたのことをズルいと言っているよ」と伝えてくる者もいる。

ステップ④ 不利益・嫌がらせ

それでも無視して”お願い”を拒否すると、上手くいけば「あの人は別、変わった人」ということで突破することができる。

しかし、下手をすれば、人事や評価で不利益を受けたり、校長や教育委員会、同僚から嫌がらせを受けたりする。あるいは、実際に不利益を被ることがなくても、そうなることを匂わされたりする。

★まとめ

(私のような異端を除けば)ほとんどの教員はここまでの圧力に耐えられない。

ここまでの圧力に耐えるなら、“お願い”に応じたほうが楽だと判断する。

そして一人ひとりのこの判断がさらに圧力を強める結果となる。

これが職員室の『同調圧力』である。

この同調圧力により、校長が法的な根拠なく実質的に残業代ゼロの時間外勤務命令ができる状態にあるのが公立学校教師の置かれる立場といえる。

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