虎ノ門にてさらに飛躍した変タイ鮨「鮨すがひさ」 | じきの食歴

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世の中には、美味しいいもので溢れている。
そんな美味なる料理やお酒の記録を食の歴史として記しておこう

始めてこちらの鮨をいただいのは、2018年の8月だった。
このコンセプトの鮨を出すのは、まだ2回目だったと記憶している。
あれから5年半。

「変タイ鮨」としてタイ料理とフュージョンした鮨を出すとのことで各種メディアにも取り上げられている溝の口の「鮨すがひさ」が、2024年1月16日に虎ノ門ヒルズステーションタワー4階へと移転オープンした。
今までは変タイ鮨は月に連続した2,3日しか提供していなかったのだが、今回は満を持して変タイ鮨を常に提供する業態へと変更。
席数もL字型6名のカウンターのみと席数を絞り、大将の菅正博さんともより濃密な会話を楽しむことができるようになった。
ちなみに今回のお店は隣にある「鮨 おにかい×2」が当初個室として使用する予定だった部分を利用させてもらっているとのことで、裏の厨房部分は共用となっている。
それもあってか、ビルの案内板にはこちらのお店の名前が出てないので注意が必要。
「鮨 おにかい×2」の隣を目指して行けばよい。
今回は、歌手の嘉門タツオさん、V6の長野博さん、元ドコモ副社長、テレ東相談役の方々をお誘いしての訪問。
青い扉をあけて中に入ると、目の前には幾何学的なデザインの鮨の絵がかざられており、その横を通って店内に入る。
ビロード張りの椅子に朱色の壁色と、ちょっと昭和のクラブっぽい雰囲気のある店内。
机の上には店オリジナルの手ぬぐいが置かれており、こちらはお土産としていただける(いつまでやっているかは不明)。
デザインは、店の入口にあったものと同じ方によるもので、この手ぬぐいに描かれている店名の「すがひさ」はタイ語のようなデザインとなっており、「鮨」の文字をよく見ると「すしトムヤムクン」の文字が隠されている。
実に面白く、この後出てくる未知の料理への期待も高まる。

飲み物としてまずはビールを注文。
共通キッチンであまりお酒を置く場所が無いらしく、シンハーのビールは一人1本までとのこと。
あとお酒のメニューは漢字で統一されており中には「竜舌蘭蒸留酒前割」というものがあり、こちらはテキーラの前割(前日から水で割ってなじませたもの)となっている。

そして、料理が出てくる。
こちらのお店の醍醐味は、今食べているものが何なのかという謎を楽しむというものがあるため、詳細を書いてネタバレさせないで欲しいとの意向なので、少々ぼやかせて紹介する。

〇つまみ
・たこだもん:前の店舗でも出ていたタコ料理。最初に口を整える

・鮑:単なる肝和えではなくレッドカレーも加えたもの

・あん肝:甘酸っぱさのあるとある食材が用いられている

・しめ鯖の生春巻き:鮨には米が付き物で、春巻きの原材料は米粉。そういうことである

・河豚白子のグリーンカレー茶碗蒸し:毎度関心するがこの味のバランスが絶妙である。どんぶりでいただきたいぐらい

〇握り
ガリも一風変わっており、ソムタム風パパイヤのガリが供される

・鯛:上に乗っているのは青ネギではなくパクチー。それににんにくや唐辛子等等が入ったタイ料理でいうシーフードソースが乗っている。海鮮サラダに合う味だ

・鮪:一筋のオレンジ色のソースは香をかぐと何だかわるだろう。だが、その香にだまさて口に頬張ると、青唐辛子の辛味が押し寄せてくる。生の鮪にこのソースもタイ料理らしい組み合わせだ

・障泥烏賊:うす茶色のタレがかけられている。なんだろう、独特な香がする。タンパク質的な旨味もあり参加者一同首をひねる。ピーナッツ?という意見も出たが違っていた。とあるタイ料理で使う食材とニンニク、エシャロットが用いられている

・赤身:すっと醤油が塗られるが、当然普通の醤油ではない。こちらもエスニック系でよく用いられる香辛料が使われている

・ホタテ:上に載っている緑色は何だろう。ジェノベーゼソースのようだ。食べみたら確かにバジルなのだが、この風味はガパオライスの味付けだった。シーフードを使ったガパオもあり、この組み合わせも間違いない

・中トロ鉄火巻:細切りにした漬け鮪に何やら振りかけている。これは、タイ料理のラープをモチーフとしたもの。先ほど振りかけられたのは、炒ったもち米をくだいたカオクアだった。海苔の風味にカリリとした食感のアクセントとこれまた斬新だ

・車エビ:タイ料理でエビを使ったものと言えば…そう、定番のアレである

・マッサマンウニ:タイ産のウニ。そう説明される。知らない人は物珍しそうに眺めるが、正体を知っている人達はにやけてしまう。米との組み合わせは鉄板だ

・海胆:こちらは国産の海胆。酢飯の上に乗せ、そこにココナッツスープが注がれる。これは、トムカーガイだ

・穴子:バナナの皮に乗せて焼かれた穴子。上に塗るヅケには、バナナとよく合うあの香辛料が用いられている

・太巻き:用いられる卵焼きの色が独特だ。食べてみると辛さがある。一緒に蟹のほぐし身が巻かれており、これはプーパッポンカレーに仕上がっている

・グリーンカレー稲荷寿司:既にこの店の代名詞とも言えるもの。だが、こちらも常に進化している。グリーンカレーペーストをベースにパクチーも入り、そして現在は以前のピーナッツの変わりに豚皮を揚げたもの砕き入れており、その食感もより楽しくなっていた

〇〆
・トムヤムラーメン:麺は有名ラーメン屋の凪から仕入れているもの。以前、とあるラーメン評論家にラーメンはスープや麺が美味しいだけではダメで一体感が大切だと説かれ、その部分にも気を配ったものとなっており、実に完成度の高いラーメンとなっている

ちなみにお茶は温かいジャスミンティーで、これがこの店の料理と実に合うので途中からお酒をやめて切り替える人も居た。

変タイ鮨に取り組み5年の歳月をかけてブラッシュアップし、この場所ではその集大成となっている。
今回、変タイ鮨を出し始め色々と模索していた頃、「実におもしろい。こちらの方向ですすまれるといい」と方向性を示してくれた歌手の嘉門タツオさんも参加され、新たなる太鼓判を押されたのは、菅大将としても感慨深かったのではないだろうか。

 

 

鮨 すがひさ寿司 / 虎ノ門ヒルズ駅虎ノ門駅神谷町駅
昼総合点★★★★ 4.5