長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

鐘の音、またはコールドムーンと対の銀嶺。

2020年12月31日 07時41分41秒 | 折々の情景
 一年のほぼ半分を冬眠して過ごした令和二年、極月最後の稽古日。
 東京脱出を果たし、鎌倉に移住したお弟子さんが、今年は帰省できないので、はじめてお正月を関東で過ごすと言う。
 「一人で過ごすのも寂しいんですが、北鎌倉は鎌倉五山のうち四つのお寺があるから、除夜の鐘の聞き分けが出来るそうで、それも愉しみなんです」
 「えぇつ!! いいなぁぁあ……!!!」
 心底うらやましげな私の声を聞いて、彼女は水月観音菩薩の現し身の如く、コロコロと笑った。

 と、同時に私は、狂言の『鐘の音』そのままの話じゃないかと、もの凄くびっくりした。

 狂言〈かねのね〉は、例によって粗忽な太郎冠者が、ご主人に金の値…(要するに為替レートですな、と、バイリンガルな件んのお弟子さんに説明したら聡明な彼女はすぐに分かってくれた)を訊いてこいと言われて、本当に、お寺の鐘の音を聞きに行ってしまう物語である。
 もう、本当にしょうがないなぁ太郎冠者と来たら…と呆れつつも、狂言方の鐘の音の擬音表現が実に面白く、実際に鎌倉詣でをしたようなお得な感覚を見所に居るものに分け与えてくれる、今でいえばTVの旅番組の味も持ち併せている不思議な演目ではあるのだが、
 実を言えば私には、太郎冠者のこの余りにもストレートで愚直な発想が、とても他人と思えない。

 そして、室町期に成立したであろうこのエピソードが、はるか時を超えて、21世紀の私たちの身の上に実感される日常として存在し続けていることに、背筋がゾクゾクッとする妙な感慨を覚えずにはいられなかった。

 変わり続けているのに、変わらないもの。

 …それが見たくて今日も私は、この世に在り続けるのかもしれない。






 …という記事を、12月28日朝、コロナ禍ゆえ日本中から疎まれた2020年の東京都民としては、拗ね者っぽく綴ってみようかと思ったが、例によってアップできぬまま、旧暦令和二年霜月十五夜が過ぎてしまった。
 2020年大晦日、朝起きたら、望月が西の空に残っていた。
 蒼空を見渡せば、わが左手には機嫌よく富士山もいて御座る。

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1 コメント

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Unknown (aki)
2021-05-04 00:47:36
憲法改正を急ぐ理由を知って下さい
突然の書込み失礼致します。
この度は皆様に知って頂きたい事があり、誠に恐縮ですが書込ませて頂きました。

マスコミが大きく報じぬ中、連日中国の日本領海侵犯が増大し、尖閣侵略を狙っている現状を、中国に侵略虐殺を受けるチベット等と重ねて今多くの方にどうか知って頂きたいです。

戦後日本を弱体化させる為、アメリカが作成した日本国憲法施行後、韓国が竹島を不法占拠し、その際日本の漁船を機関銃で襲撃し、多くの船員が死傷しました。

北朝鮮は国民を拉致し、日本全土を射程に入れるミサイルを数百発配備しており、尖閣には中国艦艇が侵犯する現状でも、憲法の縛りで日本は国を守る為の手出しが何一つ出来ません。

現在まで自衛隊と米軍の前に中国や北朝鮮の侵攻は抑えられて来ましたが、米軍がいつまでも守ってくれる保証は無く、時の政権により米軍が撤退してしまえば、
攻撃されても憲法により敵基地攻撃能力が無い自衛隊のみでは、日本はチベットと同じ道を辿りかねません。

9条の様に非武装中立を宣言しても、平和的で軍事力の弱かったウイグル等を武力で侵略し、現在進行形で覇権拡大を行い「日本の領海を力で取る」と明言している中国や、

核ミサイルで日本を狙う北朝鮮、内部工作を行う韓国が尖閣等から侵略の触手を進めているからこそ、GHQの画策により戦う手足をもがれた現憲法を改正し、

自立した戦力と抑止力を持たなければ国民の命と領土は守れないという事を、
中韓側に立ち、印象操作で国民を煽動する野党やメディアの姿と共に
一人でも多くの方に知り目覚めて頂きたいと切に思い貼らせて頂きます。
https://pachitou.com
長文、大変申し訳ありません。

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